手帳のありか
「さあ、ベン。今日も探すわよ!」
「……」
「ベン?」
「その必要はないよ。もう分かったから」
「え?本当に?なんで早く言わないのよ」
「今日、知ったから」
オリビアはそれ以上、なぜ、と言わなかった。早く手帳を手に入れたいからだろう。ベンは研究所に入り、オリビアを案内した。行き先は目立たない研究所の隅っこ。
「ここだよ」
「ここって…壁じゃない」
「まあ、見てて。このタイルとこのタイルを踏んで、ここを三回叩くとね」
ガチャ、と音がして床が開いた。そして、階段が現れた。
「行こう」
「うん」
二人は無言で進んだ。
電気はとっくに流れていないのに、地下道の壁に付いているランプには明かりが灯っていた。ドアに辿りつき、暗証番号を入力すると、開いた。
そこには機械やモニター、机、ファイルで埋まった本棚や積み上げられた書類が部屋を満たしていた。
ベンは机の鍵のかかった引き出しを、黒い手帳に挟んであった鍵で開けた。
引き出しの中を探ると青い手帳が出てきた。
「あ…それだわ。それよ!よくやったわ、ベン!早く読…」
「待って」
ベンは興奮するオリビアを制した。
「俺が見つけたんだ。先に読ませてよ」
「え、えー?んー…分かった。ベンにはおもしろくないかもしれないけどね」
二人は研究所の外へ、寝床にしている場所まで戻った。
「早く読みなさいよね」
「うん。そう時間はかからない」
ベンは青い手帳を読んだ。だが、全て読み切らないうちに閉じた。
自分の順番を待って昼食を食べているオリビアはそれに気づかなかった。
やはり、そうか。
ベンは手帳によって全てを理解した。




