少年の提案
「君、誰だ」
「あたし?名乗る義務はないわ。さあ、あたしの夢の為にとっとと消えてもらうから。どうやって死にたい?」
「待てよ。なんで君は生きているんだ。サーモグラフィーには…」
「何言ってんのよ。銃殺にするわよ」
「それなら俺の話を聞いてからにしてくれよ」
少女は少し悩んだように首を傾げ。
「よし、銃殺」
「あ、待って、よせ!」
銃声が響いた。
異変を察して寄る者はいない。
「確かに心臓を撃ち抜いたはずなんだけど」
少女は目の前にいる少年が剣を構えているのにも気付かないような口ぶりで言う。
「斬ったんだよ。弾丸を。動体視力を極限まで引き上げれば可能なことさ」
目を丸くする少女。
「すごい!もう一回やって。あたしが撃つから!」
少年は焦って言った。
「いやいや、しないよ。危険すぎる」
少女はむくれて言う。
「いいじゃない。死んだらそれなりに綺麗に埋めてあげるし」
「そういう問題じゃねぇよ」
てかさ、と少女に話を切り出す。
「地球最後の男と、地球最後の女が揃ったわけだし。やることはあるだろう?」
「は?子供でも産もうっていうの?産んだとしてもそこで終わりよ。子孫を残そうと思ったら近親相姦しなきゃなんないわよ」
あられもない話に、少年は反駁する。
「違うよ!語るんだよ、いろんなことをさ」
少女は本気で驚いた顔をする。
「そんなことしてなんの得があるの?」
言葉に詰まる少年が答えを出すのを、少女はじっと待つ。少年は諦めたように答える。
「得は…ないね。だが、少しでも有意義な時間が過ごせるんじゃないかな。いいだろ?俺の話に少し付き合ってもらうだけでいいからさ。頼むよ」
少女は首を傾げる。それが考えている時の癖らしい。30秒程の沈黙の後。少女が言った。
「まぁ、いいわよ。夢を叶えるのはあたしだし。最後くらい付き合ってあげる」
「本当っ!ありが…」
「ただし、剣の話を一番初めにね」