サンタクロースからの贈り物
『十二月二十四日 カレンはひどく落ち込んでいた。その理由をさりげなく尋ねてみると、カレンは言った。「私は悪い子だからサンタクロースは来ないの」そして泣き出して、虐待の恐怖に襲われていた。
私もそうだった。「お前のように悪い人間にサンタクロースは訪れない」プレゼントの代わりに折檻の雨が降り注いだものだった。
カレン、君はとても良い子だ。サンタクロースは絶対に来る。絶対に。』
『十二月二十五日 病室を訪れた時、カレンは泣いていた。その手にサンタクロースからのプレゼントを持って。嬉しいのかと尋ねると、違った。「サンタクロースは意地悪だわ。わざと間違ってプレゼントを置いていったのだわ」
私はもちろん否定した。君が良い子だからプレゼントがあるのだと繰り返して言った。7回目にようやく認めてくれた。信じてはいなかったけれども。しかしよくプレゼントを見てごらん。何が欲しいかと聞く私に、何もいらないと言い張る君は、雪の降る窓の外に目を向けていた。恵まれた子供たちがゲームを欲しがる中でスノードームを貰うのは君くらいのものだろう。
カレンはサンタクロースが自分のために来たことを認めてからスノードームを気に入ったようだ。私がクリスマスプレゼントとして渡したスケッチブックと色鉛筆で、スノードームを描いているのだから』
そして日付けは飛んで。
『一月十五日 カレンが正式に私の養子となった。カレンとの歳の差を考えれば孫と祖父のようなものだが。カレンにそれを告げると泣いて喜んでくれた。』
養子にまでしたのか。
ベンはさすがに驚いた。この半年でカレンにどれほど魅せられたかがよく分かる出来事だった。
カレンはもしかすると改名したかもしれない。父となった書き手は毎日名前を呼ぶわけだから「カレン」の一言でいちいち虐待の記憶を呼び覚ますわけにはいかないだろう。
改名…例えば、「オリビア」とか。
などとベンは推測してみる。それならカレンはオリビアとして生きていることになる。少し救われる。
その後の手記には病院を移ったことや、親子としてのふれあいが記されていた。




