手記
夜、オリビアが眠ったのを見計らい、ベンは黒い手帳を開いた。そして、前の続きを読む。
『六月十一日 少女は昏睡状態である。医者は命の危機であると告げた。私と同じ、虐げられた子供。なんとしても助けたい』
そういえば少女は虐待されたのだっけ。私と同じ、虐げられた子供、というと、この手記を書いた人物も虐待されたのだろうか。
『六月二十三日 あの子の手術が始まる。あの子とは運命的なものを感じる。私が面会に行った時、初めて目を覚ましたのだから。しかし、ひどく怯えていた。「あなたは警察?悪い私を死刑にしにきたの?」というようなことを脳のダメージによって言語障害がでているにも関わらず、一生懸命喋った。「お母さんは来るの?お父さんは?」私は「来ない」と言ったが、びくびくして震えながら虚ろな目をしていた』
「何してるのよ、ベン」
眠っていたオリビアがむっくりと起きた。
ベンは慌てて手帳を閉じ。
「なんでもない」
と答えた。
「そう。明日も手帳を探すんだから夜更かしは控えて」
ふあぁ、とオリビアはあくびをして再び眠りについた。
そうだ、今日はもう寝よう。
ベンもつられるように眠った。




