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壊れたアンドロイドは最後に虹を見る  作者: アルーエット
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研究所へ

研究所は十分歩いた所にあった。

あけっぱなしの門を通り、中に入った時、オリビアが言った。

「じゃ、ここでわかれましょ。あたしはあっちを探すから、ベンはこっち」

「OK、広いから見つからないかもしれないけど」

「何言ってるの?明日もさがすのよ。見つからなければ、見つかるまで」

「えっ」

二人はわかれ、青い手帳を探した。

通路にはあちこち人が倒れている。すべて死んでいるのだ。人工の光線が世界を焼き、大部分、いやほとんどの人間が死んだ。その光線の作用で死体は腐ることはない。

その日、ベンとオリビアは青い手帳を十八冊見つけたが、博士のものはなかった。

二日、三日と過ぎていき、一週間がたった。

「もう見つからないんじゃないかな。あるかどうかもわからないじゃないか」

ベンの弱気な言葉に、オリビアは強く言い返した。

「あるわよ。博士はほとんど泊まり込んで研究していて、生活用の部屋までもらっていたんだから」

二人は部屋という部屋をあさって青い手帳を探した。

ある日、ベンは分厚い黒の手帳を見つけた。普通なら流すところだが、探すのにいいかげん飽きて気分転換にその手帳をめくった。

中身は手帳というよりもノートに近かった。最初の五ページほどは、戦争に使われたアンドロイドの専門用語とその解説が書かれていた。アンドロイドは戦闘に特化していて、感情は持ち合わせていなかった。人間とコミュニケーションをとることはできなかった。ほとんどが男性型で、軍服を着て人間に扮していた。しかしそれ以外の性質はあまりに人間に近かったため、人間を滅する光線に焼かれてすべて壊れてしまった。

すぐに興味は薄れ、閉じようとしたとき一枚ページがめくれた。

『五月二十六日 少女を保護した』

俄然興味が湧いてベンはまた読みだした。

『両親から虐待を受けた末、脳に深刻な異常が認められた』

そういえばオリビアも虐待を受けたんだっけ。もしかしたら、オリビアの事かもしれないな。

続きは気になるけど、青い手帳を探さなければならない。だから、持っていくことにした。探すのをさぼっていたのがばれたらオリビアは怒るだろうから、内緒で。

結局、その日は博士の手帳は見つからなかった。

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