オリビアの特殊能力
「あとの話は簡単だ。おじさんはものすごい金持ちでね。石油王だし、カジノを持ってるし、一秒に何億も稼いでた」
「ふうん。で、どうやってあんたのおじさんは死んだの?」
もう腹は立たなかった。むしろオリビアには話せると思った。
「おじさんは俺を守って死んだ。戦争が始まって国がおじさんの石油を乗っ取ろうと、俺ごと暗殺者だらけの旅客船に乗せた。おじさんは俺だけを逃がして、爆弾で船を自分もろとも吹っ飛ばした」
オリビアは相変わらず淡々と言った。
「自己犠牲ってやつね。うん、いくつか分かったわ」
「え…何が?」
「妹の話はすごく長かった。よって重度のシスコン。おじさんの話は短かった。あまり触れられたくないのね。でも恩は感じてる。死んだということを二度も言ったから」
「…当たり」
オリビアは心を見透かす能力でもあるのだろうか。論はしっかりあるけども、まったくもってその通りだ。
「そして、まだ二つ。右腕が壊死したということは、腕を切り落としたということ。だとすれば、今ある右腕、それ、義手でしょ。あと、おじさんは遺書を残しており石油はベンが継いでたちまちお金持ちに。大量の暗殺者を雇って、国から再び襲ってきた時に返り討ちにしたんでしょ」
「おおー。全部当たり…」
そういえば自分の事ばかり話していて、オリビアの事は何も知らない。
ベンは聞いてみた。
「オリビアはどんなふうに育ったの?」
オリビアは首を傾げた。思い起こしているみたいに。しかしその青い目には何も映っていないように見えた。
「あたし…?は幼いころ親に虐待されて、施設に預けられた。戦争が始まる少し前に暗殺の訓練を受けたわ。たぶんそんな感じ」
「え?」
『たぶんそんな感じ』?
「記憶がないのか?」
「なんか…元々親もいないように思えるの。数年しか生きていないようにも百年生きているようにも感じるの。夢を叶えるために人を殺していたときに頭をぶち抜かれて、きっと記憶もろとも飛んじゃったのね」
「頭を!?なんで生きてるんだよ」
「銃弾が頭蓋骨で止まって脳に傷をつけなかったって医者が言ってたわ」
「そんなことあるんだね」
「前例はあるわよ。ねえ、それより重要なこと」
「何?」
「このあたりにウェントワース研究所があるわね。知ってる?」
「ああ、少し歩いた所にあるね」
「そこに育て親の博士が勤めていたの。その博士の手帳が欲しいんだけど、一緒に探してくれない?」




