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空の妖精  作者: 道豚
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学級委員をきめよう

立候補者が居ると役員はすぐに決まります。

 高専は寮生が多いため、朝の登校はまるでラッシュアワーのように学生が寮から校舎まで続いている。博美は永山と一緒にその中に居た。

「多いねー。 こんなに沢山学生が居るんだ」

 永山が呆れたように博美に言う。

「そうねー、 それよりさー、 さっきから視線を感じるんだけど。 僕なんか変かな?」

 確かに追い抜きざまに振り返って見ていく者や、横からちらちら見ている者がいる。

「うん、確かに見られてる。 でもさ、仕方が無いんじゃない」

「なんでー、 なんで僕が見られるのさ?」

「わかんないの?」

「うん、なんでだろ?」

「あんた、あとで鏡によく相談してごらん。 分かるから」

「?????」




「それじゃー、 裕子ちゃん。 また後で」

 永山と「物質工学科」の前で別れて、博美は教室まで来た。

「おはよう!」

 朝の挨拶が元気なのは明美の教育の賜物だ。

「おはよう」

「おーす」

「おお」

「すっ」

 いろんな挨拶が返ってきた。博美は自分の椅子に座り、横を向く。

「加藤君、おはよう」

「おお、おはよ」

「ねえ、昨日飛行場に行ったんだよ。 小松さんと服部さんが居てね、服部さんに一回飛行機借りられたんだ。 いいだろう」

「おまえ、どうやって行ったんだ?」

「歩いて」

「元気あるなー、 1時間ぐらい掛かるだろ」

「うん、そのくらいだった。 でも帰りは服部さんが送ってくれたから」

「それでね、その時不良が3人来てね、でも小松さんと服部さんが勝っちゃた」

「そらそうだ、あの二人強いんだぜ。 しかも服部さん、警察に知り合いが居るんだ」

「あー、 それで警察がすぐにきたんだー」




 チャイムが鳴って、担任がやって来た。

「はい、静粛に」

「それでは今日は学級委員を決めましょう」

 とたんにクラスが「がやがや」と煩くなった。

「立候補はありませんか?」

「…………」

「ありませんね。 それでは推薦で。 ただし秋本さんは推薦しないように」

「えーーー」

「なんでー」

「ずるいー」

 とんでもない騒ぎになった。

「静かに!」

 なかなかクラスは落ち着かない。

「おーい! 静かにしろよ。 これじゃ何も決まらないじゃないか」

 誰かが大声を出した。それによりやっと静かになった。

「彼女はクラスでただ一人の女性です。 必ず推薦されることが予想されます。 他と違うというだけで推薦を受けるのは差別です」

 担任が説明した。

「よって、今回は推薦しないでください。 後期はその限りではありません」




「西村君を推薦!」

 担任が黒板に名前を書く。

「おおーー」

「佐々木君を推薦します」

 黒板に書く

「おおーー」

 なぜか名前が挙がるたびに歓声が上がる。

「後は居ませんか?」

「…………」

「それでは、この二人に正副の学級委員をお願いしたいと思います。 どちらが学級委員をするか決めましょう」

「はい、俺がします」

 西村が手を上げた。

「異議はありませんか?」

「異議なし!」

「はい、それでは学級委員は西村君。 副学級委員は佐々木君で決まりです」

「うおおおーーー」

 最後は一般棟4階を震わす歓声で締めくくられた。博美はただただ呆然と男子たちの様子を眺めているだけだった。

「(なにこれ…… 皆の「のり」ってすごい…… 付いていけない)」

 その他の役員は立候補があったりして、わりと簡単に決まった。博美は保健委員に立候補したが、なぜか落選してしまった。




 長いホームルームが終わって、博美たち機械工学科1年生は校内を見学して回った。一般棟や図書館などはみな知っていたが、専門棟である機械科棟や実習工場等は、初めての場所なので、全員興味津々だった。




 昼休みになり、博美は寮まで昼食を食べるために歩いていた。隣を加藤が歩いている。

「ねえ加藤君、工場の中の機械は面白そうだったね」

「ああ、来週になれば実習が始まるから、いろいろ使えるんだよな。 楽しみだ」

「秋本さん、お昼に行くところ?」

 横から男が話しかけてきた。

「んんっ!」

 加藤がつい睨んでしまう、が

「あれー、 吉岡君。 一緒になるの珍しいね」

 博美は親しそうに話をする。

「そうだね、教室は隣なのにね。 授業が終わる時間ってけっこうまちまちだよね」

「おい、誰だい?」

 加藤は吉岡と初対面だ。

「あ! そうか。 加藤君は始めて合うんだね。 吉岡君って言って、中学校の同級生」

「そんで、こっちは加藤君。 同じラジコンクラブに居るんだ」

「「あ、どうも」」

 二人が同じ言葉で挨拶をする。

「うふふ……」

 二人が揃っているのがなんだかおかしくて、博美は笑ってしまった。




 3人はなんとなくそのまま食堂のテーブルに着いた。相変わらず吉岡はご飯大盛りだが、加藤も大盛りにしてもらっていた。博美はやっぱりご飯少な目だ。

「二人ともよく食べられるねー。 信じられない」

「「なんの此れしき、少ないぐらいだ」」

 二人の答えがまた揃ってしまった。

「ねえ、なんでそんなに気が合うの?」

「「…………」」

 二人とも黙ってしまう。

「ちょっと多いかなー。 吉岡君、一個あげる」

 博美がから揚げを一つ吉岡の皿に乗せた。加藤がそれを横目で睨んでいる。

「加藤君も、はい!」

 博美は加藤の皿にもから揚げを乗せてあげた。

「一緒なんだから、喧嘩・し・な・い・の!」

「「子ども扱いするなよ!」」

 やっぱり揃ってしまう二人だった。



騒ぐ皆を止めたのは西村だったりします。

博美が保険委員になると仮病が増えることを危惧した担任が手を回したため、博美は落選しました。

加藤と吉岡、どちらも博美が気になるようです。

博美はそんな二人の気持ちに気が付いているのかな?

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