表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の妖精  作者: 道豚
3/190

家族

博美の家族、ご紹介。

「ただいま」

「お兄ちゃん、おかえり。 ねえ面接どうだった?」

 博美が中学校に顔を出して先生に報告した後、夕方に帰ってくると、妹のひかりが早速今日の事を聞いてきた。

「緊張したよー。 気持ちが悪くなるぐらい……」

「それで受かりそう?」

「そんなこと分からないよ。 受ける人が沢山居たから」

 居間に向かって歩きながら博美が答える。

「もし受かったら当然入学するんだよね」

 話を続けながら博美の後ろを光が付いてくる。

「もちろん。エンジニアになるのが夢だから」

「でも高専は全員寮に入るんでしょう。 寂しくない?」

「平気だよ……」

 二人で話しながら居間に入ると突然声がした。

「ほんとう? 博美はけっこう寂しがりやじゃない?」

「おかあさん、帰ってたの?」

 普段は仕事に出ていて5時過ぎでないと帰ってこない明美あけみが台所に居た。

「そうだよねー」

 光が明美の言葉に相槌を打つ。

「大丈夫だって」

 博美がむきになって否定する。

「まあ、そうゆうことにしておきましょ」

 明美の言葉でとりあえず兄妹喧嘩に発展することはなかった。




「着替えてくる」

 二人にそう言って博美は二階の部屋に向かった。

「(明日は土曜日か。風が吹かなければ久しぶりに飛ばしに行くかな……)」

 部屋に入ると着替えもそこそこにラジコングライダーの整備を始める。受験勉強のために去年の秋から飛ばしに行かず天井から下げてあったグライダーは埃だらけになってしまっていた。




「ごはんだよ」

 光が呼びに来た。

「え、もうそんな時間?」

 光の声に時計を見ると帰ってからもう2時間が経っていた。

「うん、すぐ行く……」

 博美は答えてからグライダーと送信機を充電器にセットして居間に下りていった。

「何してた?」

 明美が尋ねると横から光が

「お兄ちゃん、グライダーを触ってたんだよ。 まだ合格したわけじゃ無いのにね」

「ちょっとぐらい休憩したっていいじゃないか」

 告げ口されて、むっとした調子で博美が答えた。

「おかあさん、明日ぐらい久しぶりにグライダー飛ばしてもいいよね?」

 進学が決まるまではグライダーを飛ばしに行かない約束をしていた訳で、本当ならこんな事は言えない筈だが、物は試しと博美は頼んでみた。

「今日は大変だったでしょうから、明日ぐらい休憩してもいいんじゃない」

「やった! おかあさんありがとう」

 明美の答えに大喜びする博美だった。




 夕食を食べた後、博美は父(光輝)(みつき)の部屋に来た。部屋の中は掃除がされていて、本人が居たときよりも綺麗だった。ただ机の上だけは、ついさっきまで父が作業をしていたかのように模型飛行機の部品や工具が出しっぱなしになっている。

「お父さんがいつ帰ってきてもいいように」

 と明美がそのままにしてあるのだ。でも絶対に帰ってこないことは家族全員が分かっていた。光輝は一昨年の夏に海外出張先でテロに合い、部下を庇いながら射殺されていた。博美のグライダーはその出張に行く前日に無理を言って光輝から譲ってもらった物だった。

 ラジコンマニアだった光輝の部屋にはまだまだ沢山の飛行機やグライダーが残されている。大事にしていたスタント(アクロバット)機もちゃんと置いてある、でも博美はそれを勝手に使おうとは思わなかった。自分自身で決めていること、それは父と同じエンジニアになったとき、その時この部屋にある飛行機を使わせてもらうことだった。

「皆、もう少し待っててくれよ」

 博美が飛行機たちに話しかける。

「高専に合格したら、お父さんの代わりに僕が空に連れて行ってあげるから」

 部屋を見渡し、異常が無いことを確かめると、博美はそおっとドアを閉めた。


保険金や見舞金等で、今のところ秋本家は十分暮らしていけます。

しかし将来のため、明美はフルタイムで仕事をしています。

飛行機を出しやすいように、光輝の部屋は一階にあります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ