表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の妖精  作者: 道豚
20/190

博美の飛行機

光輝は知っていた?


「みなさん、それじゃ失礼します」

 井上のレガシィの助手席から博美が手を振りながらクラブ員たちに挨拶をしている。

「良いかい、行くよ」

 井上が車をスタートさせた。

「博美ちゃん、今日はどうだった」

「楽しかったです。 いつもは年上の人ばかりの中で飛ばしているので、同じ年の人と飛ばすのは初めてでした」

「仲良くなってくれてよかったぜ。 加藤は性格は良いが、わりと無口で人付き合いが悪いから心配だったんだ」

「加藤君って、良い人ですよ。 やさしいし……」

 加藤が博美を最初から女の子として接してくれた始めての男の子だった。

「ところでさ……博美ちゃん、十分エンジン機を飛ばせそうだぜ。 練習機は要らないかもな」

 今日のグライダーでのアクロバットを見たことにより、井上が判断を下した。

「軽スポーツ機から始められそうだ」

「ほんとですか♪ わー どんなのが良いかな?」

「良かったら、これからまた部屋を見せてもらえるか? 探してみよう」

「はい、おねがいします」




「ただいまー」

 歩けないので、井上の肩を借りて玄関まで来て、博美がドアを開けた。

「井上さんが、もう一度お父さんの部屋を見たいって」

「おかえり、 どうだった……って、足、どうしたの?」

 玄関先に出てきた明美がテーピングをした博美の足を見て言った。

「えへへ♪ 落ちたグライダーを拾いにいったときに捻った。 でもお医者さんが居たから、テーピングしてくれたんだ」

「あんたねー、なに「おてんば」してるのよ…… 女の子が……」

 明美が呆れている。

「俺が付いていて、すみません。 止めたんですが……」

 井上が頭を下げた。

「そんな……いいですから……気にしないでください」

 明美が慌てて井上を止めた。




「この機体が良いんじゃないか?」

 光輝の部屋で博美の飛ばせる飛行機を探していた井上がいい物を見つけたようだ。

「これは「アラジン」だ。 これも世界チャンピオンになった人の設計だから、性能は折り紙つきだぜ」

 ピンクを多用した可愛い飛行機がそこに有った。

「きれい……かわいい……これ僕に飛ばせますか?」

「問題ないと思うぜ。 きっとこれは博美ちゃんのために用意してあったんだろう。 こんな可愛いカラーリングの機体を作るのは普通じゃないからな」

 ベテランである光輝が自分で飛ばす為に今更小さなスポーツ機をキットから組み立てるのは変だし、中年の男が飛ばす飛行機にしてはカラーリングが可愛らしすぎる。

「ひょっとして、博美ちゃんが女の子だってことを知っていたのかもな……」

 博美には思いもよらないことを井上が言った。




「それじゃーなー、また休みが合ったら一緒に行こうな」

 井上がレガシィで帰っていった。

「あら、夕ご飯を食べていけば良かったのに」

 明美がほんと~に残念そうに言った。

「お母さん、井上さんはこれからあの看護師さんに合うんじゃない?」

 博美の思考もだんだん女の子になってきたようだ……




「お姉ちゃん。 足、どうしちゃったの?」

 三人がそろった秋本家の夕食時、博美の怪我に光が気付いた。

「落ちたグライダーを拾いに行ったときに捻ったんだって」

 と明美が横から答える。

「お姉ちゃんがグライダーを落とすなんて珍しいんじゃない?」

 確かに博美はもう一年近くグライダーを壊していない。

「僕のじゃないよ、加藤君のだよ。 あ・加藤君ってのはそこのクラブ員で、僕と同じで春から高専の機械科に入るんだって」

「えー 男の人でしょ。 なんで落ちちゃったの?」

「勝負しようって言うから…… 僕に勝とうなんて、百年早いよね。 僕の入ったサーマルに入り損ねて、下降気流に捕まっちゃたんだ」

 博美から常々聞かされているので、二人とも専門用語を理解している。

「で、お姉ちゃんが探しに行ってあげたのね。 でも怪我をしたのに、よく帰ってこれたね」

「加藤君もすぐそばに居たから、助けてくれた」

 お姫様抱っこをされた事を思い出して、博美の顔が赤くなってきた。

「お姉ちゃん、顔が赤いよ……もしかして抱っこされたんじゃない?」

 光は鋭い……

「ま・ま・ま・まさか……肩を貸してくれただけだって!」

「まっ、そういう事にしといてあげる」

 ますます赤くなる博美の顔を見て、光が何かを納得した顔でそう言った。

「ねえ、その加藤って子、どんな男の子?」

 明美も興味津々だ。

「えーっと、背が高くてー 僕が話すときは、うんと上を向いて話さなくちゃいけないの。 力も強くてね、僕を簡単に持ち上げちゃうんだ。 だからグライダーもすごく高く上がるんだよ。 優しいところもあってね、僕が怪我してグライダーが投げられないだろうって、代わりに投げてくれたんだ」

「ふうん、優しいのねー。 で、博美を抱っこしてくれたわけね?」

「ど・ど・どうしてそんな風にもっていくの?」

「だって、博美を持ち上げてくれたんでしょ?」

 明美が首を傾げて言う。

「やっぱりお姉ちゃん、抱っこされたんだー!」

「あっ! ああーー……失言したー」

 博美は真っ赤になった顔を両手で隠して机に突っ伏してしまった。



飛行機のカラーリングは大事です。空の上で見やすく、下品にならないように……

一生懸命に加藤のことを説明する博美を見て、明美や光は何を思ったか?

博美は女の子になっても弄られキャラでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ