01
転校して二日目の朝。
駅から歩いて学校に向かっていたナオは、前を歩くカズホに気がついた。カズホの金髪は遠くからでもすぐに分かった。
カズホは左肩にスクールバックを、右肩にはソフトギターケースを背負い、ウォーキングステレオのイヤホンをして、両手をズボンのポケットに入れたまま歩いていた。
カズホが交差点に差し掛かった時、一人の女生徒が駆け寄って来て、カズホと並んで歩き出した。ナオと同じ制服を着た女生徒が締めているネクタイは、緑色を基調にしたレジメンタルタイであり、三年生であることが分かった。女生徒は笑顔をカズホの方に向けながら、嬉しそうに何かしゃべっていた。
ひょっとしてカズホの彼女だろうかとナオは思ったが、よく見ると、カズホはその女生徒の方に顔を向けることはなく、イヤホンもはずさず、適当に相槌を打っているように見えた。
ナオは、カズホ達と付かず離れずの距離を保ちながら、そのまま学校まで歩いて行った。
ナオが教室に入ると、カズホは既に席に座わって頬杖をつき、窓の外を見ていた。
教室の前から自分の席に向かうと、当然、カズホの席の横を通ることになる。挨拶しても無視されそうな気がしたが、根が真面目なナオは、挨拶をしないでカズホの横を通り抜けることはできなかった。
「おはよう」
ナオが小さな声で挨拶をすると、カズホは目だけをナオの方を向けて、ぶっきらぼうに「おはよう」と挨拶を返してきた。挨拶が無視されなかったことでナオは胸を撫で下ろした。
カズホは、休憩時間になると、よく教室から出て行った。一年生の時にもカズホと同じクラスだったミエコによると、今のクラスには一年生の時にカズホと仲の良かった男子がいないことから、その男子の所か、軽音楽部の部員の所に行っているのではないかとのことだった。
しかし、その日の三時限目が終わった後の休憩時間には、珍しくカズホは教室から出ることなく、自分の席で頬杖を付きながら教科書を読んでいた。
次の授業の日本史で小テストがあると予告されていたからだ。もちろん、ナオもその後ろで熱心に教科書を読んでいた。
その時、二年生の別のクラスの女生徒二人が教室に入って来て、カズホの横にやって来た。カズホに用があるのは、そのうち一人だけで、もう一人は応援団のようだった。
「あ、あの、佐々木君」
用がありそうな女生徒がカズホに声を掛けると、カズホは、教科書から目を上げ、頬杖を付いたまま、その女生徒を見上げた。
「ああ、田中か。どうした?」
「あ、あの、今日、佐々木君にお話したいことがあって……。できれば放課後、一緒に帰りたいんだけど……」
(いきなり女の子からデートの誘い?)
ナオは焦って、読んでいた教科書をさらに顔にくっつけて、聞いていないふりをした。
「悪い。ちょっと野暮用があって今日は無理だな」
カズホは、そっけなくその誘いを断って視線を教科書に戻した。
「そ、そう。……分かった。それじゃあ、また今度ね」
田中と呼ばれた女生徒は肩を落としながら二年一組の教室を出て行った。