08
ドールを出たショーコとナオは、また駅に戻り、そこで別れた。
ナオは、ショーコと反対方向に向かう電車に乗って、三つ目の駅で降り、そこから自宅までは歩いて五分ほどの距離だった。
自宅はマンションの五階にあった。
「ただいま」
玄関で靴を脱いで、リビングに行くと、母親と妹の沙耶がいた。長い黒髪をツインテールにした沙耶は、今年から小学校に通いだしたピカピカの一年生だった。
「お姉ちゃん、お帰り!」
ナオの顔を見るなり抱きついてきた九歳下の沙耶が、ナオは可愛くて仕方なかった。
「ただいま。沙耶、もうお友達できた?」
「できたよ。男の子のお友達だよ」
「そ、そうなんだ」
「奈緒子ちゃん。高校の方はどうだった?」
母親が、なんとなく遠慮がちな様子でナオに訊いてきた。
「う、うん。私も友達、できたから……」
「そう、良かった」
「あ、あの、明日から、その友達と放課後、一緒に図書館で勉強をする約束をしたから、ちょっと帰るのが遅くなると思う……」
「夕ご飯までには帰って来られるんでしょう?」
「う、うん。夕ご飯は、遅くなっても家で食べるから……。沙耶の寝る時間もあるから、私が夕ご飯の時間までに帰って来なかったら、先に食べてて」
「そう。でも余り遅くまで、勉強、頑張らないでね」
「う、うん」
ナオは、母親と話をするたびに疲れが溜まっていく気がして、そそくさと自分の部屋に入った。