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ドール―迷子の音符たち―  作者: 粟吹一夢
第六章 強まる絆
55/73

06

 次の日。

 二年一組のカズホの席には、入れ替わり立ち替わり、女の子がやって来て、プレゼントをカズホに渡していた。ナオがざっと数えただけでも二十人以上はいた。

 女子高生が贈るものだから、それほど高価な物は無いだろうが、どれも綺麗にラッピングされており、中にはメッセージ付きのものもあった。

 カズホは、一応は「ありがとな」とお礼を言いつつ、プレゼントを受け取っていたが、後ろの席で見ていたナオには、かなり辟易へきえきした感じに見えた。

 昼休みに、カズホはもらったプレゼントを持って消えたが、午後、教室に戻って来た時にはプレゼントは持っていなかった。置き場所に困って部室に置いてきたようだ。

 ナオは、あのプレゼントの山を見て、自分のプレゼントにカズホが喜んでくれるか、ちょっと自信を失いかけていたが、昨日、カズホと約束したんだから、ちゃんと渡そうと改めて心に決めた。


 ナオは、今日ほど放課後が待ち遠しいことはなかった。みんなと同じように教室で渡すことができたらという気持ちにもなったが、ドールで二人きりでいる時にプレゼントを渡すことができると思えば、我慢のしがいもあった。

 放課後。カズホは軽音楽部の練習が終わらないと来ないはずのに、ナオは最短のラップタイムでドールに着いた。

「こんにちわ」

「ナオちゃん、いらっしゃい」

「今日もカフェオレ、お願いします」

「はい」

 ナオは、いつもの席に座ると、鞄からカズホに渡すプレゼントを出した。

 綺麗にラッピングした小箱は昨日、雑貨屋さんで買ったもの。もう一つのリボンで結んだ袋は、手作りクッキーであった。

 ナオが、テーブルの上で、ラッピングが乱れていないかチェックしていると、マスターがお冷やを持ってきた。

「カズホへのプレゼントかな?」

「あっ、は、はい」

 マスターは、ニコニコしながらカウンターに戻って行った。


 部室で練習中だったカズホの携帯電話が鳴った。

 発信先を見てみると、母親が勤めている生命保険会社から掛かっていた。カズホは急いで電話に出た。

「佐々木一穂様の携帯電話でしょうか?」

「はい。そうです」

「こちら東京生命美郷営業所の広田と申します。お母様の佐々木雅美さんが交通事故に遭われて、今、救急車で美郷総合病院に運ばれていると連絡が入りました」

「えっ!」

 いつもクールなカズホが大声を出したことに、マコトとハルの方がびっくりしていた。

「マコト! 練習は中止だ! 俺、すぐに行かなきゃ!」

 美郷総合病院だと走って十分ほどの距離だ。カズホは全力疾走で病院に向かった。

 病院に着くと、母親は既に病室に入っていると告げられた。

 嫌な予感がしたが、気持ちを落ち着かせながら、病室の前までやって来た。ドアをノックする。

「どうぞ」

 その声を聞いて、カズホは体中の力が抜けた。ドアを開けると、腕や足に包帯を巻いたり絆創膏を貼った母親がベットに腰掛けていた。

「なんだよ。びっくりさせるなよ。人工呼吸器なんかが付いてて寝たきりになっているのかと思ったぜ」

「ははは。お母さんの身体もけっこう頑丈だったみたいだよ」

「いったい、どうしたんだよ?」

「原付バイクでお得意様回りをしていたんだけど、急に猫が飛び出してきて、それにビックリして転んじゃったのよ」

「で、怪我はどうなんだ?」

「骨は折れてないって。擦り傷くらい。ヘルメットをかぶっていたけど、頭を打ったから、これからすぐに精密検査をするのよ」

「そ、そうなのか」

 そこに看護師がやって来た。カズホも脳検査室について行った。

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