05
五月のある日の昼休み。
ナオは、いつもどおり、教室でミエコとハルカと一緒にお弁当を食べていた。
一週間後にハルカの誕生日があり、三人でミニパーティをしようという話題で盛り上がっていた時、ミエコが、ふと思い出したかのように言った。
「そういえば、明日は佐々木君の誕生日のはずなんだよね」
「えっ、そうなの?」
ナオは、昨日もドールでカズホと会っていたのに、カズホからそんな話は聞いていなかった。
ハルカも不思議そうにミエコに訊いた。
「ミエコ。どうして佐々木君の誕生日を知っているの?」
「知らない方がおかしいよ。本当にここの女生徒ですか? 明日はたぶん、ここにもいっぱい人が来るよ」
「どうして?」
「明日になれば分かるって」
ナオは、誕生日を知らせてくれなかったカズホが水くさいと思ったが、よく考えると、積極的に自分の誕生日を言うことは、プレゼントをねだっているみたいだと思い、カズホなら言わないだろうなと思い、一人納得した。
その日の夕方。
ナオは、ドールでカズホを待っている間、カズホに誕生日プレゼントを渡したいと思い立った。
今まで、義理ででも、男の子にプレゼントを渡したことはなかったが、カズホの誕生日は、自分にとっても、すごく大事な日のような気がしてきて、一緒にお祝いをしたくなった。
カズホがドールにやって来ると、ナオはすぐにカズホに訊いた。
「あ、あの、佐々木君」
「なに?」
「明日って、佐々木君の誕生日なの?」
「えっ、誰に聞いたんだ?」
「あの、クラスで話題になっていたから」
「そうか。……休もうかな、明日」
「えっ、どうして?」
「あっ、いや、冗談だって」
カズホは、本当に憂鬱そうだった。
「あ、あの、佐々木君」
「んっ?」
「わ、私も誕生日プレゼント、あげたいなって思っているんだけど、う、受け取ってもらえますか?」
ナオは、なんか照れくさくて、モジモジしながら訊いた。
「水嶋が、俺に?」
「はい。……あ、あの、いらないって言うのなら自粛します」
「いや、水嶋がプレゼントしてくれるっていうのなら喜んで受け取るよ」
「ほ、本当ですか?」
「ああ」
「ありがとうございます!」
ナオはニコニコしながらカズホに頭を下げた。
「なんでプレゼント渡す方がお礼言ってんだよ」
「あっ、……そうですね。えへっ。……あの、佐々木君。何が良いですか?」
「はあ? プレゼントのリクエスト訊かれたの初めてだぞ」
「そ、そうなんですか。……すみません。私、男の子にプレゼント渡すの初めてで、いったい何が良いのか、よく分からないものですから……」
「水嶋が選んでくれたものなら何でも嬉しいよ」
「……分かりました。でも、こんなプレゼントは困るってものはないですか?」
「そうだなあ。持ってるだけで逮捕されちゃう物とか、ぼかしを入れないと見られない物とか、ホラー映画の殺人鬼がよく持っているような物とかは嫌だな」
「そ、そんなプレゼント、どこで売っているんですか~!。チェンソーとかラッピングしてくれる所があるんですか~!」
「ははは。だから、それ以外だったら何でも良いよ」
「もう~」
ドールを出て、ナオは、駅前のショッピングセンター内のお洒落な雑貨屋に立ち寄った。
(でも、何をプレゼントすれば良いのかな?)
女の子の友達には、何回か誕生日プレゼントを渡したことがあるから、同じように可愛い雑貨でも良いかなと思った。
(これなら喜んでくれるかな? ……あっ、でもこっちのも可愛い)
色々と選んでいるだけでも楽しかった。
(あっ、これ! ……うん、これにしよう)




