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ドール―迷子の音符たち―  作者: 粟吹一夢
第六章 強まる絆
54/73

05

 五月のある日の昼休み。

 ナオは、いつもどおり、教室でミエコとハルカと一緒にお弁当を食べていた。

 一週間後にハルカの誕生日があり、三人でミニパーティをしようという話題で盛り上がっていた時、ミエコが、ふと思い出したかのように言った。

「そういえば、明日は佐々木君の誕生日のはずなんだよね」

「えっ、そうなの?」

 ナオは、昨日もドールでカズホと会っていたのに、カズホからそんな話は聞いていなかった。

 ハルカも不思議そうにミエコに訊いた。

「ミエコ。どうして佐々木君の誕生日を知っているの?」

「知らない方がおかしいよ。本当にここの女生徒ですか? 明日はたぶん、ここにもいっぱい人が来るよ」

「どうして?」

「明日になれば分かるって」

 ナオは、誕生日を知らせてくれなかったカズホが水くさいと思ったが、よく考えると、積極的に自分の誕生日を言うことは、プレゼントをねだっているみたいだと思い、カズホなら言わないだろうなと思い、一人納得した。


 その日の夕方。

 ナオは、ドールでカズホを待っている間、カズホに誕生日プレゼントを渡したいと思い立った。

 今まで、義理ででも、男の子にプレゼントを渡したことはなかったが、カズホの誕生日は、自分にとっても、すごく大事な日のような気がしてきて、一緒にお祝いをしたくなった。

 カズホがドールにやって来ると、ナオはすぐにカズホに訊いた。

「あ、あの、佐々木君」

「なに?」

「明日って、佐々木君の誕生日なの?」

「えっ、誰に聞いたんだ?」

「あの、クラスで話題になっていたから」

「そうか。……休もうかな、明日」

「えっ、どうして?」

「あっ、いや、冗談だって」

 カズホは、本当に憂鬱そうだった。

「あ、あの、佐々木君」

「んっ?」

「わ、私も誕生日プレゼント、あげたいなって思っているんだけど、う、受け取ってもらえますか?」

 ナオは、なんか照れくさくて、モジモジしながら訊いた。

「水嶋が、俺に?」

「はい。……あ、あの、いらないって言うのなら自粛します」

「いや、水嶋がプレゼントしてくれるっていうのなら喜んで受け取るよ」

「ほ、本当ですか?」

「ああ」

「ありがとうございます!」

 ナオはニコニコしながらカズホに頭を下げた。

「なんでプレゼント渡す方がお礼言ってんだよ」

「あっ、……そうですね。えへっ。……あの、佐々木君。何が良いですか?」

「はあ? プレゼントのリクエスト訊かれたの初めてだぞ」

「そ、そうなんですか。……すみません。私、男の子にプレゼント渡すの初めてで、いったい何が良いのか、よく分からないものですから……」

「水嶋が選んでくれたものなら何でも嬉しいよ」

「……分かりました。でも、こんなプレゼントは困るってものはないですか?」

「そうだなあ。持ってるだけで逮捕されちゃう物とか、ぼかしを入れないと見られない物とか、ホラー映画の殺人鬼がよく持っているような物とかは嫌だな」

「そ、そんなプレゼント、どこで売っているんですか~!。チェンソーとかラッピングしてくれる所があるんですか~!」

「ははは。だから、それ以外だったら何でも良いよ」

「もう~」


 ドールを出て、ナオは、駅前のショッピングセンター内のお洒落な雑貨屋に立ち寄った。

(でも、何をプレゼントすれば良いのかな?)

 女の子の友達には、何回か誕生日プレゼントを渡したことがあるから、同じように可愛い雑貨でも良いかなと思った。

(これなら喜んでくれるかな? ……あっ、でもこっちのも可愛い)

 色々と選んでいるだけでも楽しかった。

(あっ、これ! ……うん、これにしよう)

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