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ドール―迷子の音符たち―  作者: 粟吹一夢
第六章 強まる絆
51/73

02

 徒歩き大会当日。

 全校生徒が参加するため、各学年ごとに時間差でスタートすることになっていた。異なる学年でペアを組んでいる場合は、どちらか上級生の学年でスタートすることになっており、マコトとミカのペアも、カズホとナオ、ハルとレナのペアと一緒にスタートすることになっていた。

 ちなみに二年生は青のジャージ、一年生は緑のジャージを着用と定められていたが、二年生グループに、ちらほら、緑のジャージ姿も混じっていた。

 マコトが、ナオとレナにミカを紹介していた。

「軽音楽部一年の村上だよ。今年は、こいつと一緒に歩くことになったんだ」

「一年三組の村上美香といいます。よろしくお願いします」

 ミカはナオとレナに頭を下げた。

「二年一組の水嶋奈緒子です。よろしくお願いします」

「二年五組の立花麗菜です。よろしく」

 レナは、長い黒髪をポニーテールのように後ろで一つにまとめていた。

「でも、村上さん、どうしてマコトと一緒に歩くことにしたの。マコトから脅迫された?」

「おい、レナ! 知らない人が聞いたら本気にするような冗談は言わないように!」

「わ、私の方からお願いしたんです。ギターのこととか色々と話を聞きたくて……」

「ああ、分かった分かった。そういうことにしておくわ」

「ちょっと待ったー! なんで後輩の言うことが信じられないかな。カズホ、何とか言ってやってくれよ」

「普段の言動からしてしょうがないだろ」

「カズホ! お前もか~」

「なに馬鹿のこと言ってるのよ」

 レナは、このメンバーと一緒に行動できることが嬉しかったのか、なんとなく、はしゃいでいるように見えた。

 レナは、マコトの三文芝居に突っ込んだ後、真面目に準備体操をしているナオにも茶々を入れてきた。

「ナオちゃん、入念に準備しているのね。実は、密かに入賞を狙っているんじゃないの?」

 ナオに対する突っ込みには、やはり、カズホが突っ込み返してきた。

「レナ、冷静に考えてみろよ。水嶋だぞ。水嶋」

「あっ、それって私がいると絶対、入賞できないってことですか?」

「ナオちゃんって、運動、得意だったっけ?」

「うっ、得意かといわれると、得意じゃないです」

「ふふふ。まあ、六人でのんびり行きましょう」

「そ、そうですよね」

 ちゃっかり、レナに賛同するナオであった。


 二年生グループが出発した。

 しかし、目を引く一団であった。全校女子の憧れのまとであるカズホと、男子の憧れの的であるレナが、ペアは別としても一緒に歩いているのだから。また、それぞれのペアが冴えないルックスのナオとハルというギャップも興味を惹かれた。ミカも一年生の女子の中では男子に人気がある美少女だったし、マコトの存在感は群を抜いていた。こんな個性的な六人がグループを作って、おしゃべりをしながらマイペースで歩いていたのだから、注目されないはずがなかった。

 ナオとレナは、つい最近、悩み事を打ち明け合って友達になったばかりなのに、ずっと前からの親友という感じで、他愛のないおしゃべりに夢中になっていた。

 カズホとハルも、バンドのリズム隊として共通する話題もあり、それぞれのペースで話をしていた。

 マコトとミカは、ギターの話題で盛り上がっていた。ミカも中学校時代にギターを始めており、一年以上の演奏経験を有していたから、好きなギタリストの話や演奏技術の話など、話は尽きることはなかった。

 スタートして十キロ辺りまでは、そんな感じで和気あいあいと歩いていた一行であったが、十キロを越えた辺りで、さすがにみんな疲労の色が見えてきた。特に、ハルとナオは、見るからにバテバテになっていた。

 レナが心配してハルに声を掛けた。

「北岡君、大丈夫?」

「だ、大丈夫。きょ、去年も完歩できたし……」

 一方、カズホもナオが心配になり声を掛けた。

「水嶋、ちょっと休もうか?」

「あっ、いえ、……平気です」

「ちっとも平気に見えないのだが」

 一行は、無口になって黙々とゴールを目指して歩いていた。二人ともまだ元気なマコトとミカが先頭を歩き、その後をレナとハルが、そしてナオとカズホが追っていた。

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