01
数日後の放課後。
ナオが一人で下校していると、校門の側にレナが立っていた。
レナは微笑みながらナオに話し掛けてきた。
「こんにちわ、水嶋さん。ちょっと付き合ってもらえる時間ある?」
「あっ、はい。大丈夫です」
ナオは、ドールにカズホが来る時間までに終わるかどうかをちょっと心配したが、顔には出さなかったつもりだった。しかし、レナにはお見通しだったようだ。
「ドールに寄って勉強をする時間を無くさないようにはするから。それにカズホは、今、練習中でまだ来ないと思うし」
「さ、佐々木君のことは関係ないです!」
「分かった分かった。ふふふ。あんまり外でできる話じゃないから、私の家まで来てくれたりする?」
「は、はい」
二人は他愛のない話をしながら立花楽器店まで歩いて行った。
楽器店に着くと、裏口から中に入り、プライベート用エレベーターに乗り六階に上がった。エレベーターを降りた所は、玄関のような靴を脱ぐスペースで、その先は廊下になっていた。
レナは、廊下に三つあるドアのうち、一番手前のドアに入った。
「ここが私の部屋。どうぞ」
「お邪魔します」
ぬいぐるみや可愛い雑貨が置かれた、いかにも女子高生の部屋という感じだったが、エレキギターと小さなアンプ、アコースティックギターやキーボードなどが置かれていて、レナが楽器店の娘ということを思い出させてくれた。
いったん部屋から出ていったレナは、ジュースを入れたコップを二つ持って来て、部屋の中央にある小さなテーブルに置いた。
そのテーブルに、二人は向かい合って座った。
「やっぱり立花さんも楽器するんですね。軽音楽部にいた時は、ボーカルをしていたって聞いたんですけど」
「カズホから聞いたの?」
「はい。立花さんならステージ映えするだろうなあ」
「そんなことないよ。でも、歌ってたら嫌なこともすぐに忘れることができる。人間、やっぱり、声に出して誰かに伝えようとすることで気持ちの切り替えができるんじゃないかな。一人でくよくよ悩んでいても、何の解決にはならないし……」
「……」
レナは、真剣な眼差しでナオを見つめながら話し始めた。
「今日、水嶋さんに来てもらったのは、私の頼みを聞いてもらうため。そして、私の本当の気持ちを聞いてほしいから……。良いかな?」
「……はい」
「ありがとう。……まず、お願いっていうのは、水嶋さんに軽音楽部に入ってほしいっていうこと。カズホやマコトと一緒にバンドをやってほしいってことなの」
「えっ?」
「この前、ドールでそんな話をしていたでしょう。その時にも、ちょっと言ったけど、女の子のメンバーがいれば、私も一緒にできるかもって考えたの。……そう、このお願いは、カズホのためでも、マコトのためでもなく、私のためのお願いなの」
「……あ、あの、なぜ、私が佐々木君達と一緒にバンドをやることが立花さんのためになるんですか?」
「私ね……、カズホに振られちゃったんだよ」
「えっ!」
突然のレナの告白を受け、以前、レナに嫉妬したことを思い出したナオは、その思いも寄らぬ展開に、ただただ驚くばかりであった




