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ドール―迷子の音符たち―  作者: 粟吹一夢
第四章 交差する想い
37/73

05

 マコトとカズホの漫才トークをしばらく聞いていたナオは、ふと、レナに見つめられていることに気がついた。新入生歓迎ライブの際に会った時のような、にこやかな雰囲気ではなく、するどい視線がナオに向けられていた。

「水嶋さん。あなた、いつもここに来ているの?」

「は、はい」

「カズホとジャズ談義をするために?」

「い、いえ。それはたまたまで、ここに毎日通っているのは、私自身、ちょっと事情があって……」

 何となく、レナから詰問されているように思えて、ナオは言葉に詰まった。

「なんか、家に真っ直ぐ帰れない事情があるらしいんだ。もっとも、その理由までは訊いていないけどな」

 答えにくそうにしているナオを見かねたのか、カズホが代わりに答えてくれた。

「ふ~ん。それって今日の宿題?」

 ナオが机の上に広げていたプリントを見ながら、また、レナが訊いてきた。

「あっ、はい。あの、ジャズを聴きながらの方がはかどるので……」

「ふ~ん。そっか」

 レナはそう言うと、腕組みをしながら、しばらく無言でナオをじっと見つめた。

 ナオは、レナの視線が痛く感じられてきて、恐縮するように小さくなっていった。

(立花さん、ひょっとして怒っているのかな? 私が佐々木君と二人きりでドールで会っていることを……)

 うつむき加減のナオは、上目遣いにレナを見ていたが、耐えられなくなって、時々、視線を外した。

 そんなナオとレナの様子に気がついたのか、カズホが割って入ってきた。

「おい、伽羅のこれからについて話すんじゃなかったっけ?」

「ああ、そうだったわね」

 レナは、ふと我に返った感じだった。

「あの、私、お邪魔じゃないでしょうか?」

 ナオは、ここにいて良いのか不安になって、誰にともなく訊いた。

 すると、レナが先ほどの雰囲気とは別人のように、ニコニコしながら答えた。

「こっちの話は、別に聞かれて困ることじゃないから大丈夫よ。水嶋さんの勉強の邪魔になっちゃうけど、ごめんね」

「いいえ、私は全然平気です」

「本当? どうもありがとう。それじゃあ、まず、マコトの考えから聞かせて」

 レナは頬杖を付きながら、隣のマコトを見た。

「俺は、伽羅というバンドは、もう終わったと思っているんだ」

「どういうこと?」

「つまり、メンバーを補充してというより、新しいバンドを一から結成するという考え方だよ。東田と斉藤が抜けたバンドは、もう伽羅じゃないってことだよ」

「新しいメンバーと、新しい方向性のバンドを作り上げるってことか? その考えには、俺も賛成だよ。マコト」

 カズホもマコトの考えに賛成の意志を示した。

「伽羅はロック色が濃い感じだったけど、もうちょっとポップな感じも欲しいなって、前から思っててさ」

「そうだな。十六ビートの曲も増やしたいよなあ」

「はあ~」

 ため息の主はレナだった。

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