03
その日の放課後。
レナは、軽音楽部の部室に行ってみた。
部室の開いたドアから覗いてみると、どうやらマコトとカズホが話し合いをしているようだったので、校門の側で二人が出て来るのを待つことにした。
まだ、軽音楽部に在籍しているが、休部中の身であるレナとしては、部室に出入りすることに、やや後ろめたさを感じていたからだ。
二十分ほどして、マコトとカズホが並んで校舎から出て来るのが見えた。
(あの様子だと、まだ、結論は出なかったみたいね)
小学校以来のつき合いのあるマコトの顔を見れば、カズホとの話し合いの結果はなんとなく想像がついた。
「待ちくたびれた~」
マコトとカズホが校門の所まで来ると、レナは二人に声を掛けた。
「なんだよ。別に待ち合わせなんてしてねえぞ」
マコトが不機嫌そうに答える。
「あら、元メンバーとして、ついに二人きりになってしまった哀れなバンドメンを慰めてあげようかと思って、待ってあげてたのに」
「慰めの言葉だけならいらねえよ」
「でも、このままで良いとは思っていないんでしょ?」
(そう、このままじゃいけない)
レナ自身もそう思っていた。
「そりゃ、そうさ」
「私も休部中とはいえ、一応、軽音楽部の部員だし、二人と話がしたいの。伽羅の今後について……」
「何か良いアイデアでもあるのか?」
「ないこともないわ。それに三人寄れば文殊の知恵っていうじゃない。二人だけで話すより色んなことが見えるかもよ」
「そうだな。話し合っているうちに、良いアイデアも浮かぶかも知れないしな。マコト、ちょっと話してみるか?」
それまで黙ってマコトとレナの話を聞いていたカズホもレナの意見に賛成した。
「おう、俺は良いぜ」
「それじゃあ、立ち話もなんだし……、久しぶりにみんなでドールに寄ってみない?」
レナは、その時、カズホが一瞬、たじろいだように見えた。
「何? どうしたの?」
「別に……」
ナオの従兄弟のショーコが行き付けだったように、歴代の美郷高校軽音楽部の部員はみんな、一度はドールに行ったことがあった。マコトもレナも例外ではなかった。
「しかし、この三人でドールに行くのって、本当に久しぶりだよな」
マコトが記憶を辿るように、上目遣いになりながら言った。
「そうね。別々には、けっこう行っているけど、三人揃っては、私がまだ軽音楽部にいた頃以来じゃないかな」
「そうだな」
「カズホは、いつも行っているんでしょう?」
「ああ、バイト前の腹ごしらえにね」
三人がドールに入ると珍しく満席だった。いつもカズホが座る席にも一人の女の子が背中を向けて座っていた。
「ありゃ~、満席だな。珍しいこともあるもんだ」
「そうね。場所を変えましょうか?」
マコトとレナが、どうしようかと話しているにもかかわらず、カズホは、さっさといつもの席に向かっていた。
「あら、あの制服、うちの学校の女の子だわ」
「本当だ。カズホの知り合いなのかな?」




