02
その日の昼休み。
教室から出て行こうとしていたカズホに、弁当箱を持ったミエコが声を掛けた。
「あの、佐々木君。ナオちゃんと一緒にお昼を食べたいんだけど、椅子を貸してもらって良い?」
カズホは「ああ、良いよ」とだけ言うと教室から出て行った。
「やり~。佐々木君の席ゲット!」
ミエコは、カズホの椅子を後ろ向きにして、ナオと向かい合うようにして座った。
「先を越されたかあ」
ハルカは悔しがりながら、ナオの横の席の女生徒の椅子を借りて、ナオとミエコの横顔を見る位置で座った。
昨日、転校初日に話し掛けてきてくれたハルカとミエコとあっという間に仲良くなったナオは、二人と一緒に自分の机の上で弁当箱を開けた。
「さっき、三組の田中さんが佐々木君のところに来てたよね。ナオちゃん、佐々木君と田中さん、何を話していたの?」
ミエコは、めざとくチェックしていたようだった。
「よく聞こえなかった」
「そうなの。でも、田中さんが帰るとき、何か落ち込んでいたから、佐々木君に振られちゃったな。あれは」
(するどい!)
ミエコの観察眼に感心するナオであった。
「佐々木君って、廊下とか登下校の道すがらとかに、よく女の子から話し掛けられているんだよね。あれってやっぱり告白されているんだろうなあ」
カズホにストーカーでもしているのか、ミエコは、カズホが女の子から告白されているシーンに何回も遭遇しているようだった。
「ミエコは告白しないの?」
「ははは。玉砕必至だからね。アイドルと同じで、遠くから見ているだけで十分なのよ」
ミエコは、言い訳とも諦めとも付かないようなことを言って、ハルカの突っ込みをさらりとかわした。
(でも、佐々木君って本当に人気があるんだ)
ナオは今更ながらカズホのモテモテぶりを実感した。




