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第一章 選帝の都は、曖昧な輪の内側に Ⅰ-ⅵ 【エルバ】
「まぁ、そう急くな、エルバ公(……早漏野郎)。私は、貴殿に【良い話】をもってきてやったんだぞ(……仮性包茎?)」
コイツ……小声で、とんでもないことを言いやがった……。
「帰らせてもらおうか。ランカスティ子爵殿、失礼する」
オレは、席を立つ(……やっぱり包茎野郎か、という声が聞こえたが無視する)。
コイツの【良い話】が、文字通りであるはずがない。
やはり、コイツと関わっては駄目だ……オレのペースを乱される。
「【神聖ライン帝国皇帝選挙】……最近、貴殿は、これに興味あるのでは?」
なに……?
どうしてコイツが、そのことを知っている……?
誰から漏れた?
そうか……コイツも、【十六被選皇家】の一当主だったな。
しかし、ランカスティ子爵家が、皇帝選挙に出馬することを考えていたのか……まさかな。
「やはり興味がありそうだ」
……少し、表情を変えたことを読み取られたか……。
しかたない……変に隠すよりもコイツの意図を知る方が得策だ。
「では、その【良い話】というものを聞かせてもらおうか、ランカスティ子爵殿」
そう言って、オレは、再び席についた。




