第一章 選帝の都は、曖昧な輪の内側に Ⅰ-ⅲ 【マリーナ】
「で、何の御用ですか? お母様」
「はい! 実は、マリーナちゃんに、紹介したい男性がいたりします!」
「男性ですか? どうして?」
「ま、ぶっちゃけ【お見合い】です」
「…………?」
一瞬、思考が止まる。
【お見合い】って……なに?
もちろん【お見合い】の概念は、理解していたが、それが私と関係することが理解できなかった。
ただ、バカ母のことだから、そんなことがあってもおかしくはない。
それは理解できる。
考えてみれば、私も二十歳を過ぎている。
十分に結婚を考える年齢だ。
しかも、ルシアお姉様がいない今、ランカスティ家を継ぐのは私なのだから、本来であれば一刻も早く結婚をすべきなのだろう。
「……相手は?」
恐る恐る聞いてみる。
「さて! 誰でしょうか!? 正解者には、三千点!」
満面の笑みで嬉しそうにはしゃぐバカ母……本当にムカつく。
「相手は?」
「はい! チャンスタイム!」
「相手は?」
「挑戦者、ライフラインを使いますか?」
「そんなのいらないから、早く、教えて!」
「えー、もっと焦らしたほうが面白いのにー」
「うるさい! 早く!」
母親の首をつかんで、猫のように摘み上げる。
「……すんません」
……借りてきた猫のように大人しくなる母だった。