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第五章 世界の瑕疵-『扉』 Ⅰ-ⅷ 【ルクト】
「イリシス!」
僕は、イリシスの前に出ると、僕の背中に隠れるように言った。
イリシスは、戸惑いながらも僕の言葉に従ってくれた。そして、僕は、息を整えながら"あいつ"と向い合う。
視線が交差した。
……久しぶりやな……"あいつ"のこの人を斬るような視線を浴びるのは……。
八年ぶりぐらいだろうか。
こうして再会してみると、その歳月の長さと重さを感じざるをえない。
お互い確実に違う時間を積み重ねてきのだ。そして、僕達は、もう違う場所でしか生きれなくなってしまった。
「久しぶりやな、レクラム」
自分でも驚くほど自然に、その言葉を口に出すことがができた。
この僕の言葉に、"あいつ"―レクラム・クレメンスは、皮肉っぽい笑みを浮かべると、「そうだな、ルクト」と応えた。
八年ぶりの親友との再会だった。