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アンビエント・リング  曖昧な輪の連  作者: 降矢木三哲
アンビエント・リング 第一部
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第五章 世界の瑕疵-『扉』  Ⅰ-ⅳ 【イリシス】

わたしとお兄ちゃんは、マリーナさん達と別れてからは、それまでと違って、のんびりとエフィアに向かっていた。

 


わたしがお兄ちゃんに「急がなきゃいけなかったじゃなかったけ?」とお兄ちゃんに聞いてみると、「ああ、なんかもうええみたいや」という答えが返ってきた。

 

わたしは、直感的に"お兄ちゃんは、何か隠している"と思ったけど、気にしないことにした。


もし、気にし始めたら、今のこの時間を"壊して"しまうかもしれない。


今は、このお兄ちゃんとの時間を大切にしたい。


エフィアに着いてしまえば、また、わたしはお兄ちゃんの『部下』に戻ってしまう。


だから、せめてこの時間を大切にしたい。


今、わたしと一緒に旅をしているお兄ちゃんは、ストアでわたしと一緒に暮らしていた"お兄ちゃん"なんだから……。

 

わたしは、自分の"願い"を適えることができたのだ……完全にとは言えないけど……。


でも、それでもわたしは、今のこの時間に満足している。

 

そう、わたしは、満たされている。

 


それは、本当……本当だよ……。



うん!



もっとテンション上げよっと!



今夜わたし達が泊まる町は、エフィアに一番近い町、『トロア』である。

 

ここは、聖都エフィアの近くにあるにもかかわらず、とても小さな町だった(ストアとそれほど変わらないかも)。


それは、この町がエフィアに近すぎて、ほとんどの旅行客は、そのままエフィアまで行ってしまうからだと、宿屋の人が笑いながら言っていた(そこ笑うところ?)。


つまり、通り過ぎられてしまうらしい。

 

確かに、小さな町だけど、わたしにはベルグみたいな都会よりもこういった感じの町が好きだった。

 


……わたしが田舎者だけだからかもしれないけど。

 


実は、今わたしは、お兄ちゃんと一緒にいなかったりする。


お兄ちゃんが考え事をしているみたいだったから、こっそりと部屋を抜け出してきたのだ。

 

今夜は、月が雲に隠れているから、散歩するのに適しているとはいえなかったけど、なんだかお兄ちゃんが考え事をしている姿を見ているのが少し辛かった。

 


お兄ちゃんは、この町についてから口数が少なくなってしまった。



わたしが話しかけてもどこか上の空だ。

 

ま、もうすぐエフィアに着いちゃうし、色々と考えなくちゃならないこともあるんだろうけど……そうだよね、明日には、エフィアに着いちゃうんだよね……。

 

分かっていたことだけど……やっぱり寂しいかな……もうちょっと、お兄ちゃんと二人で旅をしたかったよ。

 

でも、これからもお兄ちゃんの傍にはいることはできるんだから、ま、良しとしますか。


 



あれ? 


 



宿屋があんなに遠くに見える……いつのまにこんなに遠くまで来てしまったんだろう? 

 

さすがに、もう戻らなきゃ。

 

お兄ちゃんも心配しちゃうし。

 

わたしが、もと来た道を戻り始めようとしたとき、背後に人の気配を感じた。

 


一人? 

 

二人?

 


……なぜだろう? よく分からない。

 


一応わたしも、正式な魔法の修行を受けた異端審問官だ。


普通の十六歳の女の子よりも身体能力は上回っているはず……だと思う……いいえ! ある! この際、言い切っちゃおう! 


しかも、しっかりと体術も修めているのだ。

 

それなのに、こんな近くの気配を読み切れないなんて……。

 


振り向く?



それとも、気づかないフリをして距離を開ける?

 


迷っている時間はない。

 




わたしは、後者を選ぶことにした。

 




出来るだけ冷静に、足を運ぶ。

 

相手に動く様子はない。

 

わたしは、歩き続ける。

 

いける、あともう少し距離をかせげれば……






「キミは、テレーズか?」


 



男の人の声がした。


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