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アンビエント・リング  曖昧な輪の連  作者: 降矢木三哲
アンビエント・リング 第一部
38/98

第四章  曖昧な輪は望む者の手の中に Ⅲ-ⅱ 【イリシス】

宿場ファル。



今日の早朝、ベルグを出発したわたし達は、日暮れ前にはこの町に到着した。


聖都エフィアに近いだけあって、かなり賑わっている。ベルグほどじゃないけど、人の数がとても多い。


しかも、様々な服装の人達がいる。


おそらく、わたしが想像もできないくらい遠い場所から来ている人もいるんだろう。



ま、それは横に置いといて……。



今、わたしはマリーナさんと宿屋の一室にいた。もっと詳しく言うと、ベッドに並んで座っていた。



この宿屋は、予めエルバさんが予約してくれていたみたいで、すぐにわたし達は、それぞれ部屋に落ちつくことができた。


お兄ちゃんとエルバさんの男性陣と、わたしとマリーナさんの女性陣が二つの部屋に分かれた。


ま、、こう言うと何の問題もなかったかのように聞こえるけど、実はお兄ちゃんが、この部屋割りについて話そうとしたら、マリーナさんが、お兄ちゃんと一緒の部屋に泊まりたいと激しく主張した。


そして、エルバさんも「それやったら、オレはマリーナちゃんと一緒に泊まるで!」と言い出したのだ。


しかし、半ギレ状態のお兄ちゃんの強引な決断により、今の部屋割りに落ち着くことができた。



……本当に、エルバさんとマリーナさんは何を考えているだろう……。



今は、急ぎの旅だってこと自覚しているのかなあ……特にマリーナさん……。


 

本当にもう!

 

 

あんなにお兄ちゃんにベタベタして!

 


お兄ちゃんも、お兄ちゃんよっ!

 


嬉しいそうにヘラヘラして!



「イリシスちゃん、どうしたの?」


気がつくとマリーナさんが、わたしの顔を覗き込んでいた。


「な、なんでもありません……」


「本当に? なんか機嫌が悪いみたいだけど……もしかして……」


まさか……マリーナさん、お兄ちゃんとわたしの関係に気づいたんじゃ……。


わたしは、昨日別れ際に、お兄ちゃんに、「ストアでのことは誰にも言うな」と言われたことを思い出した。 

 

まさか、お兄ちゃんにそんなことを言われるとは、思っていなかった……。

 

確かに、わたしとお兄ちゃんとの関係が周囲に知られることは、"よくない"ことだとはわかっているけど……。

 

これは、仕方ないんだよね……?

 

仕方ないことなんだ……。

 

『部下』であるわたしは、お兄ちゃんに言われたことを守るだけ……。


誰にも、わたしとお兄ちゃんとの関係を知られちゃいけない。

 

もし、知られちゃったら……お兄ちゃんの傍にいることができなくなってしまうかもしれない……。


そんなのいやだ……いやだよ……また、独りに戻るのは絶対にいやだよ……。

 

わたしは、緊張しながらマリーナさんの顔を見た。 


「……もしかしてなんですか?」

 わたしは、ゴクリと唾を飲み込む。



「イリシスちゃん、エルバのこと好きなの?」




 

ドーン! と、こんなありきたりな音がわたしの頭の中に響き渡った。




 

「な、なんでそういうふうになるんですか!?」


「えっ? 違うの?」


「違いますっ!」


「だって、なんかイリシスちゃん、わたしのことを恐い顔で見ていたから、嫉妬しているのかなぁと思って……」


わたし……そんな顔していたの……?


 

でも、それがどうしてわたしがエルバさんのことが好きなことになるのよっ!



普通に考えたら、わたしが好きなのは……って……ま、それは横に置いといて。



「別に嫉妬なんかしていません」


「そうかなぁ……じゃあ、どうしてあたしを怖い顔で見ていたの?」


「本当にそんな顔をしていましたか?」


「してたわよ」


「……うぐっ」



このマリーナさんの自信のある断言口調に、わたしは言葉をつまらせてしまった。



……確かに、言われてみれば、そんな気もしてきた。


でも、それはお兄ちゃんが悪いんだよ。


お兄ちゃんが、マリーナさんにヘラヘラするから……。


お兄ちゃんが、わたしに話しかけてくれないから……。


お兄ちゃんが、わたしを見てくれないから……。


 


お兄ちゃんが…………。



……やめよう……わたし何を考えているんだろう……こんなんじゃ、お兄ちゃんとの関係に全然納得できていないじゃない……。



「まあ、そんなことより、イ・リ・シ・ス・ちゃん、お願いがあるんだけど」


「な、なんですか、マリーナさん……?」


「あたし、ルクトさまと二人っきりになりたいんだけど、協力してくれない?」





 えっ? …………えええええっ!

 




「ダメですっ! それだけは絶対にダメぇ!」





 わたしは、思わず叫んでしまった。


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