第二章 再会は曖昧な輪の内側で Ⅳ-ⅹ 【イリシス】
お兄ちゃん……。
感情を抑えきれなくなったわたしは、お兄ちゃんの胸に飛び込んだ。
もう、離れたくないよ……絶対に……。
お兄ちゃんの身体から、わたしの行動に戸惑っているのが伝わってくる……でも、拒絶はされない……それだけでも……とても嬉しかった……。
……無視されてもいい……お兄ちゃんの傍にいられるなら、それだけでいい……それ以上は、求めない……だから……
わたしを、拒絶しないで……お願い……お兄ちゃん……。
「あっ……」
お兄ちゃんが、わたしの背中に手を回して抱きしめてくれた。
お兄ちゃん……こんなことされたら、わたし、切なくなっちゃうよ……。
言いたいこといっぱいあったのに……言えなくなっちゃうよ……。
お兄ちゃん……。
お兄ちゃんは、今わたしの側にいる。
もう、どこにもいかないよね……?
わたしとずっと一緒にいてくれるよね……?
ねえ、お兄ちゃん……?
わたしは、お兄ちゃんの胸から顔を上げた。
お兄ちゃんは、わたしのことを真っ直ぐ見てくれている。
お兄ちゃん……。
わたしは、もう自分の気持ちを抑えることができなかった。
わたしは、お兄ちゃんが好き。
ずっとお兄ちゃんと一緒にいたい。
だからお兄ちゃん……わたしはもっとお兄ちゃんに……。
わたしは静かに目を閉じた。
お兄ちゃん……。
「よお、ルクトとイリシスちゃん。こんな昼間から人前で熱すぎるんちゃうか?」
えっ……なに?
エルバさん! どうしてここに?
タイミング悪すぎ!
しかも、イリシスちゃんなんてなれなれしいよ……。
それに、お兄ちゃんのことをルクトだなん……てっ! ル、ルクトぉ!
わたしは、バッとお兄ちゃんから離れた。
エルバさんは、ハンザ家の一員。そのエルバさんが、”ルクト”と呼ぶのは、従兄弟であるルクトさま。
だから、エルバさんが、”ルクト”と呼ぶ人は、検邪聖庁であるルクト・ハンザさま……そして、今エルバさんが、”ルクト”と呼んだのは、お兄ちゃん……。
じゃあ! お兄ちゃんがルクトさまなの?
なんなの?
全然わかんないよ?
いったいどういうことなの?
……もう……どうなってるの……?
なにがなんだか分からないよ……。
こうなったら本人に聞くしかない。
「お兄ちゃん」
わたしは、お兄ちゃんを睨む。
「な、何かな、イリシス」
お兄ちゃんは、強張った顔で、そう言った。
三哲です。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
さてARも、イリシスとルクトの再会に至り、ひとつの区切りがつきました。
今後も『毎日更新』をしていくつもりですが、もし、この拙作に感想を頂けるのであれば、もっと頑張れると思います。
……もし、よろしければ宜しくお願いいたします。
(・_・)ペコリ!