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アンビエント・リング  曖昧な輪の連  作者: 降矢木三哲
アンビエント・リング 第一部
19/98

第二章 再会は曖昧な輪の内側で  Ⅳ-ⅷ 【イリシス】

「さて、お兄ちゃんが黙っていなくなった理由を教えてもらいましょうか?」



わたしは、「あっ、そういえば……」と言って立ち上がろうとしたお兄ちゃんを椅子に座らせると、そう切り出した。



「その前に、トイレに行ってもええ?」


「ダメ」


「ええやん、じゃないと漏らしてしまうぞ」



「漏らしてもいいよ」

 このわたしの言葉に、お兄ちゃんは口を噤んだ。



本当に、往生際が悪いよ……情けなくなっちゃう……。


ここまで来たんだから、もっと堂々として欲しいよ、まったく……。



しかし、わたしは、このお兄ちゃんの情けない態度に対して、とても懐かしさ……それも心地よい懐かしさを感じていた。

 




わたし……本当に、お兄ちゃんと再会することができたんだ……。





追い求めていた人の情けない姿を見て、満たされるなんて……ちょっとイヤだけど、今わたしは、とても満たされている。



……でも……お兄ちゃんは、わたしに黙っていなくなった事実は変わらない……。



この事実がある限り、また、お兄ちゃんがいなくなってしまうかもしれない。



……そんなのイヤだよ。



せっかく会うことができたのに……また、お兄ちゃんと離れ離れになるなんて……そんなの絶対にイヤだ……。


わたしは、理由を知りたい。


お兄ちゃんがいなくなった理由を知りたい。


お兄ちゃんは、わたしのことが嫌いになったから、いなくなっちゃったの?


わたし、お兄ちゃんにそんなに嫌われることをしたの?


わからないよ……。


教えてよ……。


応えてよ……。


……そうじゃないと……わたし……





また、ひとりぼっちになっちゃうよ……。




  

わたしは、込み上げてくる涙を抑えることができなくなってしまった。



「イ、イリシス、どないしてん?」



わたしが急に泣き出したのを見て、お兄ちゃんが慌てて立ち上がり、わたしのすぐ隣に来てくれた。


そんな兄ちゃんの行動が、さらにわたしの涙腺を弱くしていく。



「ううっ……えぐっ、えぐっ」


 

三年前のあの日から重ねてきた想いが、お兄ちゃんと再会したことによって一気に溢れ出してしまった。





お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。お兄ちゃん…………。

お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。お兄ちゃん…………。お兄ちゃ………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。お兄ちゃん…………。

 




「お兄ちゃん!」


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