第二章 再会は曖昧な輪の内側で Ⅳ-ⅴ 【ルクト】
「お嬢さん、今ヒマですか?」
僕はこの言葉を口に出してから、すぐに後悔した。
久しぶりのナンパだとはいえ、なんでこんな使い古された声の掛け方をしたんや?
僕の好みの女性がいたから舞い上がってしまったから仕方ないけど……こんなんじゃ、彼女に相手にしてもらわれへんかもしれへんやん。
しかし、僕の予想とは違って彼女は、僕の方を見てくれた。
彼女と目が合った。
綺麗な人やなぁ……。
大人の魅力と少女の魅力の両方を持ち合わせている。
理想どおりや、僕の理想どおりや!
これって運命の出会い? 運命の出会いや!
エドモンドー! って誰やねん!?
ふーっ、興奮のあまり、わけのわからへんことを、心の中で叫んでしまった。
僕は、改めて彼女の顔を見てみた。
彼女の表情は強張っているようだった。
やっぱり、あんな古典的なナンパをしたからかなあ……もっとしっかりと考えてからしたらよかったわ。
……脈なしか……これでは、エルバに笑われてもしかたないな……。
しかし、彼女の瞳は、僕を捉えたまま反らされることはなかった。
もしかして脈あり……でも、そうやったらなんでこんなに顔を強張らしてるんや?
わからへん……。
彼女の気持ちがわからへん。