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アンビエント・リング  曖昧な輪の連  作者: 降矢木三哲
アンビエント・リング 第一部
13/98

第二章 再会は曖昧な輪の内側で  Ⅳ-ⅱ 【イリシス】

同日同時刻。

 


ベルグの大通りに面したとあるお店。


いかにもセンスの良い都会の人達が利用しそうなお店。


そんなお店の中で、わたしは、マリーナさんのオモチャと化していた。



「いやーん、イリシスちゃん可愛い♪」

 マリーナさんは、試着室のカーテンを開けるなりそう言った。


わたしは、マリーナさんに選んでもらった服を試着してみて、それをマリーナさんに見てもらっている。


マリーナさんが選んでくれた服は、白いフリフリのたくさん付いている淡い青色を基調としたワンピースだった。


わたしは、この服を見て思わず口から出掛かったセリフが、「こんなのわたしには無理だよ!」というものだった。



だって、可愛らしすぎるんだもん。



しかし、わたしは、もうテンションが上がりまくているマリーナさんの意向には反対することはできず、仕方なく、この服を持って試着室に入ったというわけである。


マリーナさんが「可愛い」と言ってくれたので、わたしは、もう一度しっかりと自分の姿を鏡で見てみた。



確かに可愛いかも……でも、なんかロリ系に偏りすぎている気が……わたし的には、もっと大人っぽい感じの服が着てみたいんだけどなぁ……。



「あらっ、イリシスちゃん、なんか不満そうね……もしかして、『もっと大人っぽい服を着てみたい!』、なーんて思ったりしているんじゃない?」



「そ、そんなことあ、ありませんよ。な、何を言ってはるんですか。あははははっ」



マリーナさんに心の中を見透かされて、わたしは、しどろもどろになりながら不自然に笑った(しかも、ちょっとルカーナ語も混じってしまったし……)。


「そうよね。やっぱりイリシスちゃんぐらいの年頃の女の子は、背伸びをしたいものよね。よし! ここはお姉さんに任せなさい! 


あたしが、イリシスちゃんを、一人前の大人の女性にコーディネートしてあげるわっ!」



マリーナさんは拳を胸の前で握り締めた。



うわー……この人全然わたしの話を聞いてないよ……しかも無駄に気合入りまくってるし……。


もう、わたしには、このテンション上がりまくりのマリーナさんを止めることはできそうになかった。



それからさらに二時間、わたしはマリーナさんのオモチャとして過ごした。


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