第二章 再会は曖昧な輪の内側で Ⅳ-ⅱ 【イリシス】
同日同時刻。
ベルグの大通りに面したとあるお店。
いかにもセンスの良い都会の人達が利用しそうなお店。
そんなお店の中で、わたしは、マリーナさんのオモチャと化していた。
「いやーん、イリシスちゃん可愛い♪」
マリーナさんは、試着室のカーテンを開けるなりそう言った。
わたしは、マリーナさんに選んでもらった服を試着してみて、それをマリーナさんに見てもらっている。
マリーナさんが選んでくれた服は、白いフリフリのたくさん付いている淡い青色を基調としたワンピースだった。
わたしは、この服を見て思わず口から出掛かったセリフが、「こんなのわたしには無理だよ!」というものだった。
だって、可愛らしすぎるんだもん。
しかし、わたしは、もうテンションが上がりまくているマリーナさんの意向には反対することはできず、仕方なく、この服を持って試着室に入ったというわけである。
マリーナさんが「可愛い」と言ってくれたので、わたしは、もう一度しっかりと自分の姿を鏡で見てみた。
確かに可愛いかも……でも、なんかロリ系に偏りすぎている気が……わたし的には、もっと大人っぽい感じの服が着てみたいんだけどなぁ……。
「あらっ、イリシスちゃん、なんか不満そうね……もしかして、『もっと大人っぽい服を着てみたい!』、なーんて思ったりしているんじゃない?」
「そ、そんなことあ、ありませんよ。な、何を言ってはるんですか。あははははっ」
マリーナさんに心の中を見透かされて、わたしは、しどろもどろになりながら不自然に笑った(しかも、ちょっとルカーナ語も混じってしまったし……)。
「そうよね。やっぱりイリシスちゃんぐらいの年頃の女の子は、背伸びをしたいものよね。よし! ここはお姉さんに任せなさい!
あたしが、イリシスちゃんを、一人前の大人の女性にコーディネートしてあげるわっ!」
マリーナさんは拳を胸の前で握り締めた。
うわー……この人全然わたしの話を聞いてないよ……しかも無駄に気合入りまくってるし……。
もう、わたしには、このテンション上がりまくりのマリーナさんを止めることはできそうになかった。
それからさらに二時間、わたしはマリーナさんのオモチャとして過ごした。