第二章 再会は曖昧な輪の内側で Ⅳ-ⅰ 【ルクト】
「で、どうするんや?」
今、僕とエルバは、ベルグの大通りに来ていた。
エルバが、「いっちょ! ナンパでもしにいくか! コンチクショウ!」と言ったからだ。
それに対し僕は、親指を立てて「了解!」と応えた。
もう、完全に昔のルカーナ時代のノリを取り戻していたのだ。
逃避といわれてもいいから今日一日だけでも、僕と僕を取り囲む世界を忘れたかった。
そうしなければ、自分を保てそうになかったのだ。
「まあ、かつてはティアスルートの最強コンビと言われたオレ達やけど、現役から退いていたおまえは、いきなりの実践はキツイやろうから、まずこのオレが見本を見せたるわ。
それで昔のカンを取戻してくれ」
エルバは、そう言うと、近くを通った背の高いスレンダーな美人へ向かって行った。
で、結果は……。
「おまえ全然あかんやんけ!」
僕は、右頬に平手打ちをもらって帰ってきた、エルバに対して半ギレでそう言った。
「す、すまん」
エルバは右頬を手で抑えながらすまなそうにしている。
「わかった、次は僕が行く」
「ちょっと待ってくれや。次は、次は、次こそは、絶対に成功するから……」
「ほんまやな」
「ああ、このエルバ様に二言はない」
ぶつかり合う男と男の視線。
そして、頷く男二人。
「よっしゃわかった。エルバ、僕におまえの華麗なるテックニックを見せてくれ!」
「了解!」