黄金の波
「なあ、知ってるかい。とある村の話なんだがね」
それは、ここじゃないどこか。
異国の果てか、
あるいは忘れ去られた星の窪みか。
その国には、時間が流れていない。
止まっているんじゃない、
ただ、そこにあるだけなんだ。
そこでは「子供」も「大人」も、
そんな区別は意味をなさない。
どちらが先に生まれ、どちらが後に消えるのかなんて、順番を数える者はもう誰もいないんだよ。
あそこにいる連中は、自分が自分であることさえ、もう思い出せないのさ。
「……でね、面白い噂があるんだ。その国からやって来た『何か』が、今もどこかに紛れ込んでいるらしいって」
そいつが誰なのか、どんな姿をしているのか、誰も知らない。
けれど、人々は震える声で囁き合う。
――そいつは、俺の中にも、
お前の中にも、既に深く根を張っているらしい。
「何のことだか、さっぱりわからねえだろう? おめえさんも、どこかで聞いたことがあるかい。……あなたと私。その境界線が溶けてなくなる『その時』のことを」
いやあね。
誰にでもあるらしいんだ。
心の真ん中に、すべてを静かに引き摺り込む「空虚」が。
そんな、どこぞの星の話。
検討もつかねえよな。
俺たちの今は、こんなに必死で、
こんなに泥臭いんだから。
「――おっと。あーあ、今日もいい夕日だな」
天が割れ、血のような夕陽が世界を飲み込み始める。
光の光線とともに、どこからか地響きのような音が鳴り響く。
荘厳なパイプオルガンの和音か、
あるいは世界が軋む波動か。
正体不明のその音が、空気を、地面を、そして彼らの鼓膜を震わせる。
人々は、逆光の中に立ち尽くし、その圧倒的な光に目を細める。
自分と他人の区別も消え、昨日と明日の入れ替わりさえどうでもよくなっていく。
彼らはその極彩色の光の中で、深い、深い、永遠の眠りにつくのだった。
要はね。
どれほど美しく輝いても、最後はみんな、等しくその光に溶けて、死ぬっていうことさ。




