1 峯広晃
夏の終わる、夕暮れ時どき。
この時間帯は部活動があるため人の声が遠くからでも聞こえる。
(あー明日は雨かもな、姉ちゃんに言っとこ)
ひこうき雲を見ながら、峯広晃は自転車をこぐスピードを上げる。
人の声が小さくなり、虫が鳴く音が大きく聞こえるなか、今日もお詣りをしに自宅から程近い神社へと足を運ぶ。特に義務感というわけではないが、なぜだかせずにはいられない。蛇のような家紋が描かれているお賽銭箱の前に立ち、今日の感謝を伝える。
(今日も見守ってくださりありがとうございました)
幼い時から姉と一緒にお詣りをしているが、それが何年も続いて今に至る。高校生になり、大学生の姉と一緒に行く回数は必然的に少なくなるが。それでも毎日のように行く。お詣りをするために。
「、、、、、?」
お詣りを終わらせ、鳥居を通り抜け、帰ろうとした瞬間、違和感があった。何かが違う。振り返ってみるが、いつもと変わらない風景。しかし、なぜか違和感が消えない。
(、、、、早く帰ろ)
家に着いたとき、違和感が決定的になる。いつもなら電気がついているはずなのに、真っ暗だ。姉は今日1日中家にいると朝言っていた。絶対に家にいるはずなのに、、、
「姉ちゃん?、、、」
電気をつけた瞬間、衝撃の光景があった。
「、、、は?、、姉ちゃん?」
姉がリビングで倒れていたのだ。
「姉ちゃん!!!」
(外傷はない!!呼吸もしている!!、、、寝てるのか⁉いつからこんな状態なんだ!?)
すぐに救急車を呼んだ。
「姉ちゃん大丈夫だから‼もうすぐ救急車来るから‼、、」
何度呼び掛けても起きる気配はなかった。呼びかけているうちに、救急車が到着し、、、そのあとは覚えていない。どのくらい時間がたったのだろうか。気づいたら病室にいて、姉はベッドで眠りについていた。
「、、、入院の手続きをしなきゃならないんだけど、ご両親はいらっしゃる?」
「、、、、いいえ。両親は他界してるので」
手続きをなんとか終わらせ、病室へ戻る。
「、、姉ちゃん」
起きるわけがなく、部屋全体に無慈悲に響いただけだった。




