表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫策クン! 改  作者: 青雲あゆむ
第3章 覇王激突編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/76

55.曹操との手切れ

建安12年(207年)12月 揚州 丹陽郡 建業


「許都に兵が集まってるだと?」

「はい。その数、すでに5万を超え、なおも増加中のようです」

「チッ、もう動いたか。もっと休んでりゃいいのに」


 曹操が華北を平定し、しばらくはおとなしくするかと思っていたら、半年足らずで動きはじめやがった。

 一段落したんだから、少しは休めっつうの。

 思わず舌打ちして愚痴をこぼせば、周瑜が他人事のように言う。


「たしかに、予想以上に早いね。それだけ君のことを、危険視してるんだろう」

「そういうことなんだろうな。俺はこのままでいられるんなら、おとなしくしてるってのに」

「アハハ、心にもないことを」


 本音を口にしたら、周瑜に笑われてしまった。

 まあ、今までさんざん、中華を統一するって言ってるからな。

 でも曹操が攻めてこないんなら、おとなしくしててもいいと、思ってるんだぜ。

 ちょっとだけどな。


「しかし曹操は、どんな名目で兵を出すんだ?」

「表向きは天子さまの前で、閲兵式をするためらしいですぞ。裏では兵糧を大量に集めてるので、バレバレですが」


 俺の問いに、魯粛が呆れた声で答える。

 すると周瑜が皮肉そうな顔で、今後の展開を推測する。


「フフフ、孫策を許都に呼び出して、臣下の礼を取らせるのが目的かな。そしてもしも出頭しなければ、そのまま攻め入るつもりだろう」

「そうだな。素直に出頭しても、どこかで暗殺されるかもしれないしな」

「あり得るね。いずれにしろ、今の孫策は強大すぎて、放っておけないんだ。どうしたって決戦は避けられないんだから、諦めた方がいいよ」

「はぁ……やっぱりそうか……しょうがない。とりあえず張昭たちと話してから、襄陽へ行くか」

「ああ、そうしよう」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安13年(208年)3月 荊州 南郡 襄陽


 ハロー、エブリバディ。

 孫策クンだよ。


 建業で打ち合わせを済ませると、俺たちは襄陽へ向かった。

 その間、やはり曹操から呼び出しがあったが、病気で行けないと回答してある。

 そして中原の様子をうかがいながら、防衛計画を進めていたら、曹操が言いがかりをつけてきた。


「俺が華北の経済を、混乱させてるだぁ?」

「ああ、この詰問状にはそう書いてあるね。そしてなんとしても許都へ出頭して、弁明せよとある」

「やれやれ。俺はむしろ、物価を安定させてるってのに」

「それは華南の話だけで、華北はまた違うからね」


 華南では劉巴りゅうはたちによって、物価の安定化政策が進められていた。

 董卓が乱造する前の五銖銭ごしゅせんを鋳造して、それに見合った物価が形成されるように指導したのだ。

 さらに高額の取引にはきんや証文の使用を奨励して、華南の経済成長を支えた。


 一方、曹操は華北で何をやったかというと、銭以外の現物や労力による納税を認めて、混乱した経済を建て直した。

 農産物や家畜、布などの市場取り引きのルールを周知させ、現物による取り引きを復活させたわけだ。

 これによって董卓五銖銭によって混乱していた華北の経済は、一時的に持ち直したという。


 しかし数年前から平和を謳歌している華南と比べれば、その脆弱性ぜいじゃくせいは明らかだ。

 好景気に沸く華南に銭が引き寄せられ、華北はますます銭不足になっていた。

 おかげで華北の経済は停滞してしまい、その責任を俺になすりつけてきたってわけだ。


「あながち無関係じゃないところが、少し反論しにくいな」

「ああ、こうなることは、十分に予測されてたからね」

「というよりも、そうなるように誘導すらしてましたよね」


 劉巴たちと経済政策を話し合う中で、こうなるのは予測がついていた。

 むしろそうなれば、華北の経済の足を引っ張ることができて、徴税能力も低下させられる。

 そう考えた俺たちは、華北の銭を引き寄せるよう誘導した。

 表向きは、あくまで華南の経済成長のためってことになってるがな。


「さて、丞相閣下には弁明の手紙を送っておくか。体調が悪くて、そちらへは行けませんってな」

「フフフ、そうなるといよいよ、戦争だね」

「まあな。そして敵を引き寄せて叩いたら、そのまま逆襲だ」

「ハハハ、実に楽しみですな」

「ああ、曹操に吠え面かかせてやろうぜ」

「「「おうっ!」」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安13年(208年)7月初旬 荊州 南郡 襄陽


 ていねいに呼び出しを拒否しつつ、曹操にケンカを売ってやったら、すぐに買われた。

 その数20万人という軍勢が、南陽郡へ進撃を始めたのだ。

 すでにその先鋒は、南陽の中心に近いえんに到達しているという。


「”王にしてもらった恩を忘れ、漢朝に刃向かわんとする逆賊 孫策を討ち果たさん”、ときたか。気合い入ってるな~」

「何、のんきなこと言ってんすか、兄貴。逆賊認定っすよ」

「別にどうってことねえよ。こっちだって曹操を、”君側くんそくかん”呼ばわりしてるからな」

「そうそう、今さらどうってことないさ。それはそうと孫策。難民への対処は済んだのかい?」

「それはまあ、ぼちぼちってとこだな」


 20万人もの兵士が通過したら、その土地はボロボロになる。

 食料は奪われ、女はさらわれ、目ぼしい金品は残らないだろう。

 もちろん曹操も多少は抑制しようとするだろうが、20万もの兵を完全に統制できるはずがない。


 そのため俺は、曹操軍が通過しそうな地域には、早めにお触れを出して、物資や人員を避難させていた。

 軍隊の略奪なんてこの時代、当たり前なもんだから、住民も素直に従っている。

 もちろん全てを移すことはできないが、多くの人間が曹操軍の進路から逃げ出していた。


 残ったのは堅固な防壁に囲まれた城郭都市であり、こういうところにはそれなりの自衛力もある。

 襄陽より北の街には、曹操に逆らわないよう言ってあるので、それほどひどいことにはならないだろう。

 まあ、多少は悲劇が起きるかもしれないが。


 そんな状況を注視しながら、襄陽の防備を固めていると、敵がとうとう樊城の北に現れた。


「敵先陣、約2万が布陣しました。大将は夏侯淵かこうえんと思われます」

「さらに張郃ちょうこうの軍1万も、樊城の北西に到着しました」

曹仁そうじんの軍1万が、北東に布陣しつつあります」


 先程からひっきりなしに、敵の動きについて連絡が入ってくる。


「おうおう、続々とご到着だなぁ」

「フフフ、天下分け目の戦いになるのは、間違いないね」

「2人とものんきなこと言ってるけど、本当に大丈夫なんすか?」


 そう言う呂範ですら、まるで危機感は見えなかった。


「フフン、襄陽を取ってから、もう8年になるんだ。その間に、さんざん準備はしてある」

「ああ、今の襄陽は、中華最大の要塞と言ってもいいだろう。そして城を盾に戦う訓練も積んである」

「そんな要塞に挑む敵の兵士こそ、ご愁傷様だ」

「うわあ、すごい自信っすね。ちゃんと責任とってくださいよ」

「もちろんだ。まあ、見てろって。呂範の方こそ、ちゃんと仕事しろよ」

「うい~っす」


 その後も続々と、敵軍が襄陽周辺に集結してきた。

 しかしそれこそが、曹操の覇権の終わりにつながる道なのだ。

 さあ、中華統一の戦いを始めようじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ