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それゆけ、孫策クン! 改  作者: 青雲あゆむ
第3章 覇王激突編

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幕間: 曹操クンはブチ切れた

建安10年(205年)8月 州 国 ぎょう


「なんじゃ、こりゃ~~~っ!」

「そ、曹操さま。落ちついてください」

「これが落ちついて、おれるか~っ!」


 儂は怒りのあまり、目の前の机を蹴飛ばした。

 ああ、またお気に入りの茶器が……

 しかしそんなことで、怒りは治まらない。


「南陽郡が孫策の傘下に収まるよう望んでいるとは、まことのことか?!」

「それがその……どうやら、事実のようでございます」

「なんでじゃ~っ!」


 今度は背後の机を蹴飛ばした。

 ああ、またお気に入りの花瓶が割れてしもうた。

 これも全て、孫策のせいだ。


 あろうことか孫策め、南陽郡を傘下に収めたいと言ってきた。

 しかもそれを、南陽郡自体が望んでいると言うのだ。

 しかし南陽郡は、張繍ちょうしゅうを降してからこっち、儂の傘下だったのだぞ。


 それが孫策の下に付きたいとは、儂を馬鹿にしておるのか?

 たしかに南陽は荊州の一部であるし、儂の目が行き届いていない部分もあるかもしれん。

 だがそれにしてもだ。


「これから南陽に攻め入るか?」

「ご、ご冗談を。曹操さま」

「この顔が、冗談を言っているように見えるのか?!」

「ですから、落ちついてください」


 荀彧じゅんいくが必死に制止してくる中、郭嘉かくかが口を開いた。


「認めてやりましょう、曹操さま」

「なんだとっ!」

「ですから南陽郡の荊州入りを、認めてやるのです。職頁しょくこうは規定どおりに納めると言っていますし、軍事行動の透明化にも配慮しています。表向きは味方同士なので、勝ち負けも発生しません」

「しかしそれでは、儂のメンツが立たんだろうがっ!」


 儂の怒りの声に、荀彧や荀攸が首をすくめている。

 しかし郭嘉は涼しい顔で、受け流した。


「曹操さまのお腹立ち、お察しします。ですので孫策には、罰を下してやりましょう」

「むう……罰とは?」

「暗殺を仕掛けます」


 郭嘉は顔色も変えず、そう言い放った。


「暗殺だと? もし失敗して、ばれでもしたらどうする? すでに失敗した前科もあるのだぞ」

「失敗はあるかもしれませんが、ばれることはあり得ません。そういう者たちを使いますので」

「ふむ、それは噂に聞く、闇の者か?」

「はい」

「しかしそれでは、時間が掛かるであろう」

「いいえ、すでに仕込みは済んでおりますので、あとは命令するだけです」

「ほほう、さすがは郭嘉だな」

「お褒めにあずかり、光栄です」


 相変わらず冷静なヤツだ。

 それにしても、すでに仕込みをしてあるとは、以前から機会をうかがっておったな。

 まあ、それはそれで都合がよい。


「分かった。それでは孫策に南陽郡の件を許し、油断させたところで始末する。それでよいな?」

「はい、承りました」


 すると今度は賈詡かくからも提案があった。


「曹操さま。念のため、離間の策も進めてはいかがでしょうか?」

「む、誰か候補がおるのか?」

「はい。孫策の従兄弟である孫賁・孫輔兄弟と、弟の孫権に揺さぶりをかけてみようかと」

「ふむ…………よかろう。ムダになるかもしれんが、早めに手を打っておくに越したことはないからな。進捗はしっかり報告せよ」

「承知いたしました」

「うむ、楽しみにしておるぞ。ワハハハハ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安10年(205年)12月 冀州 魏国 鄴


「なんでじゃ~っ!」

「曹操さま、落ちついて、落ちついてください」

「これが落ちついて、おれるか~っ!」


 怒りのあまり、机を蹴飛ばすと、またもやお気に入りの茶器が砕け散る。

 それを見てますます怒りが募ったが、とりあえず暴れるのをやめ、息を整えた。

 そしてまずは郭嘉をにらみつけながら、問い詰める。


「郭嘉! 孫策は建業で、ピンピンしておるそうではないかっ!」

「はっ、まことに面目ございません。建業に潜ませた刺客による暗殺や毒殺は、ことごとく失敗した模様です」

「失敗したで済むかっ! どれほどの金を掛けたと思っておる!」

「それについては申し訳なく。些少さしょうではございますが、私の俸給をしばし返上させていただきます」

「そんなことを言っておるのではない! あれほどの金を受け取っておきながら、こうも簡単にしくじるのが許せんのだ。闇の者とは、その程度のものなのか?」


 今回の暗殺には、郭嘉の俸給の何十倍もの金を掛けておる。

 かなり高いとは思ったが、それだけ信用の置ける相手だと信じて払った。

 裏社会では泣く子も黙る、最強の暗殺者集団らしいからな。

 それがことごとく失敗し、建業から駆逐される勢いだとは、なんという為体ていたらく


「は、真偽は定かではありませんが、孫策の勘働かんばたらきが尋常でなく、刺客も毒も見破られたそうです」

「なんだと?……そんなことが、あり得るのか?」

「分かりません……」


 そう言う郭嘉は冷静を装いながらも、怒りをこらえているようだった。

 それを見て、少し冷静になった儂は咳払いをし、今度は賈詡に問う。


「ゴホン……それで、敵の仲間割れを誘う策も、失敗したのか?」

「はい。孫賁、孫輔、孫権のいずれもが将軍職を受けたものの、こちらになびく様子は一切ありません。それどころか、孫策がじかに話をして、絆を深めたとの報告がきております」

「なんだと? 普通は信じたくとも、信じきれるものではないぞ」

「は……その点については、孫策はよほどの大馬鹿か、大物のどちらかではないかと」

「くそっ、面白くないのう」


 まるでヤツが儂よりも大物だと言われてるようで、実に面白くない。

 しかも、それ以上に面白くないことが起こっていた。


鮮于輔せんうほが幽州から追い出されたというのは、本当か?」

「はい、残念ながら烏丸との戦いに敗れ、冀州へ落ち延びたとのことです」

「なぜだ? ヤツには十分な援軍を送ったはずであろう!」


 そう問い詰めると、荀彧が言いにくそうに報告する。


「……それが烏丸の兵が、妙に多かったらしいのです。おそらく袁尚や袁煕だけでなく、誰かが支援しているのではないかと」

「まさか!」

「はい、孫策から資金が流れている可能性が、高いと思われます」

「おのれ、孫策めっ!!」


 とうとう頭にきて、また机を蹴飛ばしてしまった。

 おかげでまたお気に入りの……

 いや、そんなものはどうでもいい。


「荀彧! 近隣の諸侯に号令を掛けろ。魏王の名において、烏丸を討伐してやる。協力しない者は、逆賊として討つともな」

「ははっ、ただちに」


 荀彧が泡を食ったように、部屋を出ていく。

 それを見ながら、儂は決意を固めていた。

 もう遠慮はしない。

 全力で烏丸を叩き潰し、そして孫策を打倒してやろうではないか。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安12年(207年)9月 冀州 魏国 鄴


「ワハハハハッ、気分がよいのう」

「はい、今回はお見事でした」

「うむ、これも懸命に働いてくれた、そなたらのおかげよ」

「とんでもない。魏王さまの威勢に、華北の民が服したためです」

「ハハハハッ、そうかそうか。民が儂の威勢に服したか」

「はい」

「まことに」


 とうとう儂は烏丸を打ち破り、袁尚と袁煕を討ち取った。

 それというのも、多くの勢力が魏王である儂の威勢にひれ伏し、恭順してきたからだ。

 おかげで想像以上の兵が集まり、烏丸を倒すことができた。

 こうなれば、やることはただひとつよ。


「荀彧、孫策を許都に呼びつけよ」

「は、どのような名分で、でしょうか?」

「なんでもよい。民をそそのかしてるとか、漢王朝への反逆の疑いがあるとか言って、出頭して弁明しろと命じるのだ」

「かしこまりました……おそらく出頭はしてこないと思われますが、その時は?」

「その時こそ、逆賊として討ち取ってやるわ。楽しみだな、グハハハハハハッ」


 見ておれよ、孫策。

 中華を統べるのは、この儂だ。

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