表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫策クン! 改  作者: 青雲あゆむ
第3章 覇王激突編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/66

54.華北、平定さる

建安10年(205年)12月初旬 揚州 丹陽郡 建業


 孫賁・孫輔兄弟の説得に成功してから、また重臣を集めた。


「以上が最近、曹操陣営から仕掛けられたと思われる事件です」


 諜報担当の魯粛から状況を説明してもらうと、出席者の多くが顔をしかめた。


「なんと、孫策さまの暗殺に飽き足らず、親族の離間まで企んでおったか」

「漢の丞相ともあろうものが、まったく……」

「油断も隙もあったものではないな」


 当然のように怒りの声が上がる中、俺は話を続ける。


「どれも証拠はないので、責任を問うこともできん。しかし曹操が俺たちのことを、相当うとましく思っているのは事実だろう」

「そりゃあ、向こうは華北で戦い続けてるのに、こっちが平和的に発展しつづけているとなれば、仕方ないだろうさ」

「まあな。でもそれだったら、あっちも適当なところで手打ちにして、内政に取り組んだらいいのさ」

「そんなこと、できっこないのを知ってるくせに」

「そんなのは知ったこっちゃない」


 周瑜がニヤニヤと笑えば、俺もニヤニヤして返す。

 実はこの時期の華北では、なかなか愉快な事態が発生していた。

 幽州に逃げこんだ袁煕・袁尚兄弟が、現地の烏丸うがん族の助けを借りて、巻き返したのだ。


 事の発端は、烏丸が幽州の将軍 鮮于輔せんうほを攻めたことにある。

 史実では曹操が鮮于輔を援護したため、烏丸は負けて幽州を逃げ出している。

 しかしこの世界の烏丸は、俺の支援で強化されていた。


 それなりに金があれば、彼らだって食料を買って、兵を増やせるからな。

 おかげで鮮于輔は幽州を追い出され、冀州へ後退した。

 これは史実にない動きであり、曹操の苦りきった顔が、目に浮かぶようだ。


 すると陸遜が、さらに焚きつけるように言う。


「せっかくですから、こちらからも反乱を誘発してみませんか?」

「いや、残念ながらまだ伝手がないんだ。まずは適当な勢力に渡りをつけて、通信手段を確保するのが先だな」

「そうですか……仕方ありませんね」

「それなら、曹操の暗殺はどうっすか?」


 今度は呂範がアホな提案をしてきたが、それは即座に却下だ。


「あほう。こっちまで暗殺に手を染めたら、同じ穴のムジナじゃねえか。こっちはあくまで、清廉潔白なふりをするんだ。まあ、曹操が暗殺を試みたっていう噂をばらまいて、評判を落としてやるがな」

「うへえ、さすがは兄貴。悪党っすね」

「そう褒めるなよ」


 そんなコントを繰り広げていると、程普が訊ねた。


「それでは孫策さま。今後も我々は力を蓄えるだけで、攻めこまないのですかな?」

「そのつもりだったが、状況によっては攻めるのもありかな」

「ほう。その状況とは?」

「まずは袁尚たちがどこまで粘るかだ。奴らが最低でも幽州を保って、その他の反乱分子と渡りがつけば、仕掛けるかもしれないな」

「フォッフォッフォ、それは楽しみですな」


 楽しそうな程普の言葉に、同調するヤツらは多い。

 相変わらず武官連中は、戦がしたくて仕方ないようだ。


 ただし、実際はそう上手くいかないと、俺は思ってる。

 豊かな華北に攻め入るなんて、よほど優位じゃなきゃできないからな。

 まあ、今後も状況を注視するとしよう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安11年(206年)6月 揚州 丹陽郡 建業


 ハロー、エブリバディ。

 孫策クンだよ。


 袁尚たちが幽州でがんばってると聞いて喜んでたら、曹操が巻き返しやがった。

 なんと10万近い兵力を投入して、烏丸を撃破したというのだ。

 これによって袁尚たちは、烏丸の本拠である柳城りゅうじょうへ後退した。

 さすがに息切れしたのか、曹操は冀州へ一旦戻ったが、状況は史実に近い形になっている。


「なんか曹操の軍、以前よりも強力になってないか?」

「どうやらそのようですな。おそらく魏王に就任したのが、良い方向に影響しているのでしょう」

「ん、どういうことだ?」


 魯粛の説明だけではピンとこない俺に、周瑜が説明してくれる。


「曹操が魏王になってから、郡太守や県令に対する影響力が大きくなってるんだよ。諸侯王は、漢王朝で最高位の官職だからね」

「ん~、でも以前の司空だって、ほぼ最高位だったよな。そんなに違うのか?」

「郡太守や県令は、皇帝陛下の下、独立した権限を持っているからね。たとえ3公や丞相といえど、そう思うようには動かせないのさ」

「ふ~ん、そんなもんかねえ」


 曹操は以前まで司空の地位にあったが、それだけで全ての役人が従うほど甘くない。

 漢王朝では基本的に郡県制が採用されていて、それらのトップの裁量権が大きいからだ。

 しかしさすがに諸侯王ともなると別格な存在で、明確な上下関係が発生する。


 おかげで兵の動員能力が高まって、大軍を起こしやすくなってるようだ。

 ただし魏王就任を強行した当初は、やはり反発が大きかったらしい。

 しかし俺や曹操が王に封ぜられて1年半も経つので、そろそろその権威が有効に機能してきたというのだ。


「なるほど。魏王の権威で、動員能力が高まっているのか」

「そういうこと。ある程度、予想はしてたけど、思った以上にそれが進んでいるね」

「でもそれなら、俺の方も高まっているよな?」

「今さら何を言ってるんだい。そんなの当然じゃないか。だから南陽郡や九江郡だけでなく、広陵郡までこちらになびいたんだよ」

「ああ、それもそうか」


 たしかに1年ほど前、荊州の南陽郡が俺の傘下への編入を希望してきた。

 それを受け入れたら、九江郡と広陵郡も傘下入りを希望する始末だ。

 広陵郡なんて隣の徐州なのに、俺の下に付きたいって言うんだぜ。


「今の俺だったら、どれくらい動員できる?」

「そうですな……華南の経済に配慮したとしても、20万人は堅いでしょう」

「おお、とうとう20万を超えたか」


 魯粛の回答に、感慨深いものを感じる。

 しかもこれは山越族などの異民族は含まない数字だ。

 彼らの多くは戸籍に載ってないからな。

 もっとも、華北にも遊牧民がたくさんいるから、これは似たような状況かもしれない。


「ここまでくれば、曹操と互角に戦うのも、現実味が出てくるね。なにしろ中原は人口が多い分、反乱分子も多いから」

「ああ、事前に仕込んでおけば、けっこう足を引っ張れるだろう」


 中原の動員能力は30万人ともいわれるが、その全てを南に向けられるはずもない。

 周瑜が言うように、曹操との戦いに現実味が出てきた。


「あとは今までどおり、謀略で曹操の足を引っぱりながら、軍備を整えればいけるか」

「ああ、ようやくその絵が見えてきたね」

「フフフ、これからも忙しいですな」


 こんな謀略を平気で企むようになるなんて、我ながら染まったものだと思う。

 だけど信頼できる有能な仲間と仕事するのって、楽しいんだよな。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安12年(207年)8月 揚州 丹陽郡 建業


 あいにくとその後の展開も、望ましいものではなかった。

 なんと曹操は烏丸を打ち負かした後に、敵の本拠地まで押し寄せて、袁尚と袁煕を討ち取ってしまったのだ。

 おかげで烏丸も全て降伏し、遼東の公孫康こうそんこうなんかも恭順の意を示したらしい。


 これによって曹操は、華北をほぼ制圧した形になる。

 たしか史実では207年の暮れまで掛かっていたので、それよりも早いぐらいだ。

 くそ、こっちもいろいろ邪魔してやったというのに。


 しかしこちら側の準備は、ほぼ万端だった。

 華南の経済はうなぎのぼりだし、領民は戦争や飢饉に苦しまされず、平和を謳歌している。

 そして襄陽、漢中、建業を中心とした防衛体制も、バッチリだ。

 攻めてこれるもんなら、来てみやがれ。


 な~んて言うのは、ウソだ。

 戦争なんかしなくてすむなら、それに越したことはないのに。

 だけど無情にも、戦乱の足音は、すぐそこまで迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ