表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫策クン! 改  作者: 青雲あゆむ
第2章 呉王就任編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/55

23.襄陽への進軍 (地図あり)

あけましておめでとうございます。

第2章 呉王就任編の開幕です。

建安5年(200年)5月 荊州 南郡 襄陽じょうよう


 なんとか暗殺イベントを回避して、豫章郡を制圧していた孫賁そんほんたちが戻ってくると、我が軍は南郡なんぐんへの侵攻を開始した。

 夏口から漢水(長江の支流)を遡上し、敵の本拠地である襄陽を目指す。

 その兵力は約2万人。


 さらに同盟を結んでいる長沙ちょうさ零陵れいりょう桂陽けいようからも兵を出してもらい、武陵ぶりょうを攻撃した。

 これにより劉表は荊州の南側で兵を集められず、南郡でしか徴兵できなくなっている。

 荊州の北側には、まだ南陽なんよう郡があるものの、ここはすでに支配下にないからだ。


 そこを押さえていた張繍ちょうしゅうという群雄は、とっくに曹操に降伏している。

 ちなみに劉表は袁紹や張繍と組んで、曹操と敵対していたのだから、なかば賊軍と言っていい。

 そんな劉表に援軍を送ってくれるとしたら、もう袁紹えんしょうしかいないが、ヤツは曹操との決戦間近で、そんな余裕はこれっぽっちもない。


 それと、"孫策は刺客に襲われて重症だ” という噂を流したので、多少は油断していたのだろう。

 結局、劉表は1戦もすることなく籠城戦を選び、1万ほどの兵力で襄陽に立てこもった。


 この襄陽は南郡の北端に当たり、漢水を挟んで南に襄陽城、北に樊城はんじょうが向かい合う双子城を構成している。

 現代では、その両方を合わせて襄陽市と呼ばれている場所だ。

 史実では208年から魏に支配されており、それを取りにいった関羽が、呉と挟み撃ちにあって討ち死にした”樊城の戦い”が有名である。


 さらに時代を下れば、モンゴル帝国が南宋なんそうを滅ぼす起点となった、”襄陽・樊城の戦い”(1267~1273年)の舞台としても名高い。

 この時、両城は孤立無援となってからも、10万の敵軍を2年に渡って食い止めたのだから、その重要性がうかがえる。

 さらに言えば、ここは中原の中心部に近く、北と南を結ぶ輸送路の要でもあった。


 つまり長江より南に独自勢力を築きたい俺にとって、非常に重要な拠点となるのだ。

 そんな襄陽をのぞむ場所に、俺たちは陣営を築く。


「さて、予想どおり、城にこもったけど、どうやって落とすつもりだい? 孫策」

「まだ分かんねえよ。とりあえず圧力を加えつつ、城兵に揺さぶりを掛けるってとこかな」

「揺さぶりって、どうやって?」

「”どんなに籠城をしても、味方は来ない”って内容を、矢文やぶみや噂で広めるんだ」

「ふむ、地味な作戦だね。夏口の時みたいな隠し玉はないのかい?」

「そんなもんがポンポン出てくれば、苦労しねえよ」

「フフ、違いない」


 俺の本音に、周瑜も苦笑する。

 実のところ、彼は最初から分かっていて、俺と会話してるはずだ。

 そうすることで、周囲の幹部たちに、俺の意図を理解させる役目を担ってくれているのだ。

 しかしなおも疑問を抱えた呂範が、俺に問う。


「この間みたいに、密偵をひそませてないんすか?」

「もちろん潜ませてるさ。だけど夏口城でやったことは敵にばれてるから、同じ手は使えないんだ」

「でもそれなりに効果はあるっすよね?」

「そりゃあ、あるかもしれないが、犠牲が大きすぎる。この間だって、9割は死んだんだぞ」

「マジすか? それはキツイっすね」


 夏口城で破壊工作をした者は20人もいたのに、たった2人しか救出できなかった。

 生き残った者もボコボコにやられ、回復に時間が掛かっている。

 敵のど真ん中で破壊工作をするというのは、それほどリスクが高い難事なのだ。


 それでも夏口城攻略は、どうしても失敗できない作戦だったので、最大の手札を切った。

 その結果、密偵の人材が枯渇し、襄陽で同じ手は使えない、というのが実状である。

 もっとも、あまり危険を伴わない任務向けには、大量の人員を送り、城内に潜ませてある。

 彼らには敵の情報収集であったり、兵士や住民の不安をあおる煽動せんどうをやってもらう予定だ。


「ま、敵が出てこない限り、今回はからめ手が中心だ。ただし気は抜かないようにな」

「「「おうっ!」」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安5年(200年)7月 荊州 南郡 襄陽


 あれからひと月もしないうちに、武陵郡が落ちた。

 元々、長沙で反乱を起こした張羨ちょうせんに近しい人物が、太守をやっていたらしい。

 そこを長沙や零陵の軍勢に囲まれたうえ、劉表からの援軍は望めない。

 そんな状況を知らされると、太守は降伏してきたそうだ。


 こうして俺は荊州の南側4郡を掌握し、襄陽を包囲していた。

 さらに武陵にある軍勢を太史慈たいしじに指揮させ、南郡の制圧にも取りかかっている。

 じきに襄陽と南陽以外は、全て俺の軍門に降ることになるだろう。


 そんな状況を、敵に教えてやらないはずがない。

 矢文を打ち込んだり、密偵に噂を広めさせることで、敵の士気低下を目論んだ。


「フフフ、壁の向こうはずいぶん、行き詰まってきたようだね」

「ああ、あっちの状況は、刻々と悪化してるからな」

「そうだね。そろそろ敵の重臣にも、渡りがついてるころかな?」

「ご明答。蒯良かいりょう蒯越かいえつ韓嵩かんすう劉先りゅうせんなんかと、連絡が取れつつある。どいつも降伏に傾いてるらしいぞ。強く抵抗しているのは、蔡瑁さいぼうぐらいなものかな」

「それは重畳。この分なら、そう遠くないうちに落ちそうだね」

「このままいけばな」


 すでに劉表の重臣にも、渡りをつけつつあった。

 幸いにも感触は悪くなく、徐々に降伏の声が高まっているという。

 俺たちはその後も休まず、外からは威嚇を加え、内からは重臣の切り崩しを続けた。




 そうこうしているうちに、とうとう敵に動きが出た。


「降伏の使者か?」

「いえ、降伏とは言っていませんが、とにかく交渉がしたいそうです」

「交渉ねえ……まあ、いいだろう。ここに通せ」

「はっ」


 襄陽から白旗を掲げた一団が出てきたので、意図を確認させると、交渉がしたいとのことだった。

 こちらとしても願ってもないことなので、まずは話を聞くことにする。

 交渉団が陣幕に通されると、1人の男が進み出た。


「はじめまして、孫将軍。私は韓嵩かんすう 徳高とくこうと申します」

「おお、貴殿が韓嵩どのか。評判は聞いている」

「とんでもない。私などとてもとても」


 これはけっこうな大物が出てきた。

 彼は史実で劉表に諫言かんげんしたり、曹操への偵察に出されても、無事に帰ってきたような硬骨漢である。

 その頭脳の冴えもさることながら、ビシっと筋の通った態度は、信頼するに十分な理由となる。


「ふむ、それで今日は、どのようなお話かな?」

「はい、我が主の劉表さまは、将軍との交渉を望んでおられます」

「それはこちらも望むところだが、具体的な内容は?」

「はい。仮に、もし仮に我が主が降伏するとすれば、その後の対処はどのようになるでしょうか?」

「そうだな……無血で襄陽、ならびに樊城を明け渡してもらえるのであれば、その身の安全は保証しよう。どこかへ落ち延びたいというのであれば、その協力もする」

「なるほど……寛大な条件に、感謝します。しかし例えば、荊州もしくは揚州で、1郡を任せてもらうわけには参りませんでしょうか?」


 韓嵩が涼しい顔で、図々しい要求を出してきた。

 郡を任せるということは、つまり太守に任命しろってことである。

 しかし劉表ほどの名門が、俺の下でおとなしくしているはずがない。

 あまりの要求に呆れながら、答えを返した。


「ゴホン……それは劉表どのが、私の傘下に収まるということだな。しかし劉表どのは、皇室に連なる高貴なお血筋だ。田舎者の私の下で、命令に従いつづけることなど、まず不可能であろう。それぐらいであれば、私から上奏して、列侯れっこうに封じてもらうのが得策ではないかな?」


 列侯の場合、爵位と土地を与えられても統治権はない。

 税収から収入は得られるが、統治自体は役人任せなので、太守とは大違いだ。

 その提案について、韓嵩はしばし考えると、渋々とうなずいた。


「やはりそれしかありませんか……その方向で一度、我が主と相談してみたいと存じます」

「ああ、よろしく頼む」


 こうして前交渉は終わり、韓嵩たちは襄陽へ帰っていった。

 この分なら、近日中に降伏の知らせが聞けるかもしれない。

 その時はそう思っていた。

今回の舞台は、荊州南郡の北端にある襄陽。

ここは荊州の州都であり、今後の戦略にも関わってくる要地です。

挿絵(By みてみん)


地図データの提供元は”もっと知りたい! 三国志”さま。

 https://three-kingdoms.net/

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ