表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫策クン! 改  作者: 青雲あゆむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/52

16.周瑜たちの合流

建安2年(197年)11月 揚州 会稽郡 山陰


 会稽郡で反乱分子を、バシバシ鎮圧していたら、とある訪問者があった。


厳白虎げんはくこの使者だと?」

「はい。ぜひ孫策さまに会いたいって、言ってるっす」

「ふむ……わざわざ敵陣に乗りこんできたんだ。話くらいは聞いてやるか」

「マジっすか? まあ、孫策さまがいいんなら、いいっすけど。それじゃあ、ここに通すっすよ」

「ああ、頼む」


 しばらく待っていると、呂範の案内で、40がらみの男が現れた。

 それなりに小ぎれいな鎧を身に着けていることから、身分は高そうだ。

 男は俺の前に立つと、慇懃無礼いんぎんぶれいなあいさつをしてくる。


「面会を許してもらい、感謝する。俺は厳白虎の弟で、厳輿げんよと申す者。今回は貴殿との和平について、交渉に来た」

「ほう、厳白虎の弟か。しかし俺は和平など求めていない。降伏の話なら聞くがな」

「まあ、そう言わず、話を聞いてくれ。我々が互いに争うのは、天下の損失。じっくりと話し合えば、より良いやり方も思いつくであろう」


 そいつはまるで自分が賢者か何かのような顔で、話しかけてくる。

 しかしこいつが賢者であるわけがない。

 なにしろ、根本的に勘違いをしているのだから。


 俺はおもむろに椅子から立ち上がると、厳輿の前に進み出た。

 そして奴の目を見ながら、持っていた剣を抜き放ち、厳輿のすぐ横に振り下ろす。

 剣が床石に当たり、騒々しい音を立てると、厳輿がビクリと体を震わせた。


「フッ、すまんすまん。あんたはひどくすばしこいと、聞いてたものでな。つい試してしまった」

「……そ、そういうことか。しかしこの状況で、悪ふざけはよしてもらいたい。俺のすばやさが知れ渡っているってのは、悪い気はしないがな」


 そう言って厳輿は、汗をぬぐいながら、1歩下がる。

 次の瞬間、俺は右手を動かして、手戟しゅげきを投げつけた。

 それは狙いあやまたず、奴の頭に命中し、その命を奪った。


「ぐはっ!」

「何してんすかっ?! 孫策さま!」

「あわてるな。勘違い野郎が忍びこんできたから、成敗しただけだ。片づけてくれ」

「ちょ、マジすか? ええっ!」


 うろたえる呂範に、死体の始末を指示すると、俺は机に戻って仕事を続けた。

 まったく動じていないように仕事をする俺を見て、兵士たちが感嘆の目を向けてくる。

 しかし俺の中では、かなり一杯一杯だった。


 実はこのイベント、後世にも伝わっているものだ。

 正確には参考文献扱いされてる話だが、こうなると実際にあったのだろう。

 そこで俺は、いかにもそれらしく始末してみたが、やはり現代人にはキツイ行動だった。


 それでも俺のやったことは、さほど間違っていないのも事実だ。

 そもそも厳白虎たちは、大きな勘違いをしていた。

 つい数ヶ月前ならいざ知らず、今の俺はれっきとした漢朝の将軍だ。


 なのに厳白虎は、俺たちをただの軍閥と考え、和平を申し入れてきた。

 もうアホかと、バカかと。

 軍事力も権威も上の相手が、素直に応じるわけがないだろうに。


 もし中途半端に応じてしまえば、俺が周囲になめられてしまう。

 下手すると、孫策には何か弱みがあるんだとか、反乱分子を裏で操ってるんだ、みたいなことを言われかねない。

 つまり後々のことも考えると、厳白虎には降伏を迫るしかないのだ。


 そのうえで素直に応じれば、命ぐらいは助けてやれるかもしれない。

 そんな話を聞かせたうえで、呂範には改めて厳白虎の討伐を指示した。

 彼は一応、納得して、”それもそっすね。さっすが孫策さま”とかいって出ていった。

 本当に分かってるのかな? 分かってるよね?




 その後しばらくして、厳白虎一味は討伐され、親玉は山へ逃げたとの報告があった。

 史実では許劭きょしょうの所へ逃げるはずだが、俺はもう気にしていない。

 先祖伝来の地盤を失ってからも、台頭できる相手とは思えないからだ。


 それよりも討伐戦において、許貢きょこうが死んだことの方が怖い。

 これを恨みに思った食客が、俺をつけ狙う可能性は高いだろう。

 そこで俺は10人ほどの親衛隊を組織し、周囲を守らせるようにした。


 これについては説明の必要すらなく、周りはすんなりと受け入れてくれた。

 ていうか、張紘と張昭なんか、大喜びしてたな。

 ”将軍としての自覚が芽生えたようで、喜ばしい” とか言ってな。


 そんな形で、会稽の統治は着々と進行していった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安3年(198年)1月 揚州 丹陽郡 秣稜ばつりょう


 ハッピーニューイヤー、エブリバディ。

 孫策クンだよ。


 会稽での仕事が順調だったので、秣稜へ戻ってきてみれば、懐かしい顔に出迎えられた。


「やあ、孫策。仕事は順調なようだね」

「うむ、活躍は聞いておるぞ」

「周瑜! 叔父上!」


 袁術の下にいた周瑜と呉景が、帰ってきていたのだ。

 彼らは昨年末には任地を抜け出し、この秣稜で待っていたそうだ。

 そしてそこにはもう1人、顔を真っ赤にして俺を非難する男もいた。


「孫策! この野郎、あくどい真似しやがって。一発、殴らせろ!」

「ハハハ、元気そうだな、孫賁そんほん

「ふざけんな、てめえ。俺がどんな思いで抜け出してきたのか、分かってんのか?」

「もちろんさ。だけどあんたは、孫家を選んでくれたんだろ」

「くそ、ちくしょうが……そうだよ、俺は嫁や子供よりも、こっちを選んだんだよ」


 そう言って孫賁が、目に涙を浮かべている。

 なにしろ彼は袁術のお気に入りなため、九江郡の太守を任されていた。

 それはつまりお膝元で仕事をするということで、その分、監視の目も厳しくなる。


 さらに彼の妻と子供は人質に取られていて、一緒に逃げることは不可能だった。

 つまり妻子を捨ててでも舞い戻った自分と、そうなるよう仕向けた俺に、彼はいきどおっているのだ。

 ここで俺は、サプライズをぶちまける。


「実は魯粛に頼んで、孫賁の妻子を逃がすよう、手配してあるんだ。魯粛、そっちは大丈夫だよな?」

「はい。密偵が孫賁どのとは別経路で、ご家族をお連れする予定です。しばらくすれば着くでしょう」


 魯粛の話を聞いて、孫賁がポカンと口を開ける。

 彼はしばしアウアウ言っていたが、やがて大声で怒りだした。


「てめえ、嫁たちを逃がすんだったら、最初から言っとけよっ!」

「何いってんだ。そんなことしたら、袁術に勘づかれたかもしれないだろ? みんなを逃がすには、こうするしかなかったんだよ」

「ざっけんなっ! やっぱり一発なぐる!」

「おっと」

「孫賁どの!」

「離せえ~! 一発でいいから殴らせろお~!」


 本当に孫賁が殴りかかってきたので、親衛隊が取り押さえた。

 なおも暴れようとする孫賁が連れ出され、ようやくその場が静かになる。


「フウッ、あいつ、マジギレしやがって」

「フフフ、それは君も悪いんじゃないかい」

「そうは言ったってなぁ、下手に接触してバレたら、元も子もないだろ? 嫁さん逃がすのだって、失敗するかもしれなかったんだし」

「フフ、まあ、そうかもね」


 史実で孫賁は1人で逃げたので、妻子は処刑されてるはずだ。

 今回は魯粛という切れ者がいて、上手いこと妻子の逃亡を手配できたにすぎない。

 本来なら孫賁は、泣いて感謝するべきだと思うんだけどな。


「それよりも孫策。彼を紹介してくれないかい?」

「ああ、そうだな。彼は魯粛。こっちは親友の周瑜と、叔父の呉景どのだ」


 周瑜にせがまれて魯粛を紹介すれば、周瑜と呉景があいさつをする。


「はじめまして、周瑜です。魯粛どののお噂はかねがね」

「呉景だ。甥が世話になっているようだな」

「これはごていねいに。魯粛です。お2人のご高名は、私もうかがっております」


 なごやかにそう言う雰囲気は、悪くなさそうだった。

 本来なら周瑜が魯粛をスカウトしてくるはずだったのを、俺が先取りした形になっている。

 しかし相通ずるものがあるのか、早くも打ち解けているようだ。


 もしも俺が史実より長生きできれば、周瑜と魯粛が覇業の両輪になるだろう。

 このまま友好関係を維持して、俺を支えて欲しいものだ。

 これからますます、忙しくなるからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ