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記憶喪失になったヒロインは強制ハードモードです  作者: 春目ヨウスケ


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2. 私の存在、放っておかないで!



 私、やらかしちゃったかも……。

 ただ自分の名前を知りたかっただけなのに……。

 ただでさえ修羅場だったのに……。


「お前達のせいだ!」


「違うに決まってるでしょう」


「可哀想に! こいつらのせいで」


「記憶喪失……? また妙な嘘をついて……」


「あぁ、ミアリー! なんて……!」


「被害者ぶるのも大概にしてよ!」


「クソッ! お前ら全員、覚えておけよ!」


「はぁ!? 私達のせいじゃないんですけどぉ!」


 争いが激化してる! 今にも手が出そうな険悪な空気になってる!

 あわわ……!

 どうしよう……!

 状況がどんどん悪くなっていく……!

 誰が誰なのか、この人達が私の何なのかもわからないから、止め方も分からない!

 今のところ分かってる情報も少ないし!

 ……せいぜい……。



 ・私の名前がミアリーだということ。

 ・階段から落ちた(落とされた?)こと。

 ・私は美少年達には(多分)好意的に思われていること、美少女達には確実に嫌われてること。

 ・男の子達の話を聞くに、女の子達から私は日常的に虐められている(?)らしい。

 ・でも、女の子達曰く、それは私の嘘らしい……。



 正直、どっちの言い分が正しいのか分からないし、私が誰なのか、彼らが一体何者なのか、結局分からないまま。

 でも、一つ言えることは……。

 ……ここにいる人達全員、私を見ているようで見ていない、ということ。

 今もこうして言い争っているけど、ベッドの上の私より目の前の敵の方が大事みたい。


「あの……?」


「君達は本当っ最低!」


「えっと……皆様?」


「最低はそっちでしょ!?」


「………………」


「人では無いのか君達は?」


  全然話聞いてくれない……。皆様、私の話をしてるんだよね? そうだよね?

 だけど、完全に蚊帳の外なんだけど……?

 勇気を出して声をかけるけれど、誰も私を見ない。

 なんで……!?

 誰か、せめて私が誰なのかさえ教えてくれないかしら……?

 他に話せそうな冷静な人はいないかと辺りを見回すけれど、部屋には……彼ら以外誰もいなかった。

 仕方がない。

 私は自力で考えてみることにする。

 今いる部屋は多分保健室だ。ベッドや机といったものだけじゃなく薬瓶や包帯なんかも置かれている。壁には今月の保健ニュースや掃除当番表も貼られているし、確実に保健室。

 じゃあ、ここは学校かも?

 そう気づいて、自分の体を見る。

 すると、そこには真っ白なシャツを着てチェック柄のスカートをはいた華奢な女の子の体があった。

 枕元には淡いベージュのブレザーとリボンタイが置かれている。

 ……これどう見ても学生服だよね……?

 よく見たらここにいる皆様も似たような制服を着ているし。

 ここが学校なのは正解みたい。

 じゃあ、私はここの生徒なのかしら……?

 それを確認したくてブレザーやスカートのポケットを漁ったり制服をよく観察する。

 けれど、ポケットには何も入っていなかくて、何か名前の入ってるものは無いか制服を捲るけど何も書いてなかった。


「うーん、分からないな……」


 ベッドの上にあるものは……私含めて調べたけど、ここの学校の女子生徒っぽい以上の情報はなかった。

 だから、つい、そんなことを呟いてしまう。

 殆ど成果なんてなかったから。

 すると。


「大丈夫か?」


 私の方に視線を動かした人が1人。

 あの金髪の彼だ!

 ようやく話が出来そうな人が出来た!

 ぱぁっと自分の表情が明るくなったのが分かる。私は早速彼に話しかけた。


「あの、今、色々聞いてもよろしいですか? 私、全然何も覚えてないんです。忘れているみたいで……!

だから、教えていただいてもよろしいですか?」


「…………」


 ……あれ? 私がそう聞いた瞬間、金髪の彼は何故か、黙ってしまった。

 聞き方……間違えたかな? 同年代みたいだから、もしかしてタメ口で聞くのが正解?

 不安になってしまって、自分の表情が曇るのが分かる。

 すると、慌てて彼は口を開いた。


「ご、ごめん。驚いてしまって……。

 君は、何があっても無事でいる印象があったから……」


「……?」


「あぁ、話が逸れたね……どこまで覚えてる?」


「……その、情けない話なのですが何も覚えていないのです。

 一先ず、私の名前と、私の出自と、貴方方がどなたで、私とどういう関係なのか知りたいのですけど……」


「…………本当に何も、覚えていないのか?」


 そう念を押されても、覚えてないものは覚えていない。

 困っていると、金髪の彼は見かねて教えてくれた。優しい人だ。


「君の名前はミアリーだ。ミアリー・シルヴェリオ」


「ミアリー! やっぱりそれが私の名前なのですね。シルヴェリオが私の苗字ですね?」


「あぁ。以前の君が自分はシルヴェリオ男爵家の三人兄弟の末娘だと周りに話していたから、そうなのだろう」


 ……ん? その言い方に、私はちょっと違和感を覚えた。何か変な言い方……。

 でも、聞くことは出来なかった。だって……。


「それで、まずここは、ガレストロニア王国立聖マイアヴェア学園。君も通っている学校だ。ここはその保健室だな」


「あ、やっぱり学校なんですね!」


「……そして、俺の名前は、ロベール・ガレストロニアだ」


「えっ、同じ名前……? あっ……」


 思わず目が点になる私に、彼は苦笑いを浮かべた。

 ……その笑顔に、鈍い私でも察した。

 つまり、目の前にいる彼は……王子様だって……。

 額から滝のように汗が出る。気のせいか、汗の量に比例して自分の顔から血の気が引いている気がした。


「あわわっ……も、申し訳ございません。軽率に声をかけてしまって……失礼を致しました!」


「………………」


「で、殿下?」


 一向に返答が無くて、不安になって彼を……ロベール殿下を見る。

 恐る恐る見たロベール殿下は何故か面食らった顔をしていた。目を見開いて絶句しているというか……有り得ないものを見たみたいな……だけど、直ぐに何事もなかったかのような顔つきになった。


「っ……。すまない、その、なんだ……君の敬語が珍しくて」


 敬語? え?いや、待って。敬語が珍しいってなに?

 私、そんなに失礼な人だったの!?

 でも、さっきの面食らった顔、それだけじゃない気が……他の理由でもものすごく驚いていたような……今の私と前の私はかなり違うのかも……。


「殿下、あの……聞きたいのですが、私ってどんな人間だったんですか?」


「どんな人間って……。それは……」


 彼の目がくるっと動いて、背後に向けられる。

 そこには未だに言い争っている美男美女がいる。

 そんな彼らを見て、彼は、本当になんでもないように、普通に、平然と、知人に友人を紹介するように話した。


「ここにいる令息達は、俺を含め、皆、君の恋人だ」


「…………は?」


 言い争ってる彼らを、目の前の彼を見る。

 この美少年達が私の恋人? 全員? は?

 私の肩を持つはずだ。だって恋人だから。でも、王子様を始め5人も? 記憶が無くなる前の私って逆ハーレムを作るのが趣味だったの?

 だけど、そんな私に追い打ちをかけるように、彼はまた告げた。最高に頭が痛くなる事実を、淡々と……。


「そして、今、言い争ってる御令嬢方は……そうだな……全員ではないが、君の恋人達の元婚約者だった者達だ」


「……え?」


「ちなみに、彼らの婚約は、全て君が原因で破談になった……そう聞いている。

 まぁ、婚約中に未婚の異性と逢瀬を重ね接吻までしたとなれば、破談にもなる。君から提案したのか、彼らが君に頼み込んだのか、どちらだったのかは聞いていないが……」


その殿下の話に、私は頭が真っ白になった。




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