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記憶喪失になったヒロインは強制ハードモードです  作者: 春目ヨウスケ


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11.理不尽には理不尽を





 彼女の体から手を離すと、ぐっしょりと濡れた彼女が腰を抜かして床に座り込む。

 その子に他の3人が私から庇うように駆け寄った。


「マチルダ! 可哀想に!」


「こんなに濡れて……!」


 4人は集まると一斉に私を睨みつける……でも、それだけだ。反論もない。

 私がいないところでは4人であんな大層なことしていたのに、私の目の前では反論も出来ずに睨みつけるだけしか出来ないみたい。


「やり返さないの? 貴女達の嫌いな私が目の前にいるのに?

 見えないところでやり返すしか出来ないなら、自分達は小心者で卑怯な小物ですって自己紹介しているようなものだけど……?

 貴女達のプライドなんてその程度なのね」


「…………っ」


 私にそう煽られても彼女達は何も動かない。

 被害者面して私を睨みつけているだけ。

 今は敵わないって思ったのかもしれない。小物と言われても後でやり返す方がいいと判断したのかもしれない。

 でも……私は優しくないから、逃してあげない。

 それにちゃんとさっきから黙秘しているクラスメイトの皆にも教えないとね。

 今後、今の私に関わったらどうなるかって。

 私は彼女達に睨みつけられながら、一旦自分の席に戻る。

 4人はやっと終わったと思ったのか、ほっと安堵した様子で立ち上がる。

 うふふ、残念。終わってませーん。


 私はにっこり笑顔を浮かべて、落書きだらけの私の机を持ち上げた。

 これを今から運ぶ。向かう先はもちろん彼女達のところだ。


「え、は?」


「な、何してんの……?」


 呆然となる彼女達の目の前に、私の机を置くと、マチルダだったっけ? その子の机を持ち上げて、私の机と入れ替えた。


「え?え……!? な、何するのよ!!」


「私の机汚いからあげる」


「は!? ふざけないで」


 また彼女が私に向かってくる。けれど一歩、足を退かしただけで運動不足の彼女は直ぐに転んだ。


「わあ! パンツ、ねこちゃんなんだ。かわい~」


「な、な、なっ!」


 大声でスカートの中身を言えば、彼女は真っ赤になって動かなくなってしまった。

 だから、私は無視して彼女の机を自分の席に置き、濡れた鞄を持って他の子達の机に向かう。

 そして、その子達の机の上に、私は鞄の中身をぶちまけた。

 水をかけられた鞄はやっぱり中身も悲惨なことになっていて使えそうにない。

 だから、私は彼女達の机のサイドにかけてあった鞄を取って……中身を貰うことにした。


「へぇ、意外と教科書とか綺麗ね。というか、使ってないみたい。ページとか開いた跡もないし、名前も書いてないし……ノートとかまっさらじゃない。

 人を虐めることばかり考えているから、勉強する余裕もなかったのかな?

 それとも単に勉強の仕方も知らないのかしら?」


 そう笑いながら教科書もノートも筆記用具も、ついでに入っていたハンカチも全部もらっていく私を、彼女達はギョッとした目で見つめていた。でも、それだけ。彼女達はマチルダほどの度胸はないらしく、やり返して来ない。こうしてみると主犯格はマチルダで彼女達はただの取り巻きだったのかもしれない。まぁ、だからといって手を抜いたりしないけど。


「机と教科書はこれで確保。じゃあ後は制服ね」


「…………」


「ねぇ、制服交換しようよ?」


「…………え?」


「貴女達が来ている制服、サイズは少し貴女達の方が大きそうだけど、私でも着れそう。だから、ね?」


 にっこり笑って、一歩ずつ彼女達に近づく。

 すると、彼女達の顔が一瞬で青ざめた。


「な、何なの! 何なのよ!貴女!」


「い、いつもメソメソして男に泣きついていた癖に……! いきなり!」


「私達の方が身分は上よ!不敬よ! 不敬!」


 彼女達は口々にそう言うけど、今更感が拭えない。ただの虚勢だってすぐ分かる。


「なら、そのご自慢の身分で私を潰してみたらどう?

 どうせ出来っこないでしょ?

 身分で私を脅かせるなら、もうそうしているはずなんだから」


「……っ」


「貴族令嬢なのに、あんな姑息なことしてる時点で、分かるわ。

 だから、自分の手で私をいじめてたんでしょう?

 貴女達が大したことないくらいもう分かるわ。身分を傘に……なんて通用しない。ふふっ、残念でした」


「…………っ、う……なんなの? なんなのよ! もう!」


 彼女達は顔面蒼白になってお互いを抱きしめ合っている。

 昨日までめそめそしていた女の子が、いきなりこんなことしてくるのも予想外だっただろうけど……彼女達は多分今までいじめたことはあっても、いじめ返されたことはない。

 だから、私が余計に不気味で仕方がなくて戸惑うんだと思う。

 でも、言うじゃない?

 やっていいのは、やり返される覚悟のある人間だけだって。


「はい、皆んなで仲良く女子トイレ行きましょう。

 仲良く交換しましょうね?

 ……あ、そうだった」


 私は彼女達の方から教室の方に振り返る。

 そこにはやっぱり私を無視するクラスメイトと先生が……いや、聞き耳だけを立てて我関せずを貫いている卑怯な彼らがいる。

 だから私は彼ら全員に……。


「もし私に何か不快なことをしたら、今後は10倍にしてやり返すから、先生とクラスメイトの皆、これからよろしくね☆」


 と笑顔でちゃんと言っておく。

 やっぱり返事は無い。けれど、心做しか全員複雑な表情を浮かべているように見えた……。





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