2話「学園とクラス」
授与式で指輪ではなく首輪を与えられた主人公 カナタ。
初めての周りの人々も出来事に戸惑いを隠せない。
「僕だけ首輪ってどうなっちゃうんだーー!?」
-アストリア学院-
アストロ王国で最も名誉あるこの学院は、王国中のエリートたちが集う場所だ。カナタも、授与式を終えて入学許可を得た一人として、学院の門をくぐった。しかし、彼の心にはまだ不安が残っていた。
首輪を授けられたという奇妙な状況が、何か大きな問題を引き起こすのではないかと。
「カナタ、大丈夫だよ。私たちも無事に入学できたんだし」
隣を歩くエマが励ますように笑いかける。彼女は授与式で普通に指輪を授けられいた。
「うん、そうだね……でも、やっぱり少し怖いよ。俺だけ首輪だし」
カナタは不安を隠せないまま、学院の広場に集まる他の生徒たちを見渡した。彼らはみな、それぞれの授与式で授かった指輪を誇らしげに身につけていた。
アストリア学院の入学式は、厳かな雰囲気で始まった。校長が壇上に立ち、新入生たちに向けて演説を行った。
「我がアストリア学院へ入学を許された諸君、ようこそ。そしておめでとう。ここでは神々から授けられた力を磨き、将来の栄光を勝ち取るための厳しい訓練が待っている。期待しておるぞ」
入学式の後、新入生たちはそれぞれのクラスに分けられることになっていた。クラスは、エルナの総量、授与式で授かった指輪が武器に変わるかどうか、そして個人の技量によって決められる。最上位のクラス「ルナクラス」には、王国で最も優秀な才能が集められる。カナタは自分がどのクラスに入るのか、全く想像がつかなかった。
「次、エマ・ヴィエラ」
エマが名前を呼ばれ、カナタに微笑みを浮かべながら壇上へ向かった。
「リベレート!」
彼女の指輪が光り輝き、弓が具現化された。彼女のエルナの力は十分に強く、クラス分けは「クレセントムーン」と告げられた。
「やったね、エマ!おめでとう」
「次、カナタ・ノクティス」
ついにカナタの名前が呼ばれた。彼は息を整え、壇上に向かった。
「リベ…レート」
首輪は強い光を放った!だが何も起こらなかった…首輪はただの首輪のままだった。
「リベレート!リベレート、リベレート!!」
場内が静まり返った。誰もが期待していた「武器」の具現化がなされなかったことに、ざわつきを感じ取っていた。
「どうして……?」
カナタは困惑しながら、首輪を握りしめた。エルナは確かに流し込んだはずだ。しかし、首輪は何の変化も見せなかった。
「ノクティス、君はシャドウクラスだ」
その言葉が告げられた瞬間、カナタの胸に重いものがのしかかった。
シャドウクラス――それは、最も低いクラスであり、エルナの力が十分に発揮できなかった者たちが集められるクラス。いわば落ちこぼれが集められるだ。
「カナタ、大丈夫よ!クラスがどこだろうと、これから頑張ればいいんだから」
「……ありがとう、エマ。でも、俺は本当にやれるのかな」
カナタは不安そうに答えた。自分だけが首輪という異質な存在で、シャドウクラスに追いやられたという現実が、彼の心に大きな重荷を与えていた。
こうして、カナタの学院生活が始まった。シャドウクラスという落ちこぼれの烙印を押された彼は今後どうなっていくのだろうか。
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1. ルナクラス
- 学園の最上位クラス。月そのものを象徴し、エルナの総量が最も多く、才能に恵まれた生徒たちが集まる。授与式でリベレートを行い、属性を持つ武器を具現化できた生徒がこのクラスに配属される。
- 特別な属性(火、水、雷など)を持つ武器を持つ生徒が多い。
- 戦闘技術やエルナの制御能力が優れている。
- 貴族や王族の生徒が多く在籍していることも特徴。
2.クレセントムーンクラス
-中間クラスで、まだ成長段階にある生徒たちが集まる。月が満ちていく途中の段階である三日月を象徴しており、潜在的な能力を持つが、それを完全に発揮するには時間が必要な生徒たちが在籍。
- 武器には属性が付与されていないか、弱い属性しか持たない。
- エルナの総量は十分だが、まだ完全に制御できていない生徒が多い。
3.シャドウクラス
- 最も低いクラス。授与式でリベレートが成功しなかった生徒や、武器に何らかの異常がある生徒が集まる。星や月の光が届かない影を象徴しているが、隠された力を持つ可能性も秘めているクラス。
- エルナの制御に問題があり、武器を具現化できない、もしくは不完全な武器しか具現化できない生徒が集まる。