プロローグ「十二の神々」
遥か彼方、星々が煌めく天界には、十二の神々が集う場所があった。彼らは「星座の神々」と呼ばれ、それぞれが宇宙の秩序を守り、強大な力を持つ存在であった。しかし、その秩序は揺らぎ始めていた。かつての王、オリオンが姿を消し、長きにわたる空位が続いているのだ。
「もう待てぬ。次の王が決まらねば、この宇宙は破滅へと向かう」
しし座の神、レオナスが荒々しい声で言い放つ。彼の大剣は静かに光を放ち、その圧倒的な存在感で他の神々を圧倒していた。
「俺がその座に就けば、すぐにでも秩序を取り戻してみせよう」
「力で秩序を取り戻すことは不可能だ」
てんびん座の神、リベリアが冷静に返す。彼女の斧は均衡を象徴し、その目は慎重に状況を見極めていた。
「オリオンがいなくなった今、我々は慎重に次の王を選ばなければならない。力を振るうだけでは、さらなる混乱を招くだけだ」
「慎重…だと?」
さそり座の神、スコルピオンが冷笑を浮かべる。彼の太刀は闇の中に潜むように静かに揺れていた。
「力こそがこの混乱を終わらせる唯一の手段だ。弱者には何もできない」
「だが、我々が直接争えば、宇宙そのものが崩壊する危険がある」
いて座の神、サジタリウスが弓を軽く撫でながら呟いた。
「無謀な戦いを避けるべきだ。我々の争いが引き起こす力は、ただの戦争では済まないだろう」
「だからと言って、手をこまねいている時間はないわ。次の王を早急に決めねばならない」
みずがめ座の神、アクエリアスが理知的な瞳を輝かせながら言葉を続けた。彼女の槍は冷徹な鋭さを放ち、彼女の決断の速さを象徴していた。
「人類を利用するというのはどう?彼らに私たちの力を授け、代理として戦わせれば、無用な力の衝突を避けられる」
「人類に力を与え、代理戦争を行わせる……」
リベリアは思案するように言葉を繋ぐ。
「それは、ある意味で理にかなっている。私たちが直接争うことを避けるには、それしかないのかもしれない」
「賢明な判断だな」
レオナスは微笑みながら頷く。
「力を持つ者だけが王となる資格を持つ。ならば、その資格を人類に競わせればいい。私の力を授けた者が必ず勝利するだろう」
カンセリア(かに座)は眉をひそめ、疑問を抱きながら呟いた。
「だが、人類を巻き込むことが正しいのか?彼らは我々の争いに関係ないはずだ」
「関係なくとも、彼らに力を与えれば私たちの意志を遂行する存在になるわ」
アリエス(おひつじ座)が興味を示しながら言った。彼女は戦士のように勇敢で、片手剣を構える姿は決断力を象徴していた。
「彼らは必ず役に立つ」
スコルピオンは薄く笑みを浮かべ、太刀を肩に軽く乗せながら言った。
「ならば、そうしよう。彼らに武器を与え、その結果を見るのも…悪くない」
こうして、十二の神々はついに決断した。人類に「ギフト」として武器を授け、彼らを代理として次の王座を争わせることを。それぞれの神が自らの選んだ者に力を与え、その結果を見守ることになった。