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フリーター、狩人になる。  作者: 大久保 伸哉
第1章−3 『乱獲事件編』
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第66話 幸せな夫婦生活

 結婚式を挙げてから半年が経過した。


 姉さんは無事に帰路に着いたらしく、その報告の手紙と共に、結婚式で言っていた魔剣を送ってくれた。


 性能としては前にくれた魔剣の上位互換といった感じで、魔力を流すと発火し、炎を纏う魔剣だった。姉さんが帰る前に注文をしていた通り、より火力を上げられるようにしてくれたそうだ。しかし、「こんなのを使う奴は馬鹿だ」と手紙の後書きに書いていた。


 姉さんの言わんとしている事は分かるが、この方がモンスターに刃が通りやすくなるから良いのだ。


 他の魔剣使いの様に氷の塊を飛ばしたり、土を盛り上げて壁を作ったりと補助に使うのは性に合わない。

 だったら、もっと斬りやすくしたいと思ってしまうのだ。

 ただ「限度があるだろう」と姉さんは言いたいのだろう。


 実際、この剣の性能は正直言って馬鹿げている。


 ちょっとの量の魔力を流しただけですぐに発火するし、熱くて長時間握っていられる物じゃない。しかし、その性能のおかげもあって、少ない魔力量で絶大なダメージを相手に与える事が出来るのだ。

 実戦で使用してみた所、最初の時はやはり扱いきれなかったが、火傷をしながら何とか扱いに慣れ始め、今ではこの性能に惚れ込んでいる。


 大型モンスターの硬い鱗をその熱で簡単に溶かし、斬りたい所を今までより簡単に斬ることが出来る。距離を空けるモンスターには、炎を飛ばしてタイミングをズラす事も出来るし、目くらましにも活用できる。

 最上級の鉄で加工してある事もあり、今のところ剣自体が溶ける様子もないし、刃こぼれ何かもする事がない。


 姉さんの鍛冶師としての腕が上達したと自身で言っていたが、ここまで凄い刀を作るとは思わなかった。

 恐らく、生涯この1本でやっていけそうなくらいには名刀だと思う。


 「見惚れてるねぇ〜。」


 剣の手入れをしながら、姉さんがくれた剣を掲げていた私にアルが声を掛ける。


 「ああ、やっぱりこの剣は良いぞ。」

 「エルザがそう言うって事は、相当良い剣なんだろうね。」


 昼食を終えた私達は、太陽の光が部屋を温めているのを感じながら、ゆっくりとした時間を過ごしていた。


 「この剣は生涯使える剣だ。何なら次の代まで使っていけるくらいは凄い剣だぞ。」

 「そ、そんなに―――ッ!?」


 アルはそんな私の評価を聞いた事で体を起こし、掲げていた私の剣に顔を近づけてまじまじと見つめる。


 「そ、そんなに凄いのかぁ……。僕レベルだと、ちょっと失礼だけど、ピーキー過ぎる様に感じるんだよねぇ……。」

 「まあ、確かにそうだな。だが、扱えるようになると、この剣は凄い。」


 最近、久しぶりに大型が現れて私に討伐依頼がやって来たのだが、その時の戦闘は瞬殺だった。

 先述した通り、大型であろうとその鱗を簡単に溶かして致命的な一撃を与えることが出来る。それによって、炎に耐性がないモンスターの殆どは、この剣の餌食になる事だろう。


 「そっかぁ〜……。」


 アルはそのまま席の戻り、フワフワとした感じで天井を見上げる。


 「生涯使える剣………次の代………。」


 アルはフワフワしたまま私が言った言葉を反復する。

 食後のゆったりした時間に酔ってしまったのか、そんなアルは何だか可愛らしかった。


 「エルザとの子供かぁ〜、きっと強い子なんだろうね。」


 アルは遠い目をしてそう呟く。

 突然の話題変更だったが、気にせずに私は答える。


 「どうだろうな。私の場合は、そうしなければいけないからここまで強くなれたが、子供はそこまで強くはならないんじゃないか。」


 強くなるというのは覚悟が必要だ。

 私は「生きる為」という理由と覚悟があったからここまで来れた。

 しかし、私達の子どもはそんな環境になるとは思えないし、するつもりも無い。


 私がここまで強くなれたから、遺伝的に私くらいの強さになれるかも知れないが、それは上限がここまであると言うだけで、受け継がれるとは思わない方が良いのでは無いだろうか。


 「いやいや、エルザの子供で、エルザが剣を教えたら、それはもう天下無双だよ!」


 アルは興奮気味にそう言う。


 「アルが教えても良いんだぞ。」

 「いや〜、僕が教えるよりもエルザの方が良いでしょ。」

 「どうだろうな。私は教えるとかはやった事が無いし、上手く教えられる自身はないな。」

 「何言ってるの、ここに一番弟子が居ますよ! Cランクだった男をBランクにしてくれたじゃないですか!」


 アルはその場で自身の胸を両手で叩き、私の指導者としての力量を褒めてくれる。

 確かにアルを育てる事は出来たが、それはアルが私の言いたい事をちゃんと理解してくれたからであって、私の指導が上手かったという訳では無いのではないだろうか。


 「もし、子供がハンターになりたいって言ったら、エルザが教えてやってくれ。僕は教えられる程強く無いからね。」


 しかし、アルはそれでも私達の子供に、私から剣を教えて欲しいようで、期待の眼差してこちらを見つめてくる。

 そんな目で見られてしまっては、答えない訳にはいかないだろう。


 「ああ、分かった。」


 私はアルの願いを一つ承諾する。

 これまでもこうして夢を語り、色々な約束をして、これからの生活に夢を見るのが私達の日常だ。


 「だが、まだ子供が出来た訳じゃないのに話してもしょうが無いんじゃないか?」

 「そんな事ないよ!

 子供が出来たら色々と大変だって聞くし、事前に決めておくのは良い事だと思う。親が2人ともハンターな訳だし、子供もきっとハンターになる。

 それにエルザとの子供だから、きっと竜殺しの英雄になる位強くなるよ。

 そんな子に剣を教えるなら、エルザが適任だ。」


 竜殺しくらいと言うのは少々現実離れしているが、そこまで評価して貰えるのは素直に嬉しい。だが、古代龍種を何体も倒すなんて事は流石に出来ないと思う……。


 「じゃあ、アルは何を教えるんだ?」

 「う〜ん。読み書きだね! あと計算が出来るようになって欲しいかな。」


 アルは知、私は武か………なんだか世間的には逆な気がするのだが、うちではその方が良いだろう。


――――――――――


 それから時間は過ぎ、夕食を摂って、子供の話をしたという事もあり、やる事をヤりに寝室へ行く。


 この半年の間に何度もしているが、未だに子供を授かる事は出来ていない。

 アルのブツが特段小さくて届かないとかいう事もなく、アルとの性行為が気持ちよくないという訳ではない。むしろ入れられるとデカいなと感じるくらいだし、アルとの性行為で逝かなかった事が無いくらいだ。


 しかし、子供を授かる事が出来ていない。


 それを考えた時、もしかして私に問題があるのではないかと不安になったが、ソフィアや村の主婦たちは「個人差があるだけだから心配しないで」と慰めてくれた。

 それにアルも「焦りすぎないで」と言ってくれている。


 「愛してるよ、エルザ。」

 「私も愛してる。アル。」


 やる事をヤり終えた私達は、そのままベッドの上に寝転がる。

 握りあった手はお互いに強く握りしめ、離れたくないという2人の意思を感じさせる。

 触れ合った手の熱さが、再び2人の熱を再燃させ、熱いキスをする。


 あの時とは違う、私以外のベッドの熱が愛おしい。


 愛の熱に包まれて、今日も穏やかに眠る。

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