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ザケンナ!?ざけんな!!  作者: 三之月兎卯
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空より来たる

落ちている。

何処から?

空からだ。

まだ遠く下に雲が見える。

かなりの高さだ。

果たして、無事に降りることができるんだろうか?

上を見上げれば太陽とおもわれるものが見える。

昼くらいか。

幸い、夜ではないので天地も見通しがつく。

問題はどうするべきかだ。

これは所謂(いわゆる)、異世界召喚てヤツなんだろう。


俺の名前は・・・。

・・・・・・。

・・・。

えっと・・・、あ~あ、面倒だ、ザケンナでいいや。

記憶はあるが元の名前が思い出せない。

というか、元の名前は無いとのこと。

今の俺は産まれたてというのはおかしいが、まだ出来立てホヤホヤらしい。

俺の記憶は別の世界の人間をコピペして作り上げた人格らしいぞ。

なんでも別世界の魂を別世界に送るなんてとんでもないことで輪廻の輪において魂の循環を犯す冒涜らしく禁止されてるとのこと。

でも、神様たちは救済と称し、神の使いとして文字通りの使徒をこの世界に送り込みたい。

そして、その使徒がこの世界の者たちに神秘的に見えるものにする。

ということで、別世界の知識とSランクスキルを使徒に持たせるらしい。

つまり、俺という人物は神さんの都合で用意した肉体という入れ物に別世界の知識と記憶を詰めこんだ人形というわけだ。

素になった人物の性格や趣味嗜好を引き継いでいるといしても、それは俺ではないわけだ。


「ザケンナ、ねぇ・・・」


ふざけた名前だと思う。

だが、このふざけた状況を考えると俺に相応しい名前かもしれない。

さて、冒頭に戻ろう。

俺は今、空から落っこちている。

異世界召喚にしてもいくらなんでも高すぎるだろ。

遠くを見やれば水平線が丸い。

この世界もどうやら丸いらしい。

雲を突き抜けて聳える長針の何かも見えるが遠すぎる。

表現するならSFの軌道エレベーターみたいな感じか。

俺が落ちる先は大陸だろうか。

雲が張っていて地表は分からない。

海らしきものは見あたらず、果ては地平線。

そんなことが確認できるような高さだ。

普通なら低酸素と極寒で意識飛んでそうなんだが、知識にある世界とこの世界は物理や法則が違うのだろうか?

判らん!

とにかく無事に地に足をつけなければ、始まる前に終わってしまう。

このあと生きていたならこの状況に陥れた女神さんには報復しようと心に決めた。

異世界召喚といえば、多彩な能力、チート性能スキルが定番であるが俺もSランクスキルというものを貰った。

[教導]

それが俺が手に入れたスキル。

で、現状、落ちてる原因とおもわれる。

スキルを受け取ったらゲーム開始を宣言された。

他のことを何を決めていないのに。

本来であれば、職業とか、スキル選択とか、パラメーター割り振りとか初期設定てきなモノがいろいろあったはずなのだ。

ゲームと違ってそれらをまとめて物理的にスキップされた。

おもえば、目覚めてから簡単な説明と名前設定、S級スキルガチャしかやっていない。

これは、アレだな。

ソシャゲ―あるあるのリセマラってやつだ。

一番最初のキャラエディットで欲しいスキルが手に入るまでキャラ作って消してを繰り返す作業。

俺の素になったヤツの記憶にも同じようなことをしていた。

要するに、俺の手に入れた[教導]は女神さんの趣旨に合わなかった。

だからさっさと俺を消してリセットして次のヤツを用意するのだろう。

悪意とかそういったものではない。

単なる作業での抹消。

ふざけている。

やった方は気にも留めていないだろうが、消される方からすれば溜まったものではない。


「勝手に登録されたときはキレそうだったが、いい名前だよな?ザケンナ」


落とされたときにとっさに掴んだ光球。

両手で逃げないように光球を羽交い締めにしながら仰向けになる。


『ザケンナ』


「ははっ、批難されてんのか、名前呼ばれてんのか、わからねーや。都合のいい方で受け取っておくわ」


『死ね』


「はいはい、死にますよ~。この状況、見ればわかるだろ?地面に叩きつけられりゃ無事じゃ済まないだろうさ」


高度数万メートルからの生身ダイブ。

可能な限り表面積を広げ、減速したいところだが手を広げたらこの光球は逃げ出すだろう。

こいつは浮遊していた。

ということは飛べるんじゃないだろうか?

他に方法を思い浮かばないのでコイツを手放すわけにはいかない。


「ただ一人で死ぬってのも寂しいだろ?一緒に死んでくれ」


心中宣言。


「お前が死んでも復活するなら問題ないだろうし・・・」


返答は待たない。

光球に余計な思考をする時間を与えると、こちらにとって状況が悪化する可能性がある。

ならば、先手を取ってその時間を奪う。

腹に抱えていた光球を力の限り締め付けながら背筋を伸ばす。

そして、その状態から180度身体を捻る。


「死ぬなら一緒だぜ」


頭からのダイブ。

横向きで空気抵抗を増やしていた身体を縦にし、空気抵抗を減らす。

地表に向けて加速した。


『¢£%#&□△◆■!?』


光球から声にならない声が上がる。

こいつも現状を色々考えていたのかもしれないが、目論見通りにならず、急な状況変化に驚いたのだろう。

俺を振りほどこう暴れるが逃がさない。

地平線が丸みを失いはじめ、世界が大きくなる。

雲が迫る。

薄い雲を突き抜けると、ついに地面が見える。

眼前に鬱蒼と繫る森とその間に伸びる道が見えた。

突如、目の前が真っ白になった。

ホワイトアウトというわけではない。

腕に抱えた光球が強烈な光を発し、俺の視界を奪った。

クソが。

俺がひるんだ瞬間に腕の中から抜けようとするが、そうはいかない。

ガクンと衝撃を受けると落下するスピードが落ちる。


「やっぱり飛べんじゃねえか」


光球から返答はない。

落下速度は徐々に落ちてる気がするが視界がまだ回復しきっていない。

チカチカとする視界の中、森の木が目の高さを越えてゆく。

地面まで残り10mくらいだろうか。

そこへガラガラとした音が迫る。

追いかけるように喧噪。

そして、光球の輝きが消えた。

「あ」っと声を上げようしたその瞬間、緩やかになっていたはずの落下速度が戻る。


「嘘だろ!!、おい!?」


自由落下の再開。

間が悪く、そこへ迫ってきたのは馬車。


上空からの襲撃者は勢いよく馬車の御者を撥ねた。

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