そして、(約)半年後
一応、以下の作品の続編と言うか、とりあえずの締めの話となります。
『幼馴染みはクソ女』
https://ncode.syosetu.com/n1904ia/
『私は薄っぺらなクソ女』
https://ncode.syosetu.com/n5400ia/
フィクション成分が前作より更に倍増しています。
ツッコミどころも以下同文。
試験的に、なろうでよく見る場面転換ごとに話を区切る形で投稿してみます。
放課後の教室。
俺はようやく用事を片付け終えて――
時間を確認すると、思ったより遅くなったな、と荷物を纏め始める。
「あ、シュウちゃん……もう、いいの?」
まだ居残っている俺に付き添う形で、自分の席で待っていた女子生徒が、声をかけてくる。
長谷川七海。
俺のクラスメイトで、物心ついたころからの付き合いがある、幼馴染、というやつだ。
いろいろあって、高校に入学してから、一時期疎遠になっていた時期も、あったのだが。
何の因果か、こうしてまた、何かと一緒にいる様になった。
「あー、七海悪い……思ったより、随分時間食っちまった。
まあ、とりあえず、大丈夫……の筈だ」
ふう、と息を吐いて、彼女に向き合って、学生鞄を肩にかけ、立ち上がる。
「待ってもらって、悪かったな。
じゃあ、そろそろ準備も済んだし、帰るか?」
「気にしないで。私が、好きでやってる事だから。
うん……それじゃ、行こっか」
俺の言葉に苦笑しながら、七海もまた、学生鞄を手に立ち上がる。
もう、半年近く経つのだろうか。
こいつと――またゼロから、やり直すと、決めてから。
初めのうちは、随分とぎこちなく、思うように言葉も出て来なかったものだが……
気が付けば随分と昔の様に、気安く話せる様にはなったものだ、と思う。
――って……ああ。
「あれ、シュウちゃん……どうかした?」
「いや七海……髪の毛に何かついてる。
ああ、糸くずだな、これ。
取ってやるから動くなよ」
「えっ、あっ……」
手を伸ばし、七海の髪についた糸くずを取る。
その際に掠める形で触れてしまった、彼女の頬がやや熱を帯びていたのは……気付かないふりをした。
「――悪い、くすぐったかったか?
でも、ちゃんと取れたから、ほら」
「……ううん、シュウちゃん、ありがとう。
じゃあ、電車の時間、遅れちゃうし、そろそろ学校、出ないと――」
糸くずを摘まみ上げて、掲げる俺に、頬を微かに紅く染めたまま、七海はそっぽを向いた。
流石に、彼女のこれが風邪とか、病気の類によるものではないことくらいは、わかっている。
……わかっては、いるのだ。
半ば、熱に浮かされる様に……
なあ、と彼女に声をかけようとしたその時、がらり、と二人きりだった教室のドアが開く。
ドアの向こう側にいたのは、これまた同じクラスの男子生徒の、空木か。
今更戻ってくるとは……忘れ物でもしたのだろうか。
事ある毎にやかましく騒ぐ男で、周りからは憎めないお調子者、と言った立ち位置で通っている。
俺個人としては、あまり関わりを持ちたい相手では、ないのだが。
何というか、随分とタイミングが悪い時に来るものだ。
相手が相手だけに、余計なことまで思い出しそうになる。
頭によぎるのはまだ、七海と再びかかわりを持つことになってから、ほどない頃の記憶。
昼休みの校舎の裏で、偶然盗み聞く形になってしまった……
空木が七海への告白した現場に、出くわした時の事だ。
今、思い返してみれば、だが……
多分、空木の眼からは俺が煮え切らない男だ、とでも映っていたんだろう。
俺への悪罵を交えながら、なぜ自分と付き合ってくれないのか、と訴える空木に
七海は、目を逸らさずに、声音に僅かな怒気を宿して、答えを返していた。
『……私の事は、何を言われたって仕方がないと思うよ。
シュウちゃんと積み重ねてきた時間と信頼を、裏切ってしまったのは、事実だから。
まだ、はっきり面と向かって好きだって言う事なんて、許されないだろうけど。
それでも、いつか許してもらえたらって、その時は――今度こそ、ずっと一緒にいれたらって、そう、思うんだ。
だから、貴方の気持ちには応えられない、ごめんなさい』
――そうして、ただ単純に七海が頭を下げ、空木を振ってお終い、とはならなかった。
何故かと言えば、この直後に、俺の存在に気付かれたことで……
憤りのまま、こちらに食ってかかってきた空木に、売り言葉に買い言葉で返し、少々派手な言い合いとなったからだ。
……まだ、七海と再び関りを持つことに、迷いのようなものを持っていた頃の話だ。
この時、半端な態度をとるならば……七海から離れろと迫る空木に、
どうしようもない苛立ちを覚えて、反射的に『お前の知った事か』と返し、口火を切ってしまったのは……
振り返ってみれば、俺にも何かしらの未練があった、と言う事だったのだろうか。
俺とて、一度は、あいつを見限って、忘れる事を選んだというのに。
まあ……結局、俺も大人ぶったところで、ただのガキでしかなかった、という事か。
分かっているつもりではあったが、それが本当につもりでしかなかったのは、この時からの半年近い期間で嫌と言う程思い知らされた。
あまり愉快ではない記憶に埋没していた所為で、憂鬱になり……
はあ、とため息をついてから、今現在の空木のいる方向に視線を向ける。
あいつは、こちらと目が合った瞬間から、血相を変えて……
何やら気まずそうな調子で、自分の机からノートなり何なりを回収すると、
そそくさと教室から出て行った。
まあ、あれだけ派手に騒いだ挙句、盛大にフラれた相手と出くわして
おまけに、その時にボロカスに罵った相手と、一緒にいる所を見れば……居たたまれなくもなるか。
泡を食ったような表情は、あの時の空木の反応とそっくりで、
何というか、当時の自分を思い出してしまい、妙にこそばゆい。
「えっと、シュウちゃん。さっき、空木君が入ってくる前なんだけど……
何か言いかけてなかった?」
「……いや、気のせいだろ。もう、いいから帰ろうぜ」
空木の事については……随分前のことだし、今更話を蒸し返しても仕方がない。
何となしに口にしかけた何かを、言葉にする機会を逃した事も、いいと思うことにしよう。
一度、深く深呼吸して気分を切り替えてから……
空けられたままのドアから、七海と共に教室を出る事にした。
前書きの通り、分けて投稿します。




