1.小器用な少年、イソン。
あとがきまで読んでね d(*‘ω‘ *) !
――翌日のこと。
「うー……昨夜は大変な目に遭った」
ボクは本業――もとい、アルバイト先の清掃業務に勤しみつつ、そうボヤいた。
今日の現場は貴族の住まう屋敷だ。高価な調度品の数々を壊さないよう、細心の注意を払いながらせっせと自分の作業をこなしていく。
そうこうしているうちに、日は高くなって昼食の時間になっていた。
「よう、イソン! 今日も本当に助かるぜ!!」
「あはは、どうもです。ギアさん」
屋敷の中庭。
清掃業者としてのボクらに与えられたスペースで、雇い主のギアさんと合流する。貴族の家だというのに、いつもと変わらぬ豪快さで彼は笑っていた。
「いやぁ、ありがとうな! お前みたいに色々な清掃業務ができる部下ってのは、なかなかいなくてな。俺はどうにも不器用だしよ」
「いえいえ。ボクはただ、昔から小器用なだけなので……」
「それがすげぇんだ、っての! 仕事は一度見れば覚えるしな!!」
ギアさんはそう言うと、ボクに弁当を差し出す。
受け取って、こちらも芝生の上に腰かけた。
「ところで、冒険者にはなれそうなのか?」
「あー……」
すると、飛んできたのはそんな質問。
「アレはたしかに稼げるが、危険な仕事だからな。俺としてはこの仕事に就職して、安定した収入を得るべきだと思うぜ?」
「ご心配、ありがとうございます」
「まぁ、お前の気が済むまで、俺は待ってるからな」
しかし、ボクの様子を察してか。
雇い主はそれ以上、こちらの事情に立ち入ってこなかった。
ボクにはとかく金が必要だ。それも、普通に働いて稼げる金額ではない。それこそ、冒険者にでもなって一攫千金を狙うような、大仕事をしなければならないほどの。
「さて、そろそろ午後の仕事を始めるか!」
「そうですね……よし!」
でも今は、とにかく仕事をこなそう。
そう考えてボクは、弁当を片してゆっくりと立ち上がった。その時、
「…………ん?」
「どうした、イソン」
「あぁ、いえ。なにか、妙な視線を感じて……」
「視線……?」
ボクは、どこか熱いものを感じて振り返る。
だがそこにあったのは、一本の大きな樹だけだった。
「気のせいじゃないか? ――樹、だけにな!! ガハハ!!」
「うーん……?」
ボクはギアさんの駄洒落をスルーしつつ。
ひとまず、気持ちを切り替えることにするのだった。だけど、
「昨夜のアレを思い出す感じだったな……」
そう口にして、思わず苦笑い。
ボクは頬を掻きながら、仕事へと戻るのだった。
◆
「まさか、師匠と再会できるなんて……!」
一人の少女が、樹の陰からイソンたちを見ていた。
愛らしい容姿に高そうな衣服。おそらくは、この屋敷に住まう貴族の娘、といったところだろう。そんな彼女はイソンを師匠と呼び、頬を赤らめていた。
その上で、意を決したように言う。
「今日こそ、あの方の弟子にしてもらわなければ……!!」――と。
そして、まるで夢を見るように。
彼女は昨夜の出来事を思い出すのだった……。
今日はもう1話かな。
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