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私を誰だと思っている?

「さ、簒奪者だと……?」


 私の言葉にセレンス伯が明らかに戸惑ったような表情を浮かべている。


 それもそうだろう、セレンス伯とすれば私が婚約破棄されたことに対する恨み言を言われると思っていたのに、まさか簒奪者呼ばわりされるとは完全に想像の外であったことだろう。


 我が国では、簒奪は重罪であり、通常よりも量刑が加算されることになっているのだ。


「そうだ。この二人が私に婚約解消を告げに来たときに次期侯爵夫人であると宣言したぞ。そのことをセレンス伯爵家は承知しているという話ではないか」


 私はセレンス伯爵夫妻を睨みつけながら言い放つと二人は顔を見合わせるとニヤリと顔を歪ませて嗤う。


「ああ、ジオルグお前は次期侯爵に選ばれることは決してない。それゆえに当たり前のことをフィオナは言ったまでだ」

「そうよ。あなたのような下賤な存在などフィオナにふさわしくないわ」

「ほう……つまり貴様らは次期侯爵が誰だと思っているのだ?」


 私の声の調子は嘲りがふんだんに含まれている。それを察しているであろうセレンス伯は口元を歪めて反論のために口を開こうとした。


「言っておくがレオンにザーフィング侯爵家の継承権はない」

「レ……え?」

「な……」


 セレンス伯の勢いが一気に失われ不安の表情が浮かんだ。


「レオンは父ガーゼルと義母アルマダの息子であり、ザーフィング侯爵家の血は流れていない」

「え?」


 応接室に困惑の空気が流れる。


「父ガーゼルは我が母であるエルフィルの入り婿……ザーフィング侯爵家を継ぐ資格はない」


 ここで私は部屋を見渡しながら歩き出し、ソファに腰掛けた。その際に私から視線が離れることは一切ない。


「なぁ……カルマイス子爵。今の私の言葉に何か訂正すべき点があるかね? まさかカルマイス子爵は弟ガーゼルがザーフィング侯爵などと思っていたわけではないよな?」


 私の言葉を受けて父ガーゼルの実家であるカルマイス子爵はビクリと身を震わせた。


「どうしたのかな? カルマイス子爵……まさか卿はすでにザーフィング侯爵家の簒奪は完了していたと思っていたのかな?」

「い、いえ……まさか」

「ほう……カルマイス子爵はガーゼル(・・・・)を経由してなぜかザーフィング侯爵家からの金の流れがあるのだが?」

「あ、そ、それは……」


 カルマイス子爵の顔面は滝のような汗が流れている。


「まぁ良い。カルマイス子爵、貴様への問いは後回しにしてやろう。今のうちに言い訳を考えておけ」


 カルマイス子爵は声を出すこともせずに下を向いている。しかし、ガタガタと体を震わせており、その精神状態に安寧というものは一切ない。


「すまないな。話が逸れた。まずはセレンス伯の事であったな」

「え……」

「先ほど卿らは言ったな。私が次期侯爵(・・・・)には決してなれないとな」

「?」

「それはまったくもって正しい」

「え?」


 訳が分からないという表情が浮かぶ。その困惑を無視して私は言葉を続けた。


「私は()ザーフィング侯爵だ」


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