侯爵は報復の刃を振るう⑤-2
今日は二話連続更新なので前日の続きは前話となります。
腰斬……文字通り、腰から肉体を両断する刑罰であり、斬首刑よりも絶命まで時間がかかるため、苦痛も凄まじいものになるのだ。
この腰斬という刑罰は、よほどの重罪人にしか与えられない。普通平民に与えられる死刑では絞首刑が行われるのが通例だ。斬首刑ですら滅多に行われない。今回の腰斬が行われるということは、それだけの重罪人という意味合いを持つ。
私はガーゼル達を腰斬で処刑することを決めていた。
母は今際の際に、私に謝罪した。
“お前にすべてを負わせる不甲斐ない母でごめんね”
これが母の最期の言葉だった。本来であれば私に色々なことを教えたかっただろう。ザーフィング侯爵は闇の魔人衆というこの国最大の諜報機関を束ねる家だ。普通の領主以上の責務と覚悟が求められる。
ガーゼルは婿ということで、闇の魔人衆のことは知らされず、母は領主と頭領、そして私の母としていくつもの責務に対し真剣に向き合っていた。それに気づかないガーゼルは母を支えることもなく、自分の欲望を満たすだけだった。しかも、その母を毒殺という手段で殺害したのだ。
私は母が目を閉じる前にガーゼルの口角が僅かに上がってるのに気づいた。私が気づいたくらいだ。母が気づかぬはずがない。母は絶望のうちにその命を理不尽に奪われたのだ。
私はその時にガーゼルを最も惨たらしく殺してやることを母の葬儀の場で誓った。
復讐の虚しさを偉そうに説く人間がいる。虚しいというのなら復讐をしなければ良い。
だが、私は違う。むしろ復讐をすることでガーゼルがニヤニヤ笑っている不快さが消えるというのなら、復讐の虚しさに苛まされている方がよほどこれからの人生を快適に過ごせるというものだ。
さぁ……
ガーゼル、アルマダ……
無惨な死をお前達にようやく贈ることが出来る。




