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最凶侯爵の逆鱗に触れた者達の末路  作者: やとぎ


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侯爵は報復の刃を振るう④

 その日、ザーフィング邸に集められた一四名は、和やかな雰囲気の元で談笑していた。


 男性九名、女性は五名であり、年齢は上が五十前後、下は二十になったばかりというと者と幅広い年齢層だ。


「ジオルグ様がザーフィング侯にようやくなられたな」

「ああ、長かった。エルフィル様の仇を目の前にして仇討ちも出来ぬこの年月ほど長く感じたことはない」

「ジオルグ様の命令でなければ、あのクズ共だけでなく、奴らの実家ごとこの世から消していたわよ」

「ドロテア殿の言う通りだな」

「しかし、気になる情報があることはみなも同じだろう?」


 四十代半ばの男性の言葉に全員が静かに頷いた。


「あのクズ共の実家の件だろう?」

「配下の者達の中にもいきり立つ者がいる。新しい頭領は対応が緩すぎるとな」

「私のところにも、ジオルグ様に対して不安を感じている者がいるのも事実だ」

「そこの真偽はこれから確かめるとしようではないか」


 一人の男の言葉に全員が頷いた。


 コンコン……


 ドアがノックされると一人の執事が頭を下げる。領都レグノスにあるザーフィング邸を取り仕切る執事長のヴァンスである。

 ヴァンスの姿を見た一同は立ち上がり一礼する。ヴァンスはザーフィング家を取り仕切る執事長というだけでなく、闇の魔人衆(ルベルゼイス)の大幹部でもあるからだ。


「皆様、お待たせいたしました。屋形(やかた)様が来られます」


 ヴァンスの言葉に皆が頷いたところに、ジオルグが入ってきた。


 一同はジオルグに一斉に一礼するとジオルグは手で着席を促した。ジオルグの促しに従い全員が着席する。


「よく来てくれた。私がザーフィング侯ジオルグであり、闇の魔人衆(ルベルゼイス)頭領であるジオルグ=レオムス=ザーフィングだ」

「はっ!! 頭領就任、まことにおめでとうございます」


 五十代前半の男が立ち上がり、ジオルグへ就任のお祝いの言葉を告げる。ジオルグが頷くと男は着席した。


「エランスからの祝いの言葉嬉しく思う」

「もったいないお言葉でございます」

「さて、本日卿らを呼んだのは、謝罪をするためだ」


 ジオルグの言葉に闇の魔人衆(ルベルゼイス)の幹部達の表情に一瞬怪訝な表情が浮かんだ。


「ジオルグ様、謝罪とは一体……?」


 エランスが代表してジオルグに尋ねる。


「謝罪は二つある。まずは先代頭領エルフィルが暗殺されてから今日までのことだ」

「……」

「先代があのような者達に暗殺され、後を私が継ぐまで5年もかかった。その間、卿らは不安定な状況におかれた。卿らを統べる役目である我がザーフィングのゴタゴタにより不安な状況に置いたことを詫びねばなるまい」


 ジオルグの言葉に幹部達は沈黙を守る。


「これは間違いなくザーフィング家の落ち度だ。あのような愚鈍な者達をザーフィング家に入れてしまったのはひとえに油断でしかない。闇の魔人衆(ルベルゼイス)の頭領である自分達が相手にしているのは、各国の諜報機関、暗部達、そんな自分達が素人に害されるわけなど無い、というな」

「……」


 ジオルグの言葉に幹部達の表情は緊張感を増した。ジオルグの言葉は、ザーフィング家は油断により、大きな損害を受けた。諸君らはどうか?と問われた感じがしたのだ。


「卿らにここで宣言しよう。もし、今後ザーフィング家が自分達の主にふさわしくないと判断すれば、いつでも見限ってもらっても構わない」

「な……ジオルグ様、それは……」

「今回の不手際により卿らの信頼を再び得るには必要な措置だ」


 ジオルグの断言に幹部達は視線を交わし、それぞれの表情で頷いた。

 闇の魔人衆(ルベルゼイス)は、時として手を血に染めることすらある。闇の魔人衆(ルベルゼイス)のメンバー達が代々のザーフィング侯を頭領と仰ぐのは、報酬のこともあるが、それ以上に彼らの技に敬意を払い、意義を与えてくれるからだ。

 ジオルグの言葉は、闇の魔人衆(ルベルゼイス)の頭領としてふさわしい人物になるという覚悟と矜持の表れである。

 侯爵であるとはいえ、十六の少年にそこまでの覚悟を見せられて、応えぬというのは今度は彼らの矜持が許さないというものだ。


「承知いたしました。ジオルグ様のお覚悟しかと受け取りました。我々も慢心することなく闇の魔人衆(ルベルゼイス)としての任務に励みたいと思います」


 エランスの言葉に幹部達は納得とばかりに頷いた。


「うむ。よろしく頼む」


 ジオルグは微笑みを浮かべて穏やかな口調で返答した。


「してジオルグ様、二つ目は?」


 そこに四十代半ばの幹部がジオルグに尋ねる。


「もう一つは、卿らの獲物をとることの詫びだ」

「我々の獲物?……まさか」

「ガーゼルとアルマダのことだ」


 私の言葉に幹部達が雰囲気が一瞬揺らいだ。前ザーフィング侯爵であり、闇の魔人衆(ルベルゼイス)の前頭領である母の敵の名を聞くだけで、冷静でいられないというものだ。

 これは自分達の主を殺された仇敵というだけでなく、闇の魔人衆(ルベルゼイス)を侮辱したことに対して自分の手で報いをくれてやりたいという気持ちの表れである。


「あの二人は私が(・・)やる」

「まさか……御自ら?」

「当然だ。あの二人の処刑人は私だ。他の者にこれを譲るつもりは一切ない」


 私の言葉に幹部達はゴクリと喉を鳴らした。


「そして卿らは、もう一つ私に不安があるだろう?」

「……」

「カルマイス子爵、エディオル子爵はすでに私の傘下に入った。既に両子爵家では代替わりしており、新子爵は私よりも年下故に私が両子爵の後見人となっている」

「後見人ですか?」

「そうだ。近日中に発表があり、闇の魔人衆(ルベルゼイス)の活動の隠れ蓑として使うつもりだ」


 私の言葉に幹部達は顔を見合わせた。私は彼らの心が動いたのを感じ取ると、そのまま話を続けることにする。心が動いているときはそのまま話を進める方が良いというのが私の持論だ。


「もちろん、場合によっては即消えてもらう」

「場合によってはですか?」

「そうだ。もし、私の支配を良しとせず、私の支配から逃れようとした場合だ。既に両子爵家にはその仕込みを入れていることは卿らもわかっているだろう?」

「はい」

「そう、両子爵家は事実上滅びているのだよ。全ての決定権に私の意思が優先される。それは貴族として何の決定権も有してないということだからな。だがもし、卿らが私を信じられぬというのなら前子爵は明日にでも始末しよう。どちらの前子爵に消えて欲しい?」

「……」


 私の提案に幹部達は沈黙している。私とすれば現子爵の後見人という事から現子爵達を現時点では始末するつもりはない。だが、前子爵達は利用価値はないため始末する事に何の躊躇もないのだ。


「どうした? どちらでも構わないぞ」

「ジオルグ様、我らへの配慮のためであれば、現時点で前子爵を処分する必要はないと私は考えます。みんなはどうだ?」


 エランスが皆に問いかけると幹部達もエランスに同意するかのように頷いた。私としてはここで処分しても構わないと思っていたが、取り立てて処分をする理由もないので幹部達の意見を受け入れることにする。


「そうか。皆の意見を受け入れよう。犠牲にする必要が出来たら遠慮なく申し出よ」

『はっ!!』


 幹部達が一斉に一礼と共に返答した。前子爵達は天寿を全うすることが出来なくなったことが本人達の知らないところで決定されたわけだ。


 順番はくじ引きにするかと私はそんなことを考えて会合は終わった。

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