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現実を教えてやろう

「な、何をする!! 無礼者が!!」

「離しなさい!! 私はセレンス伯爵家の者よ!! このような無礼を!!」


 組み伏せられたレオンとフィオナは叫びながら離すように命令するが、執事服とメイド服に身を包んだ二人の人物はそれに応える事はない。


「黙れ……」


 執事服の少年がやけにドスのきいた声でレオンに言い放つとレオンはその口を閉じる。


「お前もよ。ジオルグ様への無礼……本来であれば即座に喉を切り裂いてやるところを捕らえるだけで済ませているのよ」


 メイド服の少女は静かな声でフィオナへと告げるとフィオナも口を即座に閉じた。


「ロイ、アイシャ、ご苦労」

「「もったいないお言葉」」


 私の言葉に二人は拘束を一切緩めることなく私に頭を下げる。


 このロイとアイシャは双子の兄妹であり、私直属の執事、侍女である。年齢は十六であり美しい容姿をしている兄妹である。


「さてと……」


 私は机の上にある呼び鈴を静かに振ると澄んだ音色が発せられ、二十秒ほどで一人の執事服をまとった初老の男性が現れた。


「ルシャール、セレンス伯爵並びに伯爵夫人を呼び出せ」

「承知いたしました」

「ああ、それとカルマイス子爵、エディオル子爵もな」

「はっ」

「無論、私の名でだ」

「もちろんでございます」


 ルシャールと呼ばれた執事は取り押さえられているレオンとフィオナにまったく注意を払うことなく私の命を受け取るとくるりと回れ右すると執務室を出て行った。

 ルシャールの対応にレオンとフィオナは信じられないという表情を浮かべ、互いに視線を交わしていた。


「この呼びかけに応じることが最後の機会だが、あの阿呆共はそのことに気づくかな」


 私の声の調子は限りなく平坦であり、棒読みのように聞こえるだろう。しかし、声を聞いたレオンとフィオナはびくりと身を震わせた。


「お前達が単に婚約解消を求めてきたというのなら応じてあげたというのにな。分不相応なことを言ったばかりに……心が痛むよ」


 私の言葉にガタガタと二人の体が震え始める。


「ほう……ようやく自分達がいかにマズイ状況に置かれているか理解したようだな。だが、もはや取り消すことはできぬよ。なぜなら聞いたのが私だからな」

「お、お前は」


 私の言葉にレオンは口を開いた。弱々しい声はレオンが私を恐れている証拠だ。先ほどまでの傲岸不遜な態度など微塵もない。


「お前はロイの優しさを全く理解していないな」

「なっ」


 私の言葉の意味をレオンは理解出来なかったのだろう。不安の表情を浮かべた。私の声色が冷たいものになったからかもしれないが、そんなことは大した事ではない。

 私はロイに視線を向けて静かに言い放った。


「ロイ、この阿呆にはお前の優しさが通じてないようだ」

「はっ」


 ビギィ!!


 私の言葉にロイが応えるとレオンの指を容赦なくへし折った。 


「がぁぁぁぁぁ!!」


 あまりの痛みにレオンが叫び声をあげた。そこにロイがレオンの耳元に口を寄せるとレオンの口が慌てて閉じられた。しかし、痛みが軽減されたわけではないので冷たい汗が絶え間なく流れている。


「二人とも私の許しなくして言葉を発するな。これは願いではなく……命令だ。この意味がわかるな?」


 私の言葉にレオンとフィオナはコクコクと壊れた人形のように何度も頷いた。


「二人ともこの阿呆共を放してやれ」

「「はっ!!」」


 私の言葉にロイとアイシャは素直に従うとレオンとフィオナの拘束を解いた。


「さっさと立って壁のところに移動してそこで待て」


 私の言葉に二人はヨロヨロと立ち上がると黙って壁のそばに移動し、言葉を発することなく静かに立っている。顔は強張り、顔色も極限まで悪い。


「少しは賢くなったか」


 私の言葉に二人は身を震わせた。




 読んでくれてありがとうございます。


 

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