特別編 エピローグ
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そわそわ。
そわそわ。
「うーむ……」
オキト城へと続く、大きな城門。
その門の前で、オキト国王はローブを引きずりながらウロウロと歩き回っていた。
腕時計を見たり、城下町の方を見たりと落ち着きの無いその様子を見て、その後ろのマグナが頬を掻く。
「あの、王様……。やっぱり中で待っていませんか?もうそろそろ暗くなりますし」
「だって、到着は十九時って連絡がきたのに……もう二分も過ぎてるんだもの。ああ、ルーティア達、大丈夫かなぁ。何か事故があったんじゃあ……」
「そのくらいは誤差の範疇なのです」
胡座をかいて座り込むクルシュも、国王のソワソワを呆れるように見ていた。
日が少し伸び、ようやく辺りが暗くなってきた時。
城下町からオキト城へと伸びる桟橋の先に、一台の鳥車が見えた。
「……!!来たっ!!」
それをいち早く発見したのは、やはりオキト国王であった。
待ち望んでいたその影が早く近づいてこないかと、ソワソワが余計に大きくなる。
ガアは国王、マグナ、クルシュの三人が待つ城門前に近づくにつれスピードを落とし、そして停車する。
鳥車の中から、リーシャ、マリル、そして運転手であるルーティアが降り、久しぶりのオキトの大地を踏みしめるのだった。
「ルーティア・フォエル、リーシャ・アーレイン、マリル・クロスフィールド、ただいま帰還致しました」
ルーティアがその場に跪き、それに続くようにリーシャとマリルも片膝を地面につける。
先ほどまでソワソワと落ち着きの無かった国王は、それを隠すように背筋をピンと張って咳払いをした。
「うぉっほん。 ルーティア、リーシャ、マリル……フォッカウィドーへの遠征、ご苦労であった。面を上げるがよい」
「……先ほどまでとは別人なのです」
頬杖をついたクルシュがぼそっ、と呟いた。
「クールーシュー……アンタねぇ。国王に渡すものが魔装具なら、最初からそう言っておきなさいよ……!おかげでびっくりしちゃったじゃない……!」
オキト城内に入り、中を進んでいく六人。リーシャが恨めしそうにクルシュを見るが、少年は至って涼しい顔だ。
「試作段階の魔装具を渡すので、くれぐれも内密にという事だったのです。国王自らテストをするとなると色々と問題が発生するのですが、フォッカウィドー国王たっての希望だったので、そうせざるをえなかった、のです」
「まったく。とんだサプライズだったぞ」
「ええっ、そ、そんな事してたの……!?ワシ、全然知らなかったんだけど……」
「……知らされてなかったんですね」
マリルが呆れた。
フォッカウィドー国王も、無茶をする。
兎に角、国王も自分も無事で良かった、と改めて胸を撫で下ろすルーティアであった。
「マグナ、留守の間は大丈夫だったかしら?」
リーシャが聞くと、マグナは背筋をぴしっ、と伸ばす。
「はいっ!小型魔獣の討伐依頼など数件ありましたが、ボク達で対応しました!」
「怪我とかしてないでしょうね?」
「勿論です!依頼も全て完了しています!」
「……頼もしいわ。ありがと、マグナ。騎士団の事、アンタに任せて良かった」
リーシャがにっこりと歯を見せて笑うと、マグナは赤面して喜んだ。
「あ、あ、ありがとうございます!!これからもボク、がんばります!!」
「……マグナちゃーん。あっちで強力なライバルが出来たのよー、ふふふふ」
「……?なんですか?マリルさん」
意地悪そうな顔をしてにやけるマリルの頭を、リーシャが小突いた。
「言わなくていい」
「な、なんですか?ボク、気になるんですけど……」
疑問符を頭に浮かべたまま、マリルとリーシャを問い詰めようとするマグナであった。
「さ、とにかく入って入って」
「……?大広間?謁見の間ではないのですか?」
国王の案内でたどり着いた場所は、オキト城城門から真っ直ぐ進んですぐにある、大広間であった。
普段は大所帯の客人をもてなしたり、舞踏会や宴会を開いたりする場所で、相当のキャパシティがある部屋になる。
てっきり謁見の間で遠征の報告を行うと思っていたルーティア達は、たどり着いた場所に違和感を覚えた。
しかし、その意味はすぐに分かる事になる。
大広間へ続く、観音開きの大きなドアを国王が両手で広げると……。
そこにいたのは、数百人の騎士団員、魔術団員達だった。
「「「 え??? 」」」
ルーティア、リーシャ、マリルがその姿を視認すると同時に、団員達が持っているクラッカーが一斉に鳴る。
「「「「 おかえりなさーーーーいっ!!!! 」」」」
「ルーティア様、リーシャ様、おかえりなさい!旅はいかがでしたか?」
「あっちの戦士達はどんな戦い方をしてきたんだ!?気になるぜ!!」
「フォッカウィドー、行った事ないんだよねー……。ねえねえ、やっぱ海のものが美味しいの!?」
「マリル、船旅は初めてだったんだろ!?俺も今度家族で行きたいんだが、どうすれば乗れるんだ!?」
「わーっ!ま、まずはみんな、落ち着いて!ほら、嬉しいのは分かるけど、自分の席に戻る!ほらほら!!」
まるで学校の先生のように、押し寄せる団員達をなだめようとするオキト国王。
ルーティア、リーシャ、マリル。
三人は、同じ表情をしていた。
フォッカウィドーへの旅から帰った、思い出。
そして再び、オキトに戻ってきたという実感。
暖かく出迎えてくれる団員達に、自然と笑顔になる3人。
その気持ちを代弁するかのように、ルーティアは国王の前へと歩み出て、叫んだ。
「みんなっ!! フォッカウィドーの美味しいお土産、たくさん買ってきたからなーーっ!!」
「「「「 うおおおおおっ!!!! 」」」」
なによりもその言葉を待ち望んでいた団員達のボルテージは、最高潮に達するのであった。
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これにて、『第一章』を閉幕させていただきます。
これよりしばらく休載をさせていただき、改めて『第二章』を書き始めさせていただきます!
再会は一ヶ月半くらい先の夏の再開を目標にしています。
スタイルは変わらず、新しい休日の過ごし方を色々と描いていければと思います。
ここまでお読みいただいた方、本当にありがとうございました!
今日でこの小説が続いてちょうど一年。
狙っていないのに、一つの節目になりました。
ここまでこれたのも本当に皆様のおかげです。
また夏に、もう一度お付き合いいただけると幸いです……よろしくお願い致します!




