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(3)

――



 地下水路へは朝に探索に入っていた討伐隊だったが、時刻は深夜に近い時間になっている。


 水路の入り口から少し離れた広場に、作戦に参加したメンバーは集合する手筈で、ルーティアとマグナがその場所に来たのは最後であった。

 最深部まで潜入していたからであろう。他の騎士団員たちは既に集合しており、二人の到着を今か今かと心配していた。




 二人の姿を見ると、駆け寄ってきたのはリーシャ・アーレインであった。


「マグナっ!」


 リーシャは泣きそうになりながら待っていたのだろう。目が少しだけ赤い。


「リーシャ様!……た、ただいま、戻りました」


「遅かったじゃない!なにかあったんじゃないかと思って心配したのよ!」


「五体ほどのジャイアントラットに襲撃を受けまして……。あの、でも大丈夫でした。傷一つありません」


「本当でしょうね!医療班に確認してもらうからねっ」


「ルーティアさんのおかげです。ボクを守ってくれて……」


 リーシャはマグナの手を取り、心配そうに、だが安心したように笑っていたが…… ルーティアの方を睨むように視線をやる。


「……なにもなかったでしょーね。ウチのマグナにケガなんてさせてたら、許さないから」


「ケガもなにも、マグナも魔獣を二匹も倒す大手柄だったぞ。すごい実力だったな、さすがはリーシャの部下だ」


「えへへへ」


 そう言われて、マグナは照れ、にやけた笑いを浮かべた。

 しかしリーシャは当然、というばかりに鼻を鳴らす。


「トーゼンでしょ。わたしが傍に置いているんだから、弱いハズないじゃない」


「私の事は心配してくれなかったのか?リーシャ」


「アンタに何かあるわけないでしょ。アンタがこのくらいの任務で死ぬんならとっくに王国は滅亡してるわ」


 ルーティアの事は、一切心配していなかったリーシャ。

 逆を言えば、それだけ彼女の強さを信頼し、尊敬しているのだろうが…… ルーティアはその事には気付けずやれやれといった笑いを浮かべるだけであった。




「おほん。これで全員戻ったな。討伐隊、全員集合!」


 今回の作戦の作戦長は、以前にも邪龍討伐戦で指揮をとった初老の騎士だ。

 実力よりも作戦をたて決行する決断力に長けた彼の指示は騎士団のエースであるルーティアやリーシャなども一目を置いている。

 なにより、こうして笑顔で討伐隊が作戦終了の報告を受けられる事が彼の作戦長としての有能さの証であろう。


「地下水路調査、および魔獣討伐任務はこれにて終了とする。合わせると計20体のジャイアントラットが地下水路に巣食っていた事となったな。よくぞ皆無事で生還してくれた」


 おおおお……。騎士団員達がどよめく。

 今回の討伐任務に当たった騎士団員は18名。計算すればほぼ一人一体の討伐を行った事になるが、そのうちの5体はルーティア、マグナの二人で行った事となる。大戦果だ。


「リーシャ様のチームは何体倒したんですか?」


 マグナの質問に、リーシャは少し頬を膨らませて小さく言う。


「……4。あと二体でアンタ達より上だったのに……くぅぅ……」


「別に競争をしているわけではないのだからいいだろう」


 ルーティアは作戦長の方を見ながら何食わぬ顔で言った。しかしリーシャはそれが気に喰わない。


「何事もアンタより上だって証明したいのよ。試合だって、もう一回やれば絶対にアタシが勝つし……!」


「私情込みの練習試合は断ると言ったはずだぞ。剣を磨くという心をしっかりつけたら相手をしてやる」


「えらっそーに……!絶対負かしてやるんだからね……!!」



「こら、そこ!うるさいぞ!戦果をあげたからと言って調子に乗らないように!」


 作戦長は、まだ作戦報告をしている最中だったらしい。


「す、スイマセン……!」


「すまん」


「ちっ……悪かったわよ……」


 三人それぞれ、姿勢を正して作戦長の方を向き直る。



「あー……とにかく!誰一人負傷する事なく無事に今回の作戦を終えられたのは君達勇猛果敢な騎士諸君のおかげだ!王に変わって礼を言おう。感謝する!」


 作戦長は整列する騎士団員達に頭を下げる。

 作戦長を信頼する騎士団員全員も、彼に感謝をする。


「明日は休みだ。任務の疲れを存分に癒して欲しい。国からの報奨金を受け取ったら、各自家路につくように。 ――それでは、解散ッ!!」



「ね、ね。リーシャ様、ルーティアさん。明日は何か予定があるんですか?」


 作戦を終え、騎士団員達はそれぞれバラバラに広場を後にする。

 ルーティア、リーシャ、マグナの三人も一旦城に戻ろうと歩き始めたとき、マグナが突然二人に尋ねてきた。


「? 別になにもないわよ。のんびり休むつもりだったけど」


「私も一日トレーニングに充てるつもりだったが」


「アンタ、この上更に鍛えるつもりなの……」


 呆れるリーシャ。

 マグナは嬉しそうに歩く二人の間に入って、提案した。


「そ、それじゃあ……明日は、みんなでお出かけしません?」


「お出かけって、どこへだ?」


「……一日中地下にいたから、お日様が恋しくなっちゃって。だから……」


 マグナは恐る恐るだが、楽しそうに二人に告げた。



「公園に、ピクニックですっ!一緒に行きましょう!リーシャ様、ルーティアさん!」



――


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