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【完結】最強の女騎士さんは、休みの日の過ごし方を知りたい。  作者: ろうでい
四話 全能の要塞《ショッピングモール》
30/121

(7)

――



 そうして、気付けば午後の時間も過ぎていき、気付けば夕刻も近くなってきている。

 午前中からずっとこの商業要塞(ショッピングモール)に入り浸っている三人の足は、流石に疲労感を感じてきた。

 特に普段運動をしていないマリルの足は限界にきており、二階にあるカフェへ避難する事となった。

 三人は紅茶と気に入ったケーキを注文し、一服した。


「すっかり買い物袋も増えたね、みんな」


 マリルが言う。

 三人の座る椅子の両側には、既に両手いっぱいに持つほどの袋。

 ルーティアは二人に勧められた衣服やアクセサリー類。ついでとばかりに自分用の運動着をもう一着と、携帯用魔法薬など戦闘に役立つアイテムまでつい買ってしまった。

 マリルも、ルーティアと同じく自分が欲しかった衣類。夏も近いことから、涼しいカラーのシャツなど。見ていた魔法道具まで色々と購入している。

 リーシャは、気になっていたメンダコのぬいぐるみを結局購入。食べる量は普通、と言っていたリーシャだったが、クッキーやキャンディ、カステラやチョコなど大量のお菓子を袋いっぱいに買っていた。


「……一旦財布の紐が緩むと、あとは雪だるま式にどんどん出費が増えていく。恐ろしいわね、給料日直後の買い物って」


 欲しいものを買ったものの、散財を若干後悔するリーシャであった。ルーティアとマリルも同じく、満足と後悔の狭間の気持ちが揺らめく。


「ま、今日はこの辺で帰ろうか。いいかな?ルーちゃん」


「ああ」


 今までこれだけの買い物をした事がなかったルーティア。

 これ以上この場所に居る事は危険だ、と撤退を判断した。


 マリルは紅茶を一口飲み、ルーティアに向かって尋ねてみる。


「楽しかった?」


 その言葉に、ルーティアはふっと笑って頷いた。


「必要な物を買うのが買い物だと思っていたが、それだけというわけではないのだな」


「?どういうことよ?」


 リーシャがルーティアの顔を覗き込んで聞く。


「今までの私の買い物は、『これが必要だから』買う。そのやり方しか知らなかった。今日知ったのは……『これが必要かもしれないから』買う、という事だった」


「同じじゃないの?」


「全く違う。前提として必要な物を買うか、必要かどうかを後付けで考えて買うか。服や、物品。今まで見たこともない物が私の生活に入ってきたら……と、イメージをして買い物をするという経験が、無かったんだ」


「……なるほどね」


「コレがあったら、楽しくなるかも。コレを着たら、自分のイメージが変わるかも。コレを食べたら、美味しいかも。一歩踏み出す事で、新しい生活のイメージがどんどん膨らんでいく。……良い時間だったぞ」


「案外、買い物中毒になりそうかもね、ルーティア」


「そうかもしれないな」


 リーシャとマリル、そしてルーティアは、クスクスと笑いながら会話を続けた。

 今日一日でまた一つ新しい扉を開いた様子のルーティア。

 城にいるときはあまり見られなかった、ルーティアの笑顔。マリルやリーシャと出会った数日は、彼女をどんどん人間へと変化させていっていた。


―――



「あ、コレ」


 朝に来たドアから出て、乗り合いガアで城へと帰ろうとした矢先。

 マリルがある物を見つける。


 『魔法式電影記録媒体機』という看板の下に、大きな箱のような物体が並んでいる。

 箱はカーテンで仕切られており、中に入れるようになっていた。三人は余裕で入れる大きさであろう。


「なんだこれは」


 中を覗き込むルーティア。

 真っ白な空間の前方には、黒く光る透明な物体が存在した。

 続けてマリル、リーシャが箱の中へと入り、マリルが説明をする。


「電影記録媒体。この透明な魔法機で私達に光を当てて、それそっくりの絵を紙に映すのよ。それをお土産で持って帰るの」


「へー。わたしもはじめて見るわ。噂には聞いてたけど……」


 興味があったらしいリーシャは、楽しそうにその中身を見渡している。


「ねぇ、記念に三人で撮って帰ろうよ。今日の記念にさ」


 マリルの提案に、リーシャは無邪気に応える。


「いいわね、面白そう。一回やってみたかったし。ルーティアもいいわよね?」


 リーシャが素直に乗るとは思わず、魔法機械が苦手なルーティアは少し躊躇うが――。


「うむ、そうだな。記念に撮っていくとしようか」


「オッケー。……あ、記録媒体の紙に、好きな言葉を刻めるらしいわよ。ほら、このペンで……なんで書く?ルーちゃん」


 マリルはルーティアに、ペンを渡した。魔法物体の前には淡く光る四角い板があり、そこに文字を書き込めるようになっていた。


「私が書いていいのか?」


「今日はルーちゃんの買い物だし。好きな文字書きなよ」


「……うむ……。どんな事を書けばいいのか……。…………」


 少し迷ったあげく、ルーティアは板の下部に文字を書いた。


「『ガアで来た。』、っと」


「なによそれ。なんで移動手段をここに書かなきゃいけないのよ」


「何書けばいいかわからなくて、つい」


「もうちょっとなんかない!?その言葉だけだと意味わかんないでしょ!?」


 ルーティアを責めるリーシャを、マリルがなだめた。


「まあまあ。……あ、ほら。もうお金入れちゃったから、撮られるよ。ポーズしなきゃ、ポーズ」


「え、ウソ!?早いわよお金入れるの!ま、待って……」


 慌てて髪の毛を整えるリーシャ。ルーティアも、意味は分からないがとりあえず慌ててマリルに聞く。


「ポーズって?どうすればいいんだ?」


「数秒したら前にある魔法物体が光るから。光った瞬間の映像が紙に記録されるの。だからなにか、かっこいいポーズとか、かわいいポーズとかしてみて」


「え、え、え」


「ほら、タイマー。もうあと5秒よ。4、3、2……」


「わ、わ、わ」


 とりあえず思いついた適当なポーズを、透明な機会に向けて作るルーティア。経験のないマリルやリーシャも、同じようにポーズをとる。


 笑顔とも真顔とも言えない、絶妙な表情の三人が写った紙が、取り出し口から排出されるのであった。



――



―― 次回 『悠久の大地』《ピクニック》





四話完結です。


ここまでお読みいただいた方、本当にありがとうございます。


よろしければ次回からもお付き合いいただけると幸いです。


また、感想やご指摘などお待ちしております。是非お寄せください。

「このキャラの話がもっとみたい!」や「こんなところを掘り下げてほしい」などリクエストもお待ちしております。誤字脱字、表現がおかしい場所なども指摘していただけると有難いです……!



もしこの小説が面白かったら↓の ◆小説家になろう 勝手にランキング◇よろしければ投票お願いします!◆ というフォームからランキングへの投票などしていただけると大変幸いです。



それでは、次回をお楽しみに!本日夜から五話が始まります。

尚、以降は一日一話、夜の更新になりますのでよろしくお願いします。

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